5年前にこの時を想像していた人がどれだけいただろうか。
僕自身はLALへ移籍したオフから、この可能性を信じていた。
”通算得点記録 歴代1位“。近年達成されてきた新記録の中でも最も偉大な功績の1つとなるだろう。
現在2位にいるLeBron Jamesが37062得点。
皆さんご存知の通り、1位はKareem Abdul-Jabbarで38387得点。
残りはわずか1325得点。近年は少し故障による欠場も増えてきたLeBronだが、昨季のように56試合出場に留まったとしても、平均23.6得点であれば達成出来る。いかに近付いているか分かるだろう。
しかも昨季は、チーム事情によりスコアリングに力を入れざるを得なかったことも影響しているが平均30.3得点と、得点王のJoel Embiidとわずか0.3得点差まで迫っている。
2年前あたりから更新の可能性を議論され始めたが、もう「更新できるのか?」ではなく、今や「いつ達成されるか?」という状態になっている。
今回の記事では、これがいかに偉大な功績であるか、少し紐解いてみようと思う。
Kareemがどうして1位になったのか
実はKareemは最終年では平均10.1得点まで落ち込んでおり、最後の3年は17.5・14.6・10.1といずれも20得点を下回っている。1位としては意外に思う方もいるかもしれない。Kareemが1位になったのは、いくつかの要因がある。
まず、20年間NBAに在籍したうち、80試合以上出場したのが11年と、非常に健康を保っていた。それどころか73試合以下の出場だったシーズンは2年のみ。その2年も65・62試合出場と、非常に欠場が少ない。
LeBronもそうだが、コンディション管理にかなり力を入れている為に怪我が少なく、ヨガ・武道・瞑想といったものを取り入れ、心身共に自己管理を徹底していた。
そしてNBAファンなら誰もが知るスカイフックを武器に、キャリア終盤も点を取り続けた。ちなみにKareemの引退時の年齢は42歳で、デビューまではNCAAに3年間在籍していた。もしKareemがLeBronと同じように高校から加入していたら・・・
次は平均得点に注目。キャリア平均24.6得点と非常に高い。最も高いのは3年目だった71−72シーズンで34.8得点。センターとしては歴代有数のハイスコアラーで、平均30得点超えのシーズンが4回。
ただ、ここで1つ気になることは無いだろうか。
キャリア平均得点でKareemを上回るWilt ChamberlainやMichael Jordanが何故1位になれなかったのか。
ここからは“1位になれなかった者達”を見てみよう。
1位になり得た選手達
まずはMichael Jordan。キャリア平均は30.1得点で歴代1位。だが、多くの人が知る通り、彼は2度にわたってNBAから離れている。合計で4年間NBAから離れており、実はこの4シーズンで普段のレベルでスタッツさえ残していれば、1位になっていた可能性は十分にある。著しく欠場したシーズン以外では毎年2300得点を超えており、これを4年こなせば9200得点。
Jordanの通算は32292得点、足せば40000得点にすら到達する。こういったスポーツの話で“IF(もし)”はある意味タブーと言えるほど無意味だが、やはりバスケの神様と称されるだけのことはある。
続いて、得点記録といえば何かと関わってくるWilt Chamberlain。
1試合100得点、シーズン平均50得点超えなど、異次元の記録ばかり残している彼が、なぜ1位になれなかったのか。
彼もキャリア平均では30.1得点で歴代2位と、十分なり得たはずだ。
主な要因は1つ、15年しか活動していなかったこと。これでも十分長い方で、むしろKareemが長過ぎるのだが。
Chamberlainがいた頃はまだ今ほどスポーツ医学などが発達しておらず、40歳で現役などあり得ない。
1年だけ、わずか12試合出場に留まったシーズンもあるが、他のシーズンではいずれも72試合以上出場。48分フル出場が通常運転のようなChamberlainだったが、実はシーズン平均50得点超えを果たした時も「得点だけとにかく狙え」とオーナーから名物的存在になる為に指示されていたりと、現代ならあり得ないような時代背景もあってのものだったりもする。
1試合100得点という怪物記録も、実際にはKobeの81得点ほど華やかではないものだった。
決して批判するわけではないが。
ちなみにLeBronに超えられるまで2位だったKarl Maