FRATELLI 第2章ー1
第2章ー1
(ゆう)
デッキでランチをするのに、ちょうどいい季節になった。
親友の恵美とランチといったら必ずこのカフェに来る。
前回は子供たちの夏休み明けで、冷房が利いた店内で食事をした。
いつの間にか、空の色も街路樹の葉の色も褪せている。
今日も一番高いメニュー(と言っても2000円だけど)を頼み、今はもうデザートとコーヒーを楽しんでる。
「やっぱりここの季節のデザート、最高」
「ワンシーズンに一回はここでランチしたいよね~」
恵美とは子供が幼稚園の時からの付き合いで、もう10年になる。
お互いの長女が今年高校生になっり、偶然にも同じ年に出産した次女は今年中学2年生に進級した。
家も近く、子供たちも同じ学校に通う仲。
悩みや愚痴を言い合って、慰め合って、一緒に泣いて、一緒に笑って、時には意見もし合える。
「実はさ、そろそろ正社員の職を見つけようと思って」
恵美の言葉にちょっと驚く。
「正社員?」
「うん。子供たちも手が離れちゃったし、せっかくある資格を活かしたいと思うし」
恵美は長女を出産するまで看護師として大学病院で働いていた。
「看護師にもどるってこと?」
「そう。やりがいもあるし。何より必要とされてるって実感できるしね」
必要とされてる・・・胸がザワっとした。
「でも今もパートしてるでしょ。家政婦だっけ?」
「家政婦だなんて大げさだよ。週に2日、しかも一日3時間だよ。部屋の掃除と洗濯。時々買い物やクリーニング。それだけだもん」
「能力のない私からしたら、すっごいいい仕事だと思うけど」
「そう思う?やってみたいと思う?」
「あれば、ね。週に2日、一日3時間。理想だよ~」
突然、恵美が私の手を握った。
「お願い!私の後釜になって!」
そう言えば、恵美から家政婦の仕事について、詳しく聞いたことは一度もなかった。
場所は自宅から自転車で5分。歩いても15分掛からないところだという。
マンションの4部屋を担当しているらしいのだけれど、1か月ごとにスケジュールがメールできて、○日○時以降と指示されるらしい。
そして一番大切なことが・・・
「プライバシーを一番大切にしてるから、場所も、住人についても、絶対口外しない。家族にも内緒。これが鉄則なの」
「随分、重々しいのね~有名人みたい」
私は可笑しくなって笑った。
けれど恵美は真剣なままだ。
「どう?守れそう?ゆうは口が堅いから大丈夫だと思うけど」
「う、ん・・・まあ・・・」
「じゃあ、やってくれる?」
「あ、ちょっと待って!一応旦那に了解取らないと・・・」
「そうよね~あ、でも、家政婦ってことだけしか話しちゃだめよ」
「分かってるって」
どうせ、きっと何も聞かない。