妄想恋愛シミュレーション -43ページ目

FRATELLI 第5章ー7

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第5章ー7




(理弥)


ふと、思い出す。


まだ母さんが生きてた頃。


僕は夜が怖くて仕方なかった。


皆が寝静まると、僕は怖くて母さんを呼ぶ。


母さんは静かに僕の布団に入ってきて、小さな声でお話をしてくれた。


ポロリ君の話。


「少し前のお話です」


いつもこの言葉で始まった。


「泣き虫な小さな男の子の瞳から、涙のポロリ君が生まれてきました」


僕のこんなつぶやきにも、ゆうさんの震える呼吸は止まらない。


『ポロリ君はポロリと、畑の土の上に落ちました。


 どんどん吸い込まれて土の中、ポロリ君はヒゲヒゲの根っこさんに出会いました。


 根っこさんは言いました。


 「わたしはイチゴちゃんの根っこです。どうぞ中へ」


 ポロリ君は根っこさんに吸い込まれてしまいました。


 どんどん進んでいくと、今度はストローみたいな茎さんにたどり着きました。


 「わたしはイチゴちゃんの茎です。どうぞ中へ」


 どんどん進んでいくと、なんだかだんだんいい匂いがしてきました。


 そして、とうとう、真っ赤なイチゴちゃんに出会えました。


 「わたしがイチゴちゃん。どうぞ中へ」


 ポロリ君がイチゴちゃんの中へ入ると、イチゴちゃんはプルプルっと揺れて、ちょっとだけ大きくなりました。


 そこへ、イチゴ農家のおじさんがやってきて、イチゴちゃんをプチンと茎さんからはずしました。


 イチゴちゃんは大切にパックに詰められて、ゴトゴトゴトゴト旅をします。


 イチゴちゃんと一緒にポロリ君も旅をします。


 ゴトゴトゴトゴト、たどり着いたところはケーキ屋さん。


 イチゴちゃんは真っ白なクリームのてっぺんに飾られて、イチゴのショートケーキになりました。


 イチゴちゃんの中のポロリ君も嬉しくて、ワクワクしながら待ってます。


 誰が買ってくれるのかな?


 お客さんがやってきました。


 ママと、ママの横には泣き虫の小さな男の子。


 今まで泣いてた小さな男の子は、イチゴのショートケーキを見て嬉しそうに笑いました』




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