「スローライフ・ギャング」
義賊を気取りたがるギャング、たいした悪さはどうもできない、
だからいつもろくでもない暮らしをしてる、
揃いのスーツでキメているけど、よくよく見ればしわだらけ、
有り金まるごと貧民街に置き忘れたから、
ポップコーンで膨らませる腹、
義賊を気取りたがるギャング、
履き潰した巨人のブーツで暮らしてる、
破れた爪先出入り口、
のっぽのラギは酔っ払うたびアタマぶつけて３日は寝込む、
だいたい小心者ばかり、人を脅すなんて無理、
朝の日課の道掃除、子供に笑われ照れ臭い、
太っちょダダはアイスクリーム頬張って、
チェロ弾きレガンはキャンプ好き、
俺は眠い目こすってタバコをくわえ、
マーケットのレジ打ちバニーを想ってる、
義賊を気取りたがるギャング、働かないからいつでもヒマで次の標的探してる、
無理な悪巧みを考える、ブラックスーツは注文済みだ、
ガソリンタンクは空っぽだ、アジトに屋根を張りたいし、
俺はバニーを誘ってみたい、
さぁ、何をしてカネをつくろう、
どうしてカネがいるんだろうってアタマを捻る、
どうしてカネがないんだろうってクビを傾げる、
どこから奪えばいいやらグルグル廻る、
いつの間にやら眠ってやがる、
義賊を気取りたがるギャング、
シケたタバコに火を点ける、
どうしてこうも取り柄がないってブツクサ愚痴を、
義賊を気取りたがるギャング、かっこうだけはそれなりに、
義賊を気取りたがるギャング、
映画に看たのとずいぶん違う、
変わり方が分からないから、相変わらずの貧乏暮らし、
それでもいいか、役には立たない、
けれど、｢僕らは毒にさえなれない｣、
あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた
