FRATELLI 第5章ー16
第5章ー16
(理弥)
内山さんが、僕たちの事務所にやってきた。
今度の雑誌広告用のラフを見せてくれると言う。
ラフを見せるなんて、あまりない事。
まぁ、そこまで丁寧にしてくれる企業もあるんだな、程度に考えていた。
それが。
様子が変だ。
小さな応接に俺と理弥、加藤さんと内山さんが入る。
いつもの明るい内山さんじゃない。
どこか落ち着きなく、おびえたように周囲を気にする。
「どうかしたんですか?」
尋クンの言葉に声をひそめて答えた。
「ここは安全ですか・・・?」
「はい?」
「ここには・・・隠しカメラとか・・・盗聴マイクとか・・・ないですよね・・・?」
一瞬、内山さんがおかしくなっちゃったんじゃないかと思った。
次の瞬間尋クンがトーンを落として言った。
「ここは大丈夫。安心して。その後、悪い方向に向かってるんですか?」
何の話?
全く見えない。
内山さんは瞳に涙をためて言った。
「社長、近々辞任すると思います・・・完全に・・・はめられたんです」
その後、押し殺した声で話してくれた。
石神部長と経理の高橋さん、主犯はこの二人だと言う。
社長が受け入れなかった資産運用を陰でやっていた高橋さん。
それをサポートしてきた石上部長。
その資産運用が違法行為だったと分かり、大株主のメインバンクからリコールを受ける。
違法だった事も、会社に損害を与える事も、石神と高橋は知っていたのだという。
いわゆる、ゆうさんを引きずり下ろすための策略。
こんな時、僕はただ黙って聞くだけで、なにもしてやれない。
なにも言えない。
尋クンは、色んな対抗案を言えるのに。
例えそれが無茶な案だとしても。
怒りをあらわにできるのに。
僕はただ、うつむいて、押し黙って、
今、あなたがどんな気持ちでいるのか、
どんな不安に包まれているのか、
じっと想ってあげる事しか出来ない。
情けないよ・・・
