妄想恋愛シミュレーション -45ページ目

FRATELLI 第1章―15

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第1章ー15




(奨弥)


久々の5人での雑誌の仕事をもらった。


僕たちをモデルとして育ててくれた、そして今なお支えてくれてるS出版社の男性誌【Men’s Style】


【FEBR】と同じフロア―に編集部がある。


この前ここに来たのは、そう、あの日。


尋弥がゆうさんに尖った日。


僕はそれを思い出して、思わずゆうさんの姿を探してしまった。


いるわけないか。


そう思った時、突然ガラスのドアが乱暴に開き、どなり声が聞こえた。


見ると風間さんが、携帯に向かって声を荒げてながらデスクの間を歩いている。


責任者っていうのは、こうしてテンションを上げなければならない事も多々あるんだろうな。


いつもの温厚な風間さんとのギャップに少々驚かされた。


でも、僕をもっと驚かせたのは智弥だった。


突然、ものすごい勢いで風間さんの元へと走り出したのだ。


こっちは担当者も来て、打ち合わせを始めようという時なのに。


名前を呼んで呼びとめたけれど、彼の耳には届かなかった。


立ちあがろうとすると、僕よりも早く尋弥が動いていた。


「すいません、ちょっと待っててもらえますか?」


尋弥は担当者の返事を待たずに智弥を追った。


僕も立ちあがり「ホントすみません。すぐに連れてきますから」そう頭を下げて二人の元へと急いだ。


風間さんは「話が違うじゃないですか!」と連呼している。


その横で智弥は風間さんのデスクに置かれた正方形の絵本のような本の表紙を、じっと見つめていた。


彼の指が、そこに表示されたタイトルをたどる。


【イラストレーターゆう 優しい空】


僕は結局、状況判断できなかった。


風間さんが「くそっ!」と吐き捨てて携帯をデスクに投げつけた。


「ゆうさんの名前、しっかり入っちゃった訳ですね」


智弥が言う。


「どういう事?」


僕と同じ疑問を尋弥が投げた。


でも智弥の言葉は答えではなった。


「名言集のイラストを付けるっていう話でしたよね。あくまで名言集だって」


「・・・こないだの校正の段階まで、そうなってた。でも出来上がったらこうだ。やられた」


風間さんが悔しそうにデスクをこぶしで殴った。


「名言なんて、ひとつも入ってない。。。」


智弥がページをめくると、ゆうさんらしい、優しく、暖かなイラストが、現れた。


「嘘だろ・・・」


智弥が絶句する。どんなにページをめくっても、文字などどこにも見当たらない。


「トップの最終判断だそうだ。ゆうにどう説明したらいいか・・・」


「でも、ゆうさん喜ぶんじゃ?」


僕の言葉に風間さんが押し殺した声で答えた。


「ゆうは、さんざん嫌がったんだよ。イラストは自分自身じゃないから、イラスト集は出したくないって。それを無理やり、こちらで用意した名言にイラストを添えるって形で納得してもらった。なのにこれだよ。ゆうを裏切ってしまった」


僕はようやく事態を理解し、納得した。


「なんとかならないんですか?」


尋弥が風間さんに詰め寄る。


「明日、発売日なんだよ。もう書店に本が配送されてる頃だ。ゆうの自宅にも、もう担当者が届けてきたらしい・・・」




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