昨年夏のある土曜日、いつも行くマーケット「オーガニックファーマーズ朝市村」で、ルーマニア出身の買い物客に会いました。数年前から日本で暮らしていて、日本語はペラペラです。
そして、私との会話は:
私:おお、ルーマニアからですか。
彼:そう、コマネチね。
私:コマネチも有名だけど、ルーマニアといったらエネスク、チャウシェスクでしょう。チャウシェスクはひどい独裁者だったらしいけど、元凶は奥さんのエレナですよね。私は若い頃、よくラジオ・ブクレシュチを聴いていたものだけど、その内容からはルーマニアに暗いイメージは抱かなかったし、独裁なんて思いもつかなかったですよ。今はその頃よりよくなってきたんじゃないですか。
彼:チャウシェスクが倒され、社会主義から脱してルーマニアは自由を得たけど、貧富の差は大きくなったし、まだ混沌としているんですよ。
実際、政情も不安定で首相のスキャンダルも渦巻き、転んだり立ち上がったりの政権です。
そのルーマニアはヨーロッパの放送局では珍しく、短波による国際放送を行っています。
以前、BCL史(8)エネスクのラプソディーで紹介した「ラジオ・ブクレシュチ」が「ラジオ・ルーマニア・インターナショナル(Radio România Internaţional,Radio Romania International;RRI)」と名前を変え、アラビア語、アルーマニア語(ルーマニア語に近く、ギリシャ語の影響を受けたロマンス語系言語)、イタリア語、ウクライナ語、英語、スペイン語、セルビア語、中国語、ドイツ語、フランス語、ヘブライ語、ルーマニア語、ロシア語の13言語で指向性アンテナを使って放送しているのです。
英語放送にはビームを日本へ向けている時間もあり、結構たくさんの日本人が聴いているようです。ただ、なにしろJST(日本時間)の朝8時から(夏季は夏時間になり7時から)の放送で、私の通勤時間や勤務時間と重なるため、休日にしか聴くことができません。それでも、いつもとは言えませんが比較的良好な状態で受信でき、原則的に毎日曜日に聴いています。日によってはSINPO-55444と極めて良好です。
プログラムはバラエティーに富んでいるのですが、ニュースや解説ではチャウシェスク時代の批判や当時の政治体制を否定する内容が多く、確かに現政権の見解なのでしょうが、チャウシェスク時代の反対の立場からかなり偏った論調をとっています。
まるで、「あの暗黒の時代と比べれば、今は・・・」と言っているようで、それは「悪夢のような前政権」と言うどこかの首相と変わりありません。
社会主義から脱した旧東欧の一部では、西欧型資本主義が有効に機能せず、とりわけルーマニアはよりどころを米国に求めているようにみえ、日本よりも米国べったりの感じさえします。
実際、ルーマニアはEUの一員にもなりましたが、それ以前にNATOに加入していて、今やNATOの優等生的ふるまいをみせているようです。
聴取者として救われるのはこの局の音楽番組です。クラシック、ポップス、ルーマニアの民俗音楽と多彩で、かつてのラジオ・ブクレシュチが今につながっているようです。
また、「Culture and Nature」や「Through the Looking-glass」は私の好奇心を満たしてくれます。
こういった番組に登場したインシュリンの"真の"発見者ニコラエ・パウレスクや多発性硬化症との闘病の後48歳で亡くなり、死後に再評価されるようになった画家シュテファン・ルキアンなどはこの放送を聴かなければ知ることがなかったと思います。
私は最近海外放送を聴いても受信報告を出すことは殆どないのですが、昨年秋に送ってみました。
約2か月経って返信が封書で届きました。
中に入っていたのは受信証(ベリカード、QSLカード)1枚です。プログラムなどはありません。
これだけなら、葉書にした方が安価ではないでしょうか。
RRIはインターネットでも聴くことができ、日本向け放送が聴けなくても他地域向け放送を聴くことができますが、私は受信報告は「正統派」短波放送で作ります。インターネット放送の報告書では少なくとも技術者にとって意味がありませんから。
ということで、久しぶりのヨーロッパ局の話題でした。
これまでのBCL史はこちらをご覧ください。
地域別インデックスも用意しましたのでご利用ください。
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