置き場 -3ページ目

置き場

置き場

飛鳥は思い出していた。
ネットの友人が自殺を失敗して下半身不随になって自殺所に行こうと決めたって言ってたこと。
自殺所なんていいところだと当時思った。
「飛鳥あっちで待ってる」
そういって彼女は死んだ。
「美穂すぐ行くあたし、熱いけどね(笑)思ったよりすぐじゃないかもね」
錆びたドアを開けると中はツンとした臭いに焦げた臭いがした。中に入ってドアをしめて放送が流れた。
「本当にいいですね?スイッチ押します」
「あなた自殺の手助け向いてるよバイバイ」

芳樹が押したスイッチはいつもよりすごく重くて何度も押したことがあるのに何故か怖かった。

ドアの向こうからは炎の音と暴れ回る音。
次第に暴れは収まり炎の音が虚しく響いた。
一時間半過ぎて清掃員がドアを開けて片付けた飛鳥の灰は50階からまいた。

飛鳥の灰は風にのって何処に行くんだろう。
と思いながら自分の場所に戻った。
「本当に、良いんですね?」
「いいんです。私もう耐えられません死んで忘れたい」
芳樹は飛鳥にペンを差出し「太枠内をもれなく書き込んでください」と言うと
「ごめんなさい私手が不自由で書けないの」
芳樹は手を見た。
枝のような腕、震えた指先は枯葉のように色が変わっていた。
「わかりました代筆します」
そう伝え、書き込んでいった。
「誓約書なんてあるんだ、死ぬだけなのに。面倒ね」
軽く芳樹はうなずき読もうとした。
「ねぇ聞いて。私薬に溺れてこんな腕なのこんな身体なの。男にまわされて病気にもなった。だから死ぬの」
飛鳥の腕には無数の切り傷と引っ掻き傷同様に身体にもあった。
幻覚で虫がわいた際取ろうとした時の傷。
「なんでもいい早く逝かせて」
「…引取人はどうしますか」
飛鳥は涙ぐんで「いない」と言った。
「いなければ死ねないの?また生かされて耐えるの?」
辛い毎日、苦しくて明日が見えない。
「どこかないですか?なければ…」
「なければ…?」
芳樹はファイルをだした。
小さな紙だった。
“遺留品の引受人が居ない場合、荷物を持ち焼却”
「僕は嫌なんですけど」
「それでいい」
「熱いし痛いですよ」
飛鳥は黙ったまま頷いた。
芳樹は納得ならなかったがそれも飛鳥の運命と割り切らざるをえなかった。
「…その赤い扉の向こうにありますので。お疲れさまでしたよい旅を…」
後味悪い。芳樹はそう思った。
飛鳥は鞄からポングを出して火をつけた。
「最後に吸い切らなきゃね」と泣きながら。
軽くむせた後赤ち扉に向かって歩いた。
「あぁ幸せ」

続く
“私もあの花のように散りゆくのかそれとも無駄に生かされるのか”
ここに自殺願望者。仮に向日飛鳥、22歳。
飛鳥は幼少期両親による虐待で手に障害を負った。
両親は現在何処にいるかもわからず、ずっと伯母に育てられたが、伯母も陰湿ないじめをした。

二十歳になってすぐ家からでたが、働くところも制限される身体。唯一テレホンオペレータの仕事をもうかれこれ七年。
障害者だからと遠回しに給料を天引きされたりするが我慢をした。

飛鳥の趣味は空想と歌だった。
手を使わないから。ただ、それだけ。
勿論恋人らしい恋人も出来ず22になってしまった。
トモダチもいないし味方もいない。

更には睡眠障害と鬱の併発で精神科を通う始末。
睡眠薬を沢山酒で流し飲んでは腕を切って風呂場で寝た日もあった。
薬を多く飲み過ぎたその後は記憶がなくて医者に怒られる。
良くなるばかりか悪くなる一方だ。
「マイスリーとパキシルと後前回のまた二週間分ね、多く飲まないようにねそれと頓服でデパスね」
医者は単なる薬屋。ほしい薬を出してくれる薬屋。

