セイジャク。A-3
A-3
(和弥)
いつものように火曜日の今日、ここへきた。
こうなると習慣みたいなもので、こないと気持ち悪い。
もちろん、ドラマに入ってしまえば、これない週が続いたりもするけど。
オレは飽きもせずハンバーグを食べ、食後にコーヒーを飲む。
コーヒーを置いてくれるのは、ゆうではないけど。
ここから見える景色は、さほど変わらず。
変わったとすれば、それはオレを取り巻く音。
何をしてても静かすぎる。
どんなに賑やかな場所に居ても、いつもオレだけが静寂の中にいるみたいだった。
「お客様、本日ホテル1階の裏庭で、ブライダルがございまして」
「はぁ」
会計をしながら話しかけてきた支配人に、オレは気のない返事をした。
「ぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか。思いがけない感動に出会えるかもしれませんよ」
なんだそれ。
オレは唇の端っこで笑んで、頭を下げた。
「ぜひ、裏庭へお運びください」
オレの背中にまで声をかけた支配人の姿が、脳裏に浮かぶ。
全く興味がないわけでもない。
次の映画の内容を知ってて言ってくれたのかもしれない。
今度は結婚式のシーンがある。
一度見ておくのもいいのかな。
1階に着いたエレベータを出て、なんとなく裏庭に向かってみる。
裏庭はホテルの中からも望む事が出来る。
平日の昼過ぎ、周りには誰もいない。
静かすぎる空間。
ガラス越しに光の眩しい、ガーデンパーティを眺める。
音は聞こえない。
でも賑やかな様子は視覚だけで充分に伝わってくる。
若いカップルを祝福する沢山の人の笑顔が溢れてる。
祝福を受ける人って、あんな風に笑うんだな。
あんな風に見つめ合うんだな。
ぼんやりそんな事を思っているオレの視線に、とてつもない衝撃が飛び込んできた。
・・・ゆう・・・?
