ようやく『原始仏典 中部経典』を・・・
この1か月、一心腐乱に働かざるを得ず、ようやく一段落したので
自分へのご褒美といわんばかりに、読み損ねていた仏典を買いました。
『原始仏典 第4巻 中部経典Ⅰ』『原始仏典 第5巻 中部経典Ⅱ』(春秋社)
中部経典4巻のうちの、とりあえず2冊です。
けっこう高い、そして厚くて重い・・・。
整理しておきますと、いわゆる初期仏典(パーリ語の経蔵)はこんなふうに分かれて、こんなふうな現代語訳が出版されています。
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長部 Dīghanikāya ・・・・・・①中村元訳(春秋社)②片山一良訳(大蔵出版)
中部 Majjhimanikāya ・・・・③中村元訳(春秋社)④片山一良訳(大蔵出版)
相応部 Saṃyuttanikāya ・・・・⑤岩波文庫の何冊か ⑥「阿含経典」(筑摩書房・増谷文雄訳)
増支部 Aṅguttaranikāya
小部 Khuddakanikāya・・・・⑦岩波文庫の何冊か
(ダンマパダ,スッタニパータ,仏弟子&尼僧の告白,etc)
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わかりやすくまとめている方がいます
↓
http://d.hatena.ne.jp/ajita/20090206/p1
http://kongoukoji.fc2web.com/books/framepage6.html
人生のためには、岩波文庫の⑤⑦を覚えるほど読み込むほうがいい気もしますが、
貧乏性ゆえにいろいろ手を出しております。
長部は、①が1冊7000円前後で読みやすく、
②は1冊1万円前後で註が相当に充実しているそうです。
一般人は①、セミプロは②がよいかもしれません。
(やっぱり1冊1万円は勇気いりますからね~)
私は、よくわからずに漢訳「長阿含」の現代語訳(末木文美士ほか、平河出版)
を衝動買いして、マニアックな道を選ぶことになったのですが。
そしてよく考えると、あっ中部忘れてた、ということで、
今回③を買って読み始めることにしました。
『中部経典Ⅰ』は全40経。1日1経ならいけそうです。
とうぶんは、中部ばっかりの備忘録になるでしょう。
さっそく第1経「根本法門経」を読んで
思うところあったのですが、もう今夜は力尽きて書けません。
しかし、本を開けばそこにお釈迦さまがいるわけですから、
ほんとうに結集に感謝!春秋社に感謝!
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禅僧・南直哉さんに惚れた(サンガジャパンvol.5 その2)
前回の続きで『サンガジャパンvol.5』についてです。
南直哉(みなみじきさい)さんという曹洞宗のお坊さんをご存知でしょうか?
今回『vol.5』で一番強烈だったのは、南さんと宮崎哲哉さんの対談でした。
南直哉さん(1958年生まれ)はサラリーマンを経て
25歳かそのぐらいで出家得度します。
子どもの頃から、「死」ということに異常に取り付かれて、
自殺か発狂かという瀬戸際で、藁にもすがる思いで出家したそうです。
あの永平寺で20年近く修行して、福井県の寺や恐山菩提寺で住職をされています。
印象に残った南さんの言葉をいくつか勝手に紹介します。
「仏教の聖なるものって、薄情とか非情なものですよ。
良いものではない。仏教者として僕が理解する仏教の
聖というのは、その暴き出す力、視点です。
これは、ある種の人間にとっては強烈な救いなんですよ」
「僕がどうして出家して生きるほうにチップをはったかというと、
あれほど苦しんであそこまでのことを言ったブッダが、
自殺しないで生きている、ということが理由です」
「(ブッダは)あんなことをずーっと言い続けて、
『苦しかったろうな、生きてること自体が。
80年、いいことなかっただろうな』と思います」
「それまで僕はずっと独房にいたような感じだったのが、
(諸行無常という言葉を知ったときに)
『あ、おれは一人じゃない。おんなじことを思ってたやつが
世の中にいたんだ』と救われた」
そして、お2人はお釈迦さまの教えを、「劇薬」「濃硫酸をぶっかける」と表現し、
意味も無意味も自己も解体しつくされることが
「ものすごい痛みを伴うけど、ものすごい解放感」だと言います。
南さんのことを私はよく知らなかったのですが、
人としてすごく信頼が置けるなあと思いました。
だって、鬼の永平寺で20年近く修行していながら、
いまだに平安そうじゃないんですもの。
やはり道は遠く険しいのだなあ。
これから南さんの本も読んでみようと思いました。
ちなみに、今出ている『考える人』(新潮社)の仏教特集で
南さんと作家の高村薫さんの対談も読みましたが、
『サンガジャパン』のほうがヒリヒリしていて面白かったです。
宮崎さんは、お釈迦さまの教えが「劇薬」であるとふれまわって、
ずいぶん周りに嫌がられたそうです。
「ホッとする仏教」「癒される仏教」とか言っといたほうが
ウケがいいんでしょうかね。
お嬢ちゃん、仏陀に近寄ると火傷するぜ、というぐらいの
濃硫酸ぶっかけだと私も思いますけどね。
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『サンガジャパン』「死と仏教」特集号
ニューウェイブ仏教雑誌、と呼んでいいのかどうか知りませんが、
季刊『サンガジャパン』Vol.5「死と仏教」特集号をやっと買いました。
まだちょっとしか読んでないのですが、面白そうですよ。
最初に読む連載「パーリ三蔵読破への道」
(by 日本テーラワーダ協会事務局長・佐藤哲朗さん)は、
今回「ジャータカ」(本生)を取り上げています。
ジャータカとは、
「お釈迦様の前世での活躍を記録したとされる説話文学」ですが、
500以上の説話があってとても長いので、私は読むとしても老後です
(春秋社『ジャータカ全集』は10巻もある・・・)。
佐藤によると、「カオスとしかいいようのない多様性のあるテキスト」
「鉄壁の論理性と無矛盾性を誇るテーラワーダ教学のほつれ目」。
淫乱な女、狂った男がオンパレードの
とんでもない説話がいっぱい出てくるそうです。
なかでも面白かったのは、菩薩までもがとんでもない、ということです。
菩薩は、果てしない時間、輪廻を繰り返しながら仏陀を目指すのですが、
ジャータカでは、その途中ではいろいろ酷いこともするそうです。
たとえば、菩薩が「旅人を襲う盗賊団の首領」だったり、
「不倫した妻の耳と鼻を削ごうとする王様」だったり。
「嘘をつかない」以外の戒は破りまくりだそうです。
大乗仏教の人が聞いたら卒倒するか激怒しそう。
あんまりネタばらしするのも何なので、興味があれば
『サンガジャパン』Vol.5を読んでみてください。
(ああ、他の特集についても触れるつもりが、長くなってしまうので、また今度)
ジャータカに限らず、仏典って文学としても面白いし(特に比喩表現が素晴らしい)、
ゲラゲラ笑ったり目が点になるところもたくさんあります。
「深遠でありがたいもの」と恐縮するのはもったいないです。


