こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミ等をお届けしています。
前回のお話:
バスを降りて着いたところが、本日の撮影現場…だが、ホールディング(控え室)も撮影所も、本物の病院の中?!…厳密には「元病院」なのだが、大部屋の病室がホールディングとなっている…それは別にいいのだが、困ったのはトイレだった…元病室なのだから、実はその部屋の中にもトイレはあるのだが、何とドアがないのだ!
…というのも、そのフロアの入院患者は、大抵介助を必要とする患者さんばかりだったのでだろう…介助者が一緒に入る必要もあるし、常に患者に目が届く様にする必要があるからだ…トイレの中でいきなり具合が悪くなる患者も居るかもしれないし、それが一刻を争うような対処が必要な時に、鍵のかかったドアが閉まっていたらシャレにならない…なので、ドアの代わりにカーテンがかかっていたりするのだが、今は使わなくなったので、そのカーテンがなくなっている…ということらしい…
また、ひょっとしたら、院内でのレイプなどの犯罪を防ぐ為にも、鍵のかかる個室を作らない…という理由もあるかもしれない…
唯一ドアのあるトイレが、廊下の反対側のシャワー室の中にある…というので、そこまでの長い廊下を歩いてトイレに行かねばならないのだが、人気のない病院の廊下は、ちょっと不気味なものである…まぁ、暗めの照明のせいもあるかもしれないのだが、なるべく我慢して、トイレに行く回数を減らすようにした…
まずワードローブで看護師のユニフォームのスクラブを借りる…はずなのだが、我々のスクラブがまだ衣装部から届いていない…というので、私を含む何人かの看護師達は「ちょっと待ってて」と言われる?!
そこで皆ホールディングに戻る…しばらく待っていると、「朝ごはんに行け」と言われる…まだ衣装もらってないんやけど?!…しかし、ここで食べておかなければ、朝ごはんを食べそびれるのがわかっているので、皆サッと全てをそこに置いて、病院の前にある朝ごはんのテントへ直行…ここはセルフサービスではなく、欲しいものを示してよそってもらうのだが、オッチャンがやけにポテトを山盛りくれた…
それを食べ始めると、衣装が来た…と言われ、ワードローブへ行くと、衣装は届いたが、これからスチーマーでシワを取ると言う?!
そこでまた一旦ホールディングに戻って、朝ごはんをダッシュで食べる…その頃にはすっかり冷めてしまった朝ごはんを途中まで食べた所で、再びワードローブへ行けと言われる…
そこで渡されたのは、ネイビーブルーのスクラブで、下に黒の長袖Tシャツを着てもいいと言う!…ラッキー!そうでなければ、スクラブは半袖なので、寒い思いをするところだったのだ…実際、撮影現場は寒かったので、これはありがたかった…
着替えて、ヘアメイクをチェックに行く…前回のすっぴん事件(過去記事参照)に懲りて、一応ちゃんとファンデーションは塗っていったが、伊達メガネをかけるつもりだったので、アイメイクは適当…するとヘアは一発OKだったが、メイクさんに「ナチュラルなリップスティックを塗るように」とダメが出る…いや、朝は塗ってたんやけど、朝ごはんを食べている間に落ちてしもたんや〜!
急いでまたホールディングに戻り、素早くリップを塗って、ラインナップの写真を撮る為にまた戻る…実はワードローブもヘアメイクも、ホールディングから離れた廊下の端の病室…今日この廊下を何度往復した事だろう…
写真の順番を待っていると、これからすぐプロップ(小道具)を取りに行け…と言われる?!…まだ写真撮ってないんやけど…
しかし看護師には聴診器や看護師のIDカードなどの小道具が絶対必要なので、急いでプロップの場所へ行く…前に、またホールディングに自分のIDカードを取りに戻る…そのIDカードと引き換えに小道具を借り、借りた小道具を返さないとIDも返してもらえない…この事が後で重要になってくる…
小道具は普通撮影場所のすぐ近くにあるのだが、今回がそれは同じビルの中の1階下…と言うのはありがたい…
そこへ行くと、いきなりジェラルミン製のクリップボックスを渡される…これは平たい箱型で意外に嵩張るし、落とすと「ガシャーン」という音がするので、実は私はこれが大嫌いなのだが、まぁ、仕方がない…
そして再びワードローブに戻り、他の看護師BG達と写真を撮ってもらう…ここまでが撮影前の準備で、ようやくこれでちょっとのんびりできる…と思ったら、いきなり下の撮影現場に呼ばれる?!
準備が1番遅かったから、てっきり後の方のシーンだと予想してたら、1番最初に呼ばれるんかい?!
ところが、ここでまたひたすら待たされるのだ…何やねん?!まだ要らんのやったら、そんなに急かさんでもええやんか!
この時点で、既に我々がバスに乗ってから3時間以上過ぎている…なのにまだ1シーンも撮っていない?!…ちなみにコールシートによると、この日撮影するのは8ページ…その内我々が出てくるのは5シーン…終わるんかい?!
その内、いつの間にか撮影が始まる「Rolling!(カメラを回す)」という掛け声が聞こえる…我々のほとんどは、その脇の廊下で待たされたまま…何やねん?!結局要らんのかい?!
でもまぁ、これはよくある事…ならばすぐにホールディングへ帰される…と予想していたのだが、何とそのまま放ったらかし?!
そこは廊下なので、座る事も出来ず、最初は立って待っていたのだが、ずっと立っていると、段々疲れて腰が痛くなってくるし、この小道具のクリップが何気に重い…
ついに耐えかねて、床にしゃがみ込む…が、ぺたんと座ってしまうと、お尻に床の埃がついたり、衣装が汚れてしまうので、お尻は浮かせたAsian squatまたの名を「○んこ座り」…実はこれが出来るのはアジア人か、ヨガやダンスで鍛えていて膝や足首近辺の筋肉が柔らかい…というような人だけ…実はアメリカ人の多くは、和式トイレ式にしゃがめない…
そうしてしゃがみ込んでいると、何だか惨めな気分になってくる…そもそも私達、ここで待つ必要ある?!…ホールディングは同じビルのたった1階下なのだ!…すぐ呼び返せるのだから、そこへ帰してくれてもいいやんか?!…ホールディングに返してくれれば、我々は椅子に座れるし、食べたり飲んだり出来るし、お喋りだって出来るのだ!…しかし撮影現場では、座る場所はないし、音を立てないように緊張して静かにしていなければならないし、何より寒い!…プロダクションにしても、我々をホールディングに返した方が、不用意に音を立てられて、テイクを台無しにされる危険がないから、これは双方ウィンウィンではないか?!
すると、向こうからクルーの人が、私を目掛けてやってくる?!…すわ出番か?!と立ち上がったら、私の小道具の聴診器と看護婦IDを「貸して」…と持って行ってしまう?!…小道具足りんのかい?!…しかも、それならこのジャマなクリップボードも持って行ってくれればいいのに、それは要らないという?!…何やねん?!
やがて、ようやくそのシーンの撮影が終わり、我々もやっとホールディングに戻る事が出来た…
そこでクラフティに立ち寄り、コーヒーをゲット…そしてようやく朝ごはんの残りを食べ終わったが、そこからひたすら待たされる…
もっとも、その日は知った顔もいたので、お喋りしながら気楽に待ったが、その時、何となく今日は出番はないかも…という嫌な予感がした…しかし撮影はまだ始まったばかりである…ところが、そのまま待っている間に、何とランチの時間に?!
(その3へ続く)
★過去記事★