FRATELLI ~ Prologue 1 ~
プロローグ 1
(奨弥)
僕らはあの日、この場所からこの景色を見下ろしていた。
泣きながら、震えながら。
黙ったまま、繋いだ手をただ、しっかりと握った。
夕日が僕たちの町を柿色にそめていた。
ずっと向こうまで続く金の糸のような川が、じりじりと滲んで見えたのを今でも良く覚えている。
智弥が叫んだ。
「さよならじゃないぞ!兄弟なんだからな!」
初めて、智弥を兄貴だと思った瞬間だった。
思わず、僕たちは智弥のもとに駆け寄って、智弥のちっちゃな胸に、腕に、背中にしがみついて何度も繰り返した。
さよならじゃない。
さよならじゃない。
5歳の秋。
あれから22年が過ぎ、僕たちはすっかり大人になって、こうしてまた一緒に仕事をしている。
12歳で亡くなった亜弥子以外、僕たち5人。
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