セイジャク。③
③
(和弥)
初めてキスをした日。
覚えてる?
そこまでたどり着くのに半年以上も掛かったね。
いつものように抱きしめた後
いつものように悲しい笑顔で見上げた君の頬に触れた。
寒くもないのに
ぶざまな位
オレの指は震えていた。
キスを受け入れながら
君の指先はオレのシャツの袖を強く握りしめてた。
キスの後
突然泣き始めた君。
どうしていいかわからないオレ。
胸に引き寄せて
君の嗚咽が消えるまで
じっと息を殺してた。
胸の中で君が呟いた言葉。
「最後の日がいつか来るのが怖い」
多分それはオレも同じ。
「最後の日は絶対来ないから」
そう言ってオレも泣いた。
それから。
キスをするたび君は泣いた。
わかってる。
オレを信じられないのではなく
ましてや君の気持ちに自信がないわけではなく
ただ君は恐れていた。
君の病気の再発。
不安を取り除いてあげられない自分に
オレは苛立つ。
「大丈夫」って言葉さえ
卑怯な響きに思えた。
涙を流す君を抱きしめながら
唇を強くかんだ。
それでも二人が離れずに入れたのは
お互いの痛みがわかっていたから。
自分の傷以上に
相手の傷に痛みを感じていたから。
そんな瞬間が訪れるたび
オレは心から思った。
君と出会えてよかった。
そして君も言った。
「そばにいてくれてありがとう」と。
