「少年ゾンビ高橋。#14」
「乗り換えどきかもね、そろそろね」、間違いなく高橋くんはそう言った。
彼は腐敗を続け、悪臭は増し、常に肉体の存続の危機にさらされている動く屍、ゾンビなのである。
「の、乗り換える……?」
西島巡査は動揺を隠せない、唇が震えていた。
「そ、それはつまり……どういう……」
「そのまんまの意味だよ。ほら、なんつってもゾンビじゃん? いくら防腐剤を摂取し続けても肉体を維持することはできないんだ。でも、僕らにも意思はある。」
「ぼ、僕ら……? 君以外にもゾンビが……この村に……?」
突然にして驚愕の告白であった。
ふとよぎる、西島巡査のそれほど優れてはいない頭脳は最速回転を始め、この村に赴任してきてからの記憶をよみがえらせた。
いまになって思う。
事件どころか人そのものを見かけていないということに。
「まさか……まさか……。ちょ、これマジにB級ホラーみたくなってねぇ?」
「長く……長くゾンビやってると、記憶が飛ぶんだよね。ほら、脳みそも腐ってくわけだし、乗り換えてしまうときって脳みそまで変わるわけだし。でも、本能ってことだろなぁ。生存するためには本能が知性を与えるんだよ。記憶だって蘇る」
教科書を朗読するように高橋くんは答えた。そうすることによって失われてゆく行動原理を自ら手繰り寄せているようだった。
そのころ、村のバス停にいた女の子もまた動き出していた。
彼女はその名を「赤坂さん」という。
「……ったく。なんなの、このシケた村は……」
愛らしい外見は10歳ほどだろうか、しかし、放つ言葉は辛辣にして傲慢だった。
「炭酸水で髪を洗って、アイラッシュとネイルも……って、こんなクソど田舎のどこにそんなものがあるのよ……。建物すらないじゃない」
しかし、同時に赤坂さんは思う。
……ああ、いまは子供だからアイラッシュもネイルもメイクも必要ないんだったわ……と。
彼女もやはり、ゾンビなのである。
【まだやるんかいな……】
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【前回まで】
⇒おまとめゾンビ高橋。
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