FRATELLI 第5章ー1
第5章ー1
(ゆう)
「アンダーウェアーのブランド「ジュ・ルーテ」の取締役社長、河西ゆうです」
私はいつも通り相手の目を見据えたまま、少しだけ頭を下げながら、名刺を差し出した。
相手が男なら、一番初めの挨拶の段階で、少々威圧的な態度を見せなければナメられる。
「フラッテリの尋弥です」
「理弥です」
紹介されたのは、人気モデル5人組の内の2人。
5ツ子の三男と五男らしい。
テレビに興味のない私は、その人気の程もよく知らないが、噂だけは良く耳に入ってくる。
企画宣伝部からの依頼で、この二人を今度のコマーシャルモデルにふさわしいかどうか面接することとなった。
「どうぞ」
私の城でもある社長室の赤い革張りのソファに二人を勧める。
見た感じ、二人は全く違う性格のようだ。
「五ツ子だって聞きましたけど、ルックスも骨格も随分違うのね」
尋弥が答える。
「良く言われるんですが、どうやら多卵生らしいんです」
「なるほど。私どものブランドはご存じ?」
「はい。私たちも愛用してます」
また尋弥が答えた。
「今は?」
「はい。私は履いてますが・・・」
尋弥が理弥を見る。
「あ、僕も履いてます!」
なんだか、子供っぽい子。
「そう。じゃ、さっそくなんだけど、下着になってもらって、ヴィジュアルのチェックをしたいんだけどいいかしら?」
「はい」
私は後ろに立っていた企画宣伝部長の石神を見た。
「ではお二人、こちらへどうぞ」
二人は石神に連れられて、社長室の隣の小さなスタジオへと入って行った。
面接用に作ったスタジオだから、めったに使わないが、かなり本格的な機材を揃えている。
優秀なアンダーウェアーの条件は先ずは質にある。
手触り、肌触り、履き心地。
これがクリアーされてからのデザインだ。
雑誌やテレビ、またはネット上で、この質感を正確に伝えようとしたら、やはりそれなりの技術が必要となる。
写真を取る側の技術、そして取られる側の技術。
これをクリアしてもらわなければ、広告を作る意味がない。
「準備が出来ました」
石神に呼ばれて、私はスタジオへと入った。
ジュ・ルーテの最新モデルを見に着けた二人の青年が、シルバーの背景布の前に立っていた。
「ふーん」
さっきとは全く違う表情。
尋弥は憂鬱そうに顎を上げ、斜に構えて立っている。
モデルらしい体型だ。
手足が長く、腰つきがしなやか。
理弥も少年のような笑顔は消え、鋭い目つきに変わっていた。
尋弥とは逆に顎を下げ、精悍な顔つき。
さすがモデル。
シャッター音に合わせて、ポーズを変え、ポラ撮りはあっと言う間に終わった。
最近ではプロジェクト自体に携わる事も少なくなったけど、最終チェックだけは参加させてもらう。
やはり、私の立ちあげた会社。
私の意思無しでは、私の理想とする会社ではなくなってしまう。
幹部の中には、私よりもずっと年齢が上の男性もいる。
もちろん私が採用を決めた精鋭揃い。
それはそれで危険が多いというのも承知している。
中には私からこの会社を奪おうと企てる者だっている。
男とはそういう間抜けな生き物。
だから私は男なんて信用しない。
利用できなくなったくずは捨てるだけ。