妄想恋愛シミュレーション -26ページ目

FRATELLI 第5章ーA

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第5章ーA





(尋弥)


≪今どこ?会いに行ってあげるよ≫


こんな時、こんな風にしか言えないんだよ、俺。


暫くして返信が来た。


件名に≪ここ≫


本文なし。


添付画像が1枚。


夕焼けの空。


その空を映す川面。


対岸の街のたそがれ。


来れるものなら来てみなさい、そんな挑戦状に思えた。


≪来てほしいなら、もっと素直になればいいのに≫


≪来てほしいなんて思ってないわよ。でも来たいなら来てもいいけど≫


ったく。


相変わらずツンツンしてる。


心細いだろうと思って、心配してるのに。


もう一度、送られてきた夕焼けの風景を見る。


あ、俺、分かっちゃった。


だって、見つけちゃったもん。


屋上のデパートのマーク。


河とデパート。


そういったら、あそこしかない。


ここから20分位。


≪今から、行ってあげるから待ってて≫


あくまでも、君の為、的な。


≪待ってて欲しいなら、待っててあげてもいいけど≫


まるで勝負だな。


嫌いじゃないけど。




俺がそこへたどり着いた時には、だいぶ暗くなっていた。


画像を確認しながら彼女の姿を探す。


そして、見つけた。


土手に腰をおろし、大学のボート部の練習を見つめている後姿。


ドカッと横に腰を下ろす。


一瞬だけ、驚いたように俺を見つめ、すぐに目を反らした。


「来てやった」


「呼んでないけど?」


「あれ?そうだった?声が来て欲しがってたけど」


「残念。勘違いだったみたいね」


どこまでいっても好戦的だな。


ま、俺もそうだけど。


「なーんだ。元気そうじゃん」


「なに?慰めにでもきたつもり?」


「まさか!落ち込んでしおらしくなってる姿を見たかったんだよ」


「しおらしく?自分でも想像できないわ、そんな姿」


鼻で笑う。


「ったく、素直じゃねえな。強がってばっかでさ」


今まで笑っていた彼女の顔が、少し俯いた。




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