もう家に帰るまでドキドキしてるし、帰ってからも副作用でドキドキ。
口は乾くし目は不思議と上を向く。
唯一のトモダチが覚醒剤常習者。こないだも「草やらないか」と半ば無理矢理吸わされた。でも悪いことをしてるとスリルがあった。全てが忘れられた。
気が付けば色んな薬に手を出していた。

「Sもうやめる」というと「チクッて俺を豚箱に入れる気だろ」と言って頭を持って床に叩きつけた。
だからはまった。もう抜けられない底無し沼に入ったかの様。

悪い仲間は増えてく一方なのに本当のトモダチはいない。

ただ女だけなのにキマッた状態でまわされたり、写真を撮られ、脅されたり。逆らうことも出来なかった。

トモダチじゃなくて友達が欲しいと気付いたときはもう手を付けられなかった。
勘繰りと手の震え幻聴に幻覚。
“死んでしまえ”と頭の中で叫ばれたり、体中の虫。
もう耐えられないと向かったのは自殺所だった。

続く
「もう疲れたなぁ生きてるのも飽きたなぁ」
仮名、鮎川芳樹当時25歳。
今となっては自殺所受付で働く男。この者もかつては自殺志願者。
しかし、特に死ぬ理由もなくて生きる理由もなかった。
突発的に死にたいと思った後に自殺所を訪れた。
当時は受付案内人もいなくて最悪サインも何も書かなくても命を捨てられる無法地帯だった。

「めんどくさいしいいか」
芳樹は真直ぐエレベーターを上り屋上に向かった。
有り余る莫大な借金、面倒な人生、醜い体。
「死んだらなにやろーかなファイナルポンタジーやろーかな」
めんどくさがりの芳樹。
何するにもだるい。で物事を終わらせる。

チンとエレベーターが開くと勢いをつけて飛び降りた。
「わあー」形だけでも焦った振りをしてみる。
「あれ?」50階から飛び降りたはずなのに生きてる芳樹。
風に流され42階の踊り場で立ち上がった。
稀に見る強運の持ち主。
それが現在受付を担当している鮎川芳樹である。

社長、川村健により鮎川芳樹を雇う事を書面にて提示。
鮎川芳樹も「どうせ帰っても詰まんないし、死にたい奴の顔みたいしいいよ」と適当に交わした。
寮、食事がある変わり休みはないという仕事。
故に給料もない。しかし芳樹は「あっても休みないんだったらゲーム買えないしいーや」とあっけらかんと答えた。

そういう人間が集まり、清掃員、受付、事務が出来た。

自殺所の忙しい期間は二月から六月。
公にバイトを募集出来る業者ではないので今いる人数で回すことになる。

芳樹は最近変わった。
めんどくさいも言わなくなった。
数々の人間の死に立ち合った芳樹は本当の人間になりつつあった。
こないだ来た何とか弓子さんだって生きていればこんな風に思うのかなあと自動ドアのすきま風の冷たい空気に体を冷やされながら考えていた。

