「象の平原」
テントのなかで象は暴れた、何かに気づいたからだった、
体中に金と銀の装飾が、前脚あたりに転がるボール、
〝なんだこれは、なんだここは?〟
今朝、僕の体をきれいに撫でた飼育の係、
毎挽、遊びを仕向ける調教師、怯えた顔で後ずさる、
鎖を立ち切る、造作もないこと、
あなたたちは僕の力なんて知りはしない、
混乱してる、悲鳴をあげる、逃げ惑う、
我先にと人間たちは人間たちを掻き分ける、
遮るものを蹴り弾く、僕は舎を破いてる、
狭く閉じた世界から脱け出した、
そこで象が見た景色、
地平まで続く草原、点々と立つ、
緑の少ないひょろり高い樹、
流れる澱みのない乾風、そんなものはどこにもなかった、
想い描いた景色はない、
僕は慌てる、鉄球引きずり、
車輪のついた鉄の箱に足をかけ、
少しだけでも遠くまで見渡して、
草原はなく、象は故郷をただ想う、
家族や共に生きた群れのこと、
きっとこれは悪い夢だろう、そう想うほかになく、
気づけばライフルかまえてる、睨む人らに囲まれていた、
弾き金をひく一人、合図みたいで、
体に数十、鉛の刃が突き刺さる、
獅子の歯よりも、重く鈍い痛みが走る、
蛇の毒より麻痺のある、熱が体を締めつける、
象は力を奪われ横たわれる、
目を閉じる、抵抗する力がない、
それでも撃ち続けられている、
可哀相だと涙を見せる少女もいたが、
象は静かに目を閉じて、
やがて草原へと帰って行った、
【補足】
……それらしい写真にはなってますけど。この写真を撮った翌日、この風景の近辺の農道でケガしてしまったオラですよ……。
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