妄想恋愛シミュレーション -111ページ目
<< 前のページへ最新 | 107 | 108 | 109 | 110 | 111

FRATELLI ~ Prologue 1 ~


プロローグ 1




(奨弥)


僕らはあの日、この場所からこの景色を見下ろしていた。


泣きながら、震えながら。


黙ったまま、繋いだ手をただ、しっかりと握った。


夕日が僕たちの町を柿色にそめていた。


ずっと向こうまで続く金の糸のような川が、じりじりと滲んで見えたのを今でも良く覚えている。


智弥が叫んだ。


「さよならじゃないぞ!兄弟なんだからな!」


初めて、智弥を兄貴だと思った瞬間だった。


思わず、僕たちは智弥のもとに駆け寄って、智弥のちっちゃな胸に、腕に、背中にしがみついて何度も繰り返した。


さよならじゃない。


さよならじゃない。


5歳の秋。


あれから22年が過ぎ、僕たちはすっかり大人になって、こうしてまた一緒に仕事をしている。


12歳で亡くなった亜弥子以外、僕たち5人。




妄想恋愛シミュレーション



プロローグ2へ  ←クリック




<< 前のページへ最新 | 107 | 108 | 109 | 110 | 111