少年ゾンビ高橋。#6 | ワールズエンド・ツアー

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田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

少年 ゾンビ イラスト 画像

「少年ゾンビ高橋。#6」


 梅雨が明けた日本列島、ゾンビ少年の高橋くんが徘徊する片田舎の街もやはり真夏の陽光に照らされていた。
 湿度が高く気候としては亜熱帯にも近いこの国だ、暑さからは逃れようもない、まさにうだるような暑さに包まれている。

「暑い暑い暑い暑い……」
 いくらゾンビとは言え高橋くんもやはり暑い。
「帰ったらクーラー入れよう……」
 高橋くんの世話役と化した青年巡査はネクタイをゆるめている。

 ふたりは帰宅途中だった、ゾンビである彼に徘徊されると仕事が増えることを危惧した青年巡査は彼を自宅へと連れ帰ることにしたのだった。
 あくまで一時的な措置ではあるが、とりあえず他に方法はなかった。

「暑い暑い……暑い暑い」
「……うるさいな……黙って歩きなよ……って! ええ‼ 君、眼が……‼」


ゾンビ 腐敗 イラスト 画像


「な、なんだよ、おまわりさん……」
「眼が! 眼玉が垂れ落ちてるよ高橋くん‼」
「え……」
 絶賛、腐敗日和である。肉体の組成を維持できなくなった彼の身体は徐々に衰弱してきていた。

「ゾンビって不便だ……」
 さして驚いたふうもなく、高橋くんはその熟しきった果実のように垂れ下がった眼球をつかみ、空洞と化した頭蓋骨、本来、眼球があるはずの涙骨へと捻り込んでゆく。
モデル 西島秀俊 イラスト 画像


 常軌を逸したその行動に巡査は戦慄していた。
「君……やっぱりよそへ行ってくれないかな……」
 害はなさそうだが、さすがに寝食を共にする気にはなれない、彼はごく一般的な地方のお巡りさんに過ぎないのだ。
「お巡りさん……それ、一市民に対して言うべきことじゃないよね……」
「君は一市民ではないだろう……」
「いいよ、じゃあ人権侵害で訴えてやるから。お巡りさん、出世できないよ、こんな僻地で訴訟沙汰になんてなったら……よりによって相手は身寄りのない少年なんだから」
……めんどくせえなぁこいつ……どんな育ち方をすればこんなガキに……いや、ゾンビに……。
「ね、お巡りさん。公務員らしく市民のために尽くしてよ」

 青年巡査は自らの不運を呪いたくなった。


物語にはまるで無関係だけどチバユウスケさん(THE BIRTHDAY)、ハッピーバースディ!的にまだ続く……
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ロックンロール・スイッチ

前回までのゾンビ高橋。

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