セイジャク。⑪
⑪
(和弥)
リビングのローテーブルの上に散乱していた本をオレは必死で片づけた。
昨日、病室で【癌】という言葉を聞いて
帰る途中に買いあさった【癌】に関する本。
ゆうは笑顔で「ありがとう」と言った。
オレは何も答えられない。
積み上げた本をテーブルの下に置き
ゆうにソファを勧める。
ゆうは立ったまま
「最初に私の私物を片づけたいの」
と言った。
思わずため息が出る。
別れる気、満々じゃない。
風呂場のシャンプーとか、洗面所の洗顔フォームとか、着替えとか、そういうものでしょ。
オレに片付けさせるのも悪いとか思ってるんでしょ。
洗面所へと向かおうとするゆうの背中を追いかけ
力いっぱい抱きしめた。
「さっきさ、先生に言われたんだよ。ゆうの意思を尊重するのも愛情だって。でもオレは一日でも長く一緒にいて、一日でも長く君を幸せにする愛情を選ぶ。君が拒否しても、君がオレを憎んでも、君に手術を受けさせる」
「・・・」
「君は僕に絶望的な孤独感を味あわせたくないって言ったよね。でも、ここで君と別れて、オレの知らない場所で、ホントに君が天国へ行ってしまったとしたら、オレは間違いなく、絶望的な後悔を一生背負ってく。孤独感はどうにだって出来る。幸いオレには兄弟がいる。孤独に苦しんだら泣きつく場所がある。でも、後悔はどうしようもない。自分を責め続けるだけ。誰かがそばにいてくれても、後悔が薄れる事は絶対ない。どうか、オレの気持ちも分かって。別れるなんて言わないで。もういいなんて、言わないで。ずっとオレのそばにいる道を選んで」
あーやっぱり、オレ、泣いちゃった。
泣き落としだけはしたくなかったのに。
でも、体裁なんてどうでもいい。
ゆうが
頑なな心を少しでも開いてくれるなら
オレは土下座だってなんだってする。
泣き落とし位、どうってことない。
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和弥の涙の説得に、ゆう(あなた)は
【迷惑をかけたくない】という気持ちと
【ずっと一緒にいたい】という気持ちの間で
激しく揺れ動きます。
最終的に、ゆう(あなた)の選ぶ道はどちらですか?
大切な人に迷惑を掛けたくないから別れる → セイジャク。Aへ
やっぱり最後まで一緒にいたいから別れない → セイジャク。Bへ
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