妄想恋愛シミュレーション -42ページ目

FRATELLI 第2章ーD

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第2章ーD





(奨弥)


ゆうさんは30分掛からずに来た。


友達と食事に出ていて、帰ろうとしていたところだったという。


紫のワンピースが、いつもよりも更に華奢に見せた。


「お酒臭いかもしれない。沢山ワインを飲んじゃったから」


ゆうさんはいつものように、えくぼを作って笑った。


僕は部屋の中に招き入れながら「友達って男の人?」と尋ねた。


「違いますよ、私の前にここの家政婦をしてた子」


「一度も会った事なかったなぁ」


「そうみたいですね」


ソファに座るよう促して、図々しく僕はドカッとゆうさんの隣に腰をおろした。


ゆうさんがちょっと驚く。


「はい、どうぞ」


ゆうさんに缶ビールを渡し、自分の缶を軽く当てて「乾杯」と言うと、ゆうさんも笑って「乾杯」と返した。


「何か用じゃなかったんですか?」


一口ビールを飲んだ後、ゆうさんが僕に尋ねた。


「うん。用があるの」


「何?」


僕は、ゆうさんにくっついてしまう位まで座っている場所を近づき、ゆうさんの目を見て言った。


「泣いてたよね?」


「え?」


「さっき、電話の向こうで泣いてた」


ゆうさんは絶句して僕を見つめた。


「何かあった?」


首を横に振りながら僕から目をそらしたゆうさんは「大丈夫」とつぶやいた。


「何でもないの。時々泣きたくなるだけ」


「前にもそんな事言ってた」


キッチンで空を見つめながら、大粒の涙を落していた時。


「うん。癖?みたいなもの」


僕はゆうさんを胸の中に抱きしめた。


ゆうさんの身体が硬直する。


多分、警戒してる。


「どうして隠すの?僕はあなたを信頼して、隠し事なんてしたことないのに」


ゆうさんの体の力がスッと抜けていく。


「何かあるなら話してほしい」


ゆうさんが僕の胸に額を押し当て、小さく嗚咽し始めた。


僕はゆうさんの身体を抱きしめ、髪をそっと撫で、震えが止まるのをじっと待った。




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