FRATELLI 第5章ー17
第5章ー17
(尋弥)
当り前だけれど、俺たちのような素人には、どうする事も出来ないと思い知る。
怒りの矛先が向かう方向は一つなのに。
「・・・ゆうさんは・・・どうしてるの?」
今まで黙っていた理弥が言った。
「今頃、銀行に行って話をしていると思います。その前に、お二人に伝言するようにと私をここへ」
「一人で銀行へ?」
「ええ。誰も巻き込みたくないっていう思いが強いようで」
一度、内山さんは涙をぬぐった。
「私たち女子社員は皆、社長と一緒に仕事をしたいんです。でも社長は、何があっても職を捨てる事をするなって。この会社を辞めるのは、次が決まってからにしなさいって。・・・私たちの生活の事を考えてくれてるんです。だから、社長が辞めさせられても、私たちには被害が及ばないように、必死になってくれて・・・」
内山さんが、ぬぐっても、ぬぐっても、涙は止まらない。
あとから、あとから、ホロホロと落ちてくる。
「お二人に伝言をお伝えします。【今まで私との間で送受信したメールや電話の履歴を、全て削除してください。このような事態になり、お二人にご迷惑が掛からないように祈っております】との事です」
多分、河西社長は、もう離職するつもりでいるんだろう。
自分の事より、周囲の事。
これで一層、男を信用しなくなるんだろうな。
俺は舌打ちをした。