妄想恋愛シミュレーション -103ページ目

FRATELLI 第1章ー2

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第1章ー2


(尋弥)


紹介されて以来、ゆうさんのイラストがよく目に飛び込んでくる。


街頭で、銀行で、仕事場で、家の中でも。


ここにも、ここにも。


そのたび思う。

ホントにあの人の描いたものなんだろうか。


優しくて、あったかくって、思わず微笑んでしまう。


どこにも、あの人の要素を見いだせない。


「どした?」


理弥の声に引き戻される。


「この絵、好きなの?」


理弥が笑顔で壁のポスターを指差していた。


「あ、いや・・・」


「珍しいね、尋クンが絵を眺めるなんてさ。横顔とか、チョーカッコいいんだけどぉ!」


そう言って後ろから抱きついてくる。


「うるせえよ」


身体をよじって理弥からのがれる。


「にげんなよぉ~」


理弥のテンションの高い声が、狭い楽屋に響いた。


「うるせー!静かにしろよぉ」


今度は和弥が叫ぶ。


「だってさぁ、尋クンが変なんだぜ~。すんげーカッコつけながら、地球温暖化のポスター見てんの」


「もういいから、お前は唐揚げでも食ってろ!」


テーブルの上に広げられた弁当の唐揚げを理弥の口に突っ込む。


「あ、うめえこれ」


俺たちがふざけてる横で、智弥は割りばしの袋を折って、何か黙々と作っていた。


「あッ」


俺が理弥に食わせた唐揚げは、智弥の弁当だと今気付く。


智弥は工作に余念なく、弁当を広げた事さえ忘れてるようだ。


ま、いいか。


そう思った瞬間、奨弥と目が合う。


ニヤッと笑ってる。


見られてた。


奨弥の人差し指と中指が、スーッと伸びてきた。


あ。


また一つ、唐揚げが姿を消した。



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