
課題曲「手紙」の大きな反響と、課題曲で生まれる“奇跡”への期待
異彩を放つ、第75回課題曲「手紙」
先日、Nコンのポップス課題曲の歴史についてまとめましたが、その中でもNコン2008の課題曲「手紙」はとりわけ異彩を放っています。
特に「手紙」を引っ提げアンジェラ・アキさんと中学生たちとの交流を描いた特番「拝啓 十五の君へ」シリーズは再放送が何度も繰り返され、今や教育現場で教材としても活用されるくらいになっています。
この特番は、TBSの安住紳一郎アナウンサーがNコンにハマるきっかけとなった特番で、出張先のホテルで見て号泣したとも語っています。
私も未だにこの特番を時折見返して涙しています。
すでに15年経過しているので再放送は難しいかもしれませんが、90回記念か100回記念にはまた再放送を願いたいところ。
感動の渦に包まれた全国コンクール
おそらく、ここまで感動に包まれた全国コンクールは後にも先にもないだろうなと思うくらいの感動的なステージでした。
特に、アンジェラさんのピアノ伴奏の歌唱ステージと最後の全員合唱は、会場の中学生の多くが涙する姿がありました。
先日、課題曲初演が初めて公式YouTubeにアップされましたが、この年の全員合唱もぜひお願いしたいです。
全方位的な反響を得た「手紙」
「手紙」はあらゆる方向で反響を得ました。
Wikipediaの情報を借りると…
- 2008年の日本郵政グループCMソング
- 2010年の関西電力「阪神淡路大震災メモリアル~15歳の君へ」CMソング
- 2011年のSENDAI光のページェントテーマソング
その他にも映画やアニメ、バラエティ番組でも流れることが多く、卒業ソングとしても絶大な支持を得ています。
YouTubeで検索するだけでも多数の演奏動画が投稿され、日本だけでなくアジアを中心とした世界各国で歌われています。
そして先ほど紹介したNコン特番をモチーフにしたと言われる小説「くちびるに歌を」も生まれ、さらにはその小説を原作とした新垣結衣主演の映画も制作されました。
▲映画「くちびるに歌を」(主演・新垣結衣)
また、学校の教科書への起用も多く、私が調べただけでも、国語・英語・音楽・道徳・現代社会・美術等に掲載されたことがあります。
美術はちょっと意外ですが、「自画像を描く」という項で「今を生きる自分、なりたい未来の自分をテーマに、ふさわしい表現方法であらわそう。そして、作品に対する思いを言葉にして添えてみよう」というねらいで歌詞が掲載されているそうです。
▲ 教科書に掲載された課題曲
ポップス課題曲へのアプローチのヒント
先日紹介したニューヨークの合唱団の「手紙」。
この演奏は今まで数多くの団体が歌った演奏とも違う演奏でした。
▲「手紙」(Young People's Chorus of New York City)
歌い出しは日本の合唱団と遜色のない流暢な日本語の発音で度肝を抜かれるのですが、注目は「人生の全てに意味があるから~」の部分。
この部分の表現はすべて出尽くしたた感があったのに、これまでのどの団体とも違うゴスペル風の感動的な表現。
曲種に応じ発声を変えるだけで、こんなに曲の印象が変わるのかと目からウロコでした。
このニューヨークの合唱団は昨今のポップス課題曲との向き合い方に大きなヒントを与えたと思います。
“奇をてらえ”というわけではありませんが、こういった奇跡のようなシーンがNコンのステージで生まれることを期待せずにいられません。
15年後の自分に書いた手紙、持っていますか❓
ちなみに、「手紙」を歌っていた15歳の中学生も今年30歳😲
「手紙」は10代のアンジェラさんが30歳の自分に宛てた手紙から生まれた課題曲でした。
当時15年後の自分に手紙を書いた中学生は、今年その手紙を開くのかも❓
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【㊗️Nコン90】Nコンのポップス課題曲の歴史をさらに深くさかのぼる
ポップス課題曲1作目はどれだ❓
Nコン90の記念イヤーであるNコン2023が開幕していますが、今年は90年の振り返りも多く、その中で歴代のポップス課題曲にも触れられていました。
でも紹介されていたのはほんの一部。
どうせなら全部振り返ってやれ、ということで、久々に調査してみました。
ポップス課題曲の定義は❓
難しいのは「ポップス課題曲」の定義。
今回の調査では、「歌謡曲やJポップを“ポップス”とし、それらを手掛けたことのある制作者が作った課題曲」としました。
なので、異論がある人もいるかもしれませんが、あくまでも「私の感覚が基準」と思ってください。
では、歴代のポップス課題曲を表にしたのでご覧ください。
作詞・作曲の太字が対象の制作者です。
Nコン90記念ポップス課題曲の歴史
| 年度 | 部 門 |
課題曲 | 作詞 (補作) |
作曲 (編曲) |
|---|---|---|---|---|
| 昭和45年 | 小 | 空がこんなに青いとは | 岩谷時子 | 野田暉行 |
| 昭和49年 | 高 | ともしびを高くかかげて | 岩谷時子 | 冨田勲 |
| 昭和50年 | 中 | ともだちがいる | 岩谷時子 | 平尾昌晃 (京健輔) |
| 昭和53年 | 小 | おーい海! | 山川啓介 | 山本直純 |
| 昭和54年 | 小 | 出発の朝 | 山川啓介 | 福田和禾子 |
| 中 | 時は流れても | 山上路夫 | 池辺晋一郎 | |
| 昭和55年 | 小 | びっくりしゃっくり | 伊藤アキラ | 越部信義 |
| 昭和56年 | 小 | 未知という名の船に乗り | 阿久悠 | 小林亜星 (若松正司) |
| 昭和57年 | 小 | 光の中へ さあ君と | 柴田陽平 | 坂田晃一 |
| 昭和61年 | 小 | 山があって海がいて | 山川啓介 | 南安雄 |
| 高 | さようならの季節に | 吉沢久美子 | 坪能克裕 | |
| 昭和63年 | 高 | 時代ー飛び立つ鳥はー | 阿久悠 | 佐藤眞 |
| 平成元年 | 小 | あたまの上に空 | 神沢利子 | 小林亜星 |
| 平成3年 | 中 | 地球が私を愛するように | 山川啓介 | 野田暉行 |
| 平成6年 | 高 | そして夜が明ける | なかにし礼 | 西村朗 |
| 平成12年 | 小 | 大すき | 小泉周二 | 山本健司 |
| 中 | こうしていよう | さくらももこ | 朝川朋之 | |
| 平成13年 | 小 | ロボット | サンプラザ中野 | 福田和禾子 |
| 中 | 変 | ドリアン助川 | 寺嶋陸也 | |
| 平成13年 | 小 | やさしい風 | 萩原あゆみ | グッチ裕三 (福田和禾子) |
| 中 | 白いページ | 竹内香織 (小椋佳) |
小椋佳 (横山潤子) |
|
| 平成18年 | 小 | 未来を旅するハーモニー | 吉田美和(Dreams come true) | 吉田美和(Dreams come true) (寺島尚彦) |
| 中 | 虹 | 森山直太朗/御徒町凧 | 森山直太朗/御徒町凧 (信長貴富) |
|
| 平成19年 | 高 | 言葉にすれば | ゴスペラーズ・松下耕 共同制作 | 安岡優・松下耕 |
| 平成20年 | 中 | 手紙 | アンジェラ・アキ | アンジェラ・アキ (鷹羽弘晃) |
| 平成21年 | 中 | YELL | 水野良樹(いきものがかり) | 水野良樹(いきものがかり) (鷹羽弘晃) |
| 高 | あの空へ~青のジャンプ~ | 石田衣良 | 大島ミチル | |
| 平成22年 | 中 | I ♥ ××× | 大塚愛 | 大塚愛 (上田真樹) |