続く
刻々と近づく死期。

上り詰めたとききっと弓子の想う理想の天国に逝けると。



「さようならみんな」

エレベーターの扉がゆっくりと開くと朝焼けなのか夕焼けなのか太陽が弓子を照らした。

想像してほしい。

ここは東京。日本の誇る莫大な都市東京。

ビルの50階の屋上に立つと東京だというのに回りに目立ったビルがない。

遠くどこか日本でない外国のどこかに来たような景色。



そうかここが天国なのか。そう思いながら弓子はフェンスに手をかけた。

思えば此処に来るまで幾度となく惨めになったり何度も死にたくなった。

何で死ななかったのか、多分それはほんの少しの良心だったのかもしれない。



夫はいつも朝早く帰ってきては「旦那を迎えろ」と執拗に殴ってはまた家を出る。表で女を孕ませたらしい。

息子は言葉を覚えるのが出来なく、養護学校に通うも弓子の負担は重くなるばかりであった。

唯一の稼ぎ頭である弓子はパートでスーパーの鮮魚コーナーで刺身用の魚を切っていた。

自分の意見を言わない弓子に対して執拗ないじめが毎日続いた。

ロッカーの中に魚の内臓があったときはさすがに吐かずにはいられなかった。

更には弓子の足をかけ地面に倒れた。

「生臭いから近寄らないで」と笑われることもあった。

それでも我慢したいっそこの包丁を振り回してやろうとも思った。

でもぐっと抑えた。



その悪夢から解放の時。

此処から飛び降りれば楽になれる。

さようなら。

風は弓子の背中を押して勇気付けているのか。

「この国の悪者は死んでしまえば良いのにね」

フェンスがガタガタ揺れ弓子は一本一本外し体を支えきれなくなり手を離した。



落ちるまでは早かった。

何秒もかからなかった。

落ちた弓子は赤い塊だった。熟したトマトの様に散った。



続く
ここに、自殺志願者。
仮に輪山弓子と呼ぶ32歳。
仕事では上司から同僚からの陰湿ないじめ、家庭では夫の浮気に息子の体の不自由さに見も心も果てた兼業主婦である。

まず入り口では受け付けを済まさなくてはならない。
誓約書を熟知し、サインをする。判子を押すのだ。
最後に身元引受人を記入しエレベーターを上がる。

「では、輪山弓子さん誓約書を読み上げますのでわかりましたら太枠内もれなくお書き下さい」

一、自殺志願者(以下、私)はいかなる理由があっても内部の構造を漏らしません。
一、私の遺留品は全て受け付けにて預け、身元引受人に引き渡す事を了承します。
一、私は貴社の新生命保険に加入し、得た金を国に回す事を了承します。

「わかりました。ではサインを…」
弓子はペンを持ち名前を書こうとした。
「本当に、いいんですね?遺書はお書きになりますか」
「いえ、いいんですもう生きたくないんです。拇印でいいですか」
「えぇ」
スラスラとサインをして最後に行き詰まった。
「いかがなさいました」
「旦那でいいですかね、身元引受人」
「えぇ。書いたら右手の黒いエレベーター50階直通でお逝き下さい良い旅へ逝ける事を願っておりますお疲れさまでした」
事務的な態度、実は受け付けの者も元は自殺志願者であった。
50階であっても稀に失敗する事もある。ある意味強運。生きるべきとなり、この自殺所で勤める事になるのである。

弓子は黒いエレベーターに乗ると数十秒自分だけの時間が与えられた。
半生を振り返り手が震え涙が溢れだす。
死にたくないからではなくて嬉しいから。

やっと解放される。

続く
日本の莫大都市東京。
莫大だからこそ日々悩みを抱え込む者がいる。

仕事に疲れる者、いじめに合う者、精神的に病む者、色々な者が溢れる中、東京の一角にビルがある。
入り口には誓約書、判子、引き取り手連絡先等の記入場所があり、エレベータ50階を上れば自らの命を捨てられる。

それを一部の人は自殺所と呼んでいた。

誰も止めようとはしない。
政府もそんな辛くもう明るくなれない、ましてもや違法ドラッグに塗れるのを防ぐために、黙認した。

自殺志願者は泣いて喜んだ。
これで逝ける安らかに。
この辛い人生にピリオドを打つ事が出来ると。



つづく
痛いです痛い痛い痛い…お腹痛い昨日から熱と腹痛で悶えてます。
年末だっちゅーのに病院駆け込んで検査。

とりあえず薬貰って寝てるがよくならないあー憂鬱。
痛い痛い!
破裂しそう…
風邪。
しかもなんか辛い。
ぼーっとして、だるいやつ。

薬ないから適当に寝てました。
そしたら暑くなった

言ってる意味がわかりませんね。

とりあえず、休みたいただそれだけです。
今日は暇です。
だからニコニコして舞う。
でも暇です。!!!!