FRATELLI 第1章ー2
第1章ー2
(尋弥)
紹介されて以来、ゆうさんのイラストがよく目に飛び込んでくる。
街頭で、銀行で、仕事場で、家の中でも。
ここにも、ここにも。
そのたび思う。
ホントにあの人の描いたものなんだろうか。
優しくて、あったかくって、思わず微笑んでしまう。
どこにも、あの人の要素を見いだせない。
「どした?」
理弥の声に引き戻される。
「この絵、好きなの?」
理弥が笑顔で壁のポスターを指差していた。
「あ、いや・・・」
「珍しいね、尋クンが絵を眺めるなんてさ。横顔とか、チョーカッコいいんだけどぉ!」
そう言って後ろから抱きついてくる。
「うるせえよ」
身体をよじって理弥からのがれる。
「にげんなよぉ~」
理弥のテンションの高い声が、狭い楽屋に響いた。
「うるせー!静かにしろよぉ」
今度は和弥が叫ぶ。
「だってさぁ、尋クンが変なんだぜ~。すんげーカッコつけながら、地球温暖化のポスター見てんの」
「もういいから、お前は唐揚げでも食ってろ!」
テーブルの上に広げられた弁当の唐揚げを理弥の口に突っ込む。
「あ、うめえこれ」
俺たちがふざけてる横で、智弥は割りばしの袋を折って、何か黙々と作っていた。
「あッ」
俺が理弥に食わせた唐揚げは、智弥の弁当だと今気付く。
智弥は工作に余念なく、弁当を広げた事さえ忘れてるようだ。
ま、いいか。
そう思った瞬間、奨弥と目が合う。
ニヤッと笑ってる。
見られてた。
奨弥の人差し指と中指が、スーッと伸びてきた。
あ。
また一つ、唐揚げが姿を消した。