東京電力福島第1原発事故を契機に太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマスの再生可能エネルギー、さらには新エネルギーや省エネ技術が注目されている。大規模集中型の電源は安定供給やコスト低減では大きな役割を果たしてきたが、万一の場合の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。エネルギーの多重化、地域分散型の電源が重要だと思い知らされた。
県は新年度、「1市町1エネおこし」を目標に掲げ、17市町の地域特性を生かした再生可能エネルギーの普及に乗り出す。行政や市民団体、学識者、ノウハウを持つ事業者による組織を設置。まず6地域で事業化を探り、他地域にも広げる構えだ。
全国の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、水力を除けば1%程度にすぎない。不安定でコストの高い点が普及を阻んできたためだ。ただ、国や地方自治体が本腰を入れて取り組んできたとも言い難く、導入に弾みをつけるにはまず行政の後押しが必要になる。
環境省が昨年公表した再生可能エネルギーの潜在力調査によると、県内では太陽光48万キロワット、陸上風力175万キロワット、中小水力33万キロワットと試算されている。また、バイオマスは発電に限らず熱としての利用も考えられる。
気候に左右されず比較的安定した発電を見込め、農業用水など県内で適地が多いと考えられるのは小水力発電だ。最も出力の小さな「ピコ水力」なら、中山間地域の集落単位で取り組めるし、鳥獣害防止用の電気さくの電源として使用するなど、工夫次第で活用の幅も広がる。小水力の先進地である富山県では、宇奈月温泉を回遊する観光客向けの電気自動車、バスの電源に使い、地域の活性化に役立てている例もある。
地域に根差したエネルギーの活用には住民や各種団体、企業などさまざまな主体が関与し、持続可能な仕組みを探ることが大切だ。県内でも市民が出資して太陽光パネルを設置した「市民発電所」の運営例があるし、小水力でも可能だろう。
地域にある再生可能エネルギーを最大限利用した社会システムづくりを10年前から提唱し、実践している東北大の新妻弘明教授は、エネルギーの地産地消は地域の豊かさの創造と共有につながると指摘している。「1市町1エネおこし」の取り組みも、地域の共有資源としてエネルギーを活用し、地域の暮らしや経済を豊かにしていくという視点が不可欠ではないか。
7月には、再生可能エネルギーにより企業などが発電した電力の全量買い取りを電力会社に義務付ける固定価格買い取り制度がスタート。普及に弾みが付くか、注目されている。
再生可能エネルギーの「埋蔵量」は、都市部でなく圧倒的に地方に多い。エネルギーの地産地消に向けた地域単位での地道な取り組みは、国全体のエネルギー供給のあり方を考える上でも一石を投じよう。
出典:福井新聞