FRATELLI 第2章-E
第2章ーE
(奨弥)
ほんの1分くらいだろうか、僕に身体を預けていたのは。
ゆっくりと僕の胸を押し、ゆうさんは僕から離れていった。
手の甲で頬をぬぐいながら、ゆうさんは恥ずかしそうに笑った。
「さっき、友達と一緒に居る時、目撃しちゃったの、夫を。出張に行ってるはずの夫が青山に居た。女の人とホテルに入って行った」
「え?」
「浮気をしてるのは知ってた。だからそんな事はどうでもいいの。私だって、もう夫には触られたくないし、キスだって嫌。多分ね、泣けちゃったのは・・・」
ゆうさんは少し考えてから小さく言った。
「急に、孤独感に襲われたから。夫も、子供たちも、私から離れて行って。一緒に食事をした友達も、当たり前だけど、家族の元に帰って行ったから。急に寂しくなっちゃって・・・」
ゆうさんがまた、照れたように笑った。
笑いながら、ポロリと涙をこぼした。
「でも、夫は別として、子供は数日後にはうちに戻ってくるし、友達だって会おうと思えばいつだって会える。つまりね、感じたのは一時的な孤独感よ。だから大丈夫」
大丈夫といいながらも、尚、彼女の目からは涙が流れ落ちてくる。
必死で笑顔を作ろうとする姿が堪らなく切なくて、僕は再びゆうさんを抱き寄せた。
腕の中にある小さな肩が、いとおしく感じる。
こんな気持ちは久しぶりだった。
カッコいい事を言えば、守ってやりたい。
ずっとそばにいて、ちょっとの隙だって孤独感を感じさせたりしない。
「寂しくなったら、ここに来ればいい」
ゆうさんが僕を見上げる。
消え入りそうに「ありがとう」とつぶやく。
その唇に僕はキスをした。
ほんの少し抵抗したゆうさんは、その内僕の胸をギュッと握りしめて、僕を受け入れた。
ソファに押し倒して、長い、長いキスをした。
離れては重なり、重なっては離れる。
僕の唇がゆうさんの首筋を這うと、彼女は小さな吐息をもらした。
僕の理性が壊れそうになる。
「あなたが欲しい・・・」
僕は呟いていた。
「・・・抱いてください・・・」
キスを重ねただけなのに、僕たちの呼吸は乱れていた。
「あなたが後で後悔する可能性が少しでもあるなら、罪悪感が残るんだとしたら、僕は我慢する」
ゆうさんは首を横に振った。
「後悔なんかしない。今夜だけでいい。一人じゃないって信じたい・・・明日孤独に苦しんでも」
「絶対、苦しませたりしない」
The Sweet End
