妄想恋愛シミュレーション -38ページ目

FRATELLI 第5章ー9

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第5章―9


(理弥)


気が付くと、社長様の乱れた呼吸は聞こえなくなっていた。


「ありがとう・・・落ち着きました。いい話を聞かせてもらえて」


小さな声がした。


「いい話じゃないけど・・・落ち着けたなら良かったです」


その時、エレベータ内に電気が付いた。


と同時に、ゆっくりと動き始めたのが分かった。


僕は立ち上がり、社長様に手を差し伸べた。


僕の手を取り、社長様は立ち上がった。


服の乱れを直し、ハンカチでそっと汗をふき、「助かりました」とつぶやいた。


「みんなに、恥ずかしい姿、晒さずにいれます。体裁が保てます」


そう言って、扉の前に立ち、背筋を伸ばした。


社長様って、大変なんだな。


弱い部分は見せちゃいけないんだな。


僕は彼女の後ろに立ち、扉が開くのを待った。


「お礼がしたいので、いつでも結構ですから、メールをください。先日お渡しした名刺に、書いてありますから」


「お礼なんて・・・」


「いえ、必ず連絡をください」


彼女が背中できっぱりとそう言いきった時、エレベータは停止し、扉がスーッと開いた。


待ち構えていた人たちが、僕たちを取り囲んだ。




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