| 平成23年 | 中 | 証(あかし) | 山村隆太(flumpool) | 阪井一生(flumpool) (加藤昌則) |
| 平成24年 | 小 | 希望のひかり | 遊佐未森 | 大熊崇子 |
| 中 | fight(ファイト) | YUI | YUI (松本望) |
|
| 平成25年 | 小 | ふるさと | 小山薫堂 | youth case 桜田直子 |
| 中 | 友~旅立ちの時~ | 北川悠仁(ゆず) | 北川悠仁(ゆず) (相澤直人) |
|
| 平成26年 | 小 | ゆうき | 中川李枝子 | 村松崇継 |
| 中 | 桜の季節 | ATSUSHI | ATSUSHI/マシコタツロウ (加藤昌則) |
|
| 高 | 共演者 | 小林香 | 横山潤子 | |
| 平成27年 | 中 | プレゼント | Saori(SEKAI NO OWARI) | Nakajin(SEKAI NO OWARI) (大田桜子) |
| 平成28年 | 中 | 結ーゆいー | miwa | miwa (佐藤賢太郎) |
| 平成29年 | 中 | 願いごとの持ち腐れ | 秋元康 | 内山栞 (横山潤子) |
| 高 | 君が君に歌う歌 | Elvis Woodstock(リリー・フランキー) | 大島ミチル | |
| 平成30年 | 中 | Gifts | 越智志帆(Superfly) | 越智志帆(Superfly)/蔦谷好位置 (大田桜子) |
| 高 | ポジティブ太郎 ~いつでも始まり~ | つんく | 上田真樹 | |
| 令和元年 | 中 | 君の隣にいたいから | 宮崎朝子(SHISHAMO) | 宮崎朝子(SHISHAMO) (加藤昌則) |
| 高 | 僕が僕を見ている | 川村元気 | 岩崎太整 (横山潤子) |
|
| 令和2年/ 令和3年 |
中 | 足跡(あしあと) | Little Glee Monster | KOUDAI IWATSUBO/Carlos K. (上田真樹) |
| 令和4年 | 中 | Replay | 北村匠海 | 西尾芳彦&DISH// (田中達也) |
| 高 | 無音が聴こえる | 住野よる | 松本望 | |
| 令和5年 | 小 | 緑の虎 | 廣嶋玲子 | 村松崇継 |
| 中 | Chessboard | 藤原聡(Official髭男dism) | 藤原聡(Official髭男dism) (横山潤子) |
|
| 高 | 鳥よ空へ | 劇団ひとり | 信長貴富 |
所感
ポップス課題曲1作目はこれ
このブログでは、ポップス課題曲の1作目を昭和45年度小学校の部課題曲「空がこんなに青いとは」としました。
作詞は岩谷時子さん。
この課題曲は、高度経済成長と公害問題という時代を映した課題曲。
NHKがドキュメンタリー番組・現代の映像で「空がこんなに青いとは」という番組を制作し、大きな反響を呼びました。
「いや、音楽がポップスじゃないとポップス課題曲とは言えない」
という方もいるかもしれないので、ポップス課題曲1作目Bとしてこの課題曲も。
昭和49年度高等学校の部課題曲「ともしびを高くかかげて」です。
冨田勲さんによるギター伴奏も可能とした課題曲で、それまで難化しつづけていた課題曲からの転換となりました。
▲「ともしびを高くかかげて」(八潮高校合唱部)
※ バンド演奏版
では「中学校の部のポップス課題曲1作目は❓」というと…
昭和50年度の「ともだちがいる」とします。作曲は平尾昌晃さん。
▲「ともだちがいる」(荏原第三中学校合唱部)
以上3作はいずれも岩谷時子さん作詞ですね。
世界で歌われる課題曲も
ポップス課題曲のターニングポイントは、平成20年の第75回大会のアンジェラ・アキさんの「手紙」でしょう。
「手紙」は現在に至る15年間のNコンの方向性を決定づけました。
そして「手紙」はNコンの枠を超えて、映画やCM、そして日本だけでなく世界中で歌われる課題曲となりました。
