妄想恋愛シミュレーション -37ページ目

FRATELLI 第1章ーF

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第1章ーF




(ゆう)


「ゆうさん!」


リョースケ?


いや違う。


「ゆうさん!」


聞き覚えのある声。


そう、尋弥クン。


「ゆうさん!聞こえてる?」


「うん」


返事はしたけど、多分、私の声は外には届いてない。


「俺、尋弥。イラスト集見たよ。風間さんから事情も聞いたよ」


風間さんか。。。


多分、風間さんも、こうなるなって知らなかったんだろうな。


まっすぐな人だから、上の人たちと揉めたりしなきゃいいけど。。。


「俺さ!S出版の上の人たちに交渉するから!回収してもらうように頑張るから!」


私はビックリして、立ちあがった。


そんな事が可能なんだろうか?


「約束だったんだろ?弁護士雇って、著作権の侵害だって文句言ってやる!」


弁護士・・・


著作権・・・


「時間、掛かっちゃうと思うけど、でも約束は守らせるから!俺が必ずやるから!」


尋弥クンの叫ぶ声が、胸をひどくざわつかせた。

「だから安心して、ここから出てきて!俺がついてるから」


安心して・・・


俺がついてる・・・


胸にあったざわつきが、一気に熱いものに変わった。


涙があふれた。


もう、誰とも関わりたくないって思ってたのに。


感情に流されるのは良くないって分かってるのに。


私は、扉の鍵を外した。


ゆっくりと扉が開き、尋弥クンがそこに立っていた。


涙が止まらなくて、顔を上げられない。


温もりに包まれた。


気が付くと、尋弥クンの胸に抱かれていた。


私、何してんだろ・・・こんなに若い子に泣きついたりして・・・


我に返って、尋弥クンから離れようと、彼の胸を押した。


その時、尋弥クンが静かに言った。


「大丈夫。俺を信じて。俺はあなたを裏切ったりしないから。絶対に」


もう一度。


もう一度だけ、人を信じてみてもいいですか。


いずれ離れてく時が来ても、この一瞬の彼の気持ちは真実だったと信じる事ができそうだから。


やっぱり、バカだな、あたし。


尋弥クンのシャツを握って、顔をうずめる。


甘い香水の香りがした。




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