FRATELLI 第2章-F
第2章ーF
(理弥)
ゆうさんはコンビニ袋を手に現れた。
涙の痕は見えなかった。
「なんか今日、いつもと違うね!とってもいいよ!」
髪をおろした、紫のシフォンワンピ姿のゆうさんを褒めると、ゆうさんはちょっとムクれた。
「なんか、からかわれてる感じ」
「そんな事ないよ!ほんと素敵だよ~。お出かけしてたの?」
「そう、友達と食事に行ってたの。お酒臭いでしょ?」
「全然」
僕はゆうさんにソファを譲り、床に腰をおろした。
「冷たくない?」
「ん。ちょっと」
「良かったら、隣にどうぞ」
そう言って、ゆうさんが少しずれてくれた。
「サンキュゥ」
僕たちは並んで缶ビールで乾杯をした。
「ね、ラーメン、作ってくるね」
ゆうさんが立ち上がった。
「実はさ~お腹、空いてなくなちゃった」
「え?」
ゆうさんが拍子抜けした声を上げて、ソファに座りこむ。
「ゆうさんが来る間に、我慢できなくなちゃって菓子パン食べたの」
もちろん嘘だ。
最初からお腹なんて空いてない。
ゆうさんに来てもらうための作戦。
「ごめんね」
「いいのよ」
ゆうさんがいつものように、ちっちゃな笑くぼを見せてくれた。
「DVDでも観ない?借りてきてあるんだけど」
これも仕込み。
「色々あるけど、どれにする?」
ゆうさんが選んだのは、新作の純愛ハリウッド映画。
夏に大ヒットした1本だ。
「これ、観たかったの!」
「よし、じゃ、観よう!」
これがまた、泣ける映画で。
僕がまた、すぐにもらい泣きしちゃう人で。
いつもなら隣に居る兄弟に寄り掛かって泣くんだけど、今、隣に居るのはちっちゃなゆうさんで。
それに、ゆうさんも泣いてて。
僕は泣きながら、ゆうさんの肩を抱き寄せて、ちょうど僕の肩に乗ったゆうさんの頭に、僕の頭を寄せた。
「泣きたい時は、一緒に泣くよ」
僕が小さく言うと、ゆうさんは「え?」と聞き返した。
「さっき、電話の向こうで泣いてたでしょ」
ゆうさんは答えない。
「一人で泣かないで。僕が一緒に泣くから。半ぶっこしよ」
顔は見えなかったけど、ゆうさんがほほ笑んだのが分かった。
「ありがとう」
自分の言った事に恥ずかしくなって、僕は思わずおちゃらけた。
「いいヤツでしょ?」
「うん」
「大好き?」
「うん。大好き」
The Happy End