このニューヨークの合唱団、「手紙」をまた別の色に染めてます。すごい😲必見です。
▲「手紙」(Young People's Chorus of New York City)
Nコン90はOfficial髭男dism
そして今年。人気のOfficial髭男dismが満を持しての提供。
特にファンというわけではないのに、久々にこの時期にすでに課題曲をフルで覚えてしまいました。さすがです。
▲「Chessboard」
※ Nコン公式による初演動画ですが、埋め込み不可となっているので、YouTubeで直接ご覧ください
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第75回全日本合唱コンクール小学校部門全国大会観覧記
大阪で全国大会
Nコンブログと名乗ってるのに、Nコンについて更新が途絶えてしまってますが、Nコン自体は逐一楽しんでいます。
そんな中、今年は2019年に始まった全日本合唱コンクールの小学校部門が大阪で開催されると聞き、数年前に中学校部門が大阪で開催されたときは都合が合わなかったので、今回は都合を合わせて前半のみですが、観覧してきました。
このブログの初期から取り上げている、私が合唱を再び聞き始めるようになったきっかけの学校の一つ、根城中学校の元顧問の竹内秀男先生が審査員の一人におられました。遠くからでしたが、ようやく初めてお会いできました(涙)
フェニーチェ堺での熱い合唱の数々
全国大会が開催されたのが堺市のフェニーチェ堺。
ここが完成したのが2019年で、小学校部門と同い年。いつも気になって通り過ぎるだけでしたが、まだまだ新しくて気持ちの良いホール。音響も良いのではないでしょうか。山鹿小学校が9人で少ない人数でしたが、それでもしっかり2階席で聞こえました。
課題曲と自由曲の演奏でしたが、気になったことをいくつか。
- 別の課題曲を選べばもっと魅力が発揮できただろうに、という団体がチラホラ。
- E1の「かっぱ」は体全体で音楽を表現するのが正解に感じました。伴奏が刻むリズムに対して平坦な歌声に聞こえる団体も。
- よく歌えているのに大人しく感じる自由曲の学校は後半を迎えると印象に残りにくそうと思いました。39団体あるので、そういう視点の選曲も大事だと感じました。
- 高音の抜けがもう少し…と思う団体もいくつか。高音をクリアにすればもっと魅力的になったはず。
- よくいえばダイナミック、悪く言えば一本調子に感じる学校が何校かありました。力みを上手く抜いてあげたら音楽のぎこちなさが解消されるはず。
- バルトークの「パン焼き」、もう少し多くの学校の演奏を聞きたかったです。
- 自由曲の選曲がNコンと同様、やはり偏りが大きいですね。昭和から続く問題なので、これは永遠の課題なのかも。
コロナに負けない小学生たち
ネガティブなことも書きましたが、コロナ禍に負けず、小学生たちが一生懸命歌ってる姿は胸がいっぱいになりますね。
先生がすごく生徒さんが好きなんだろうなと思う学校もあって、思わず頬が緩みました。
Nコンブログなので、Nコンで金賞を受賞した黒沢尻北小学校にも触れておこうかと。
今年のNコンはリアルタイムで見ていましたが、そのときから頭一つ以上抜けているような完成度でした。
全日本の舞台でも同様、「児童合唱でここまでの演奏ができるのか」と目玉が飛び出そうでした。63名という最多人数もあって、説得力が凄まじかったです。子供らしさと技術をあそこまで両立できるとは。ブラボー言いたかったです。1位金賞おめでとうございます。3年連続の1位とのことで、今年はNコンとの2冠です。
ということで、簡単でしたが観覧の感想です。
参加団体の皆さん、ありがとうございました。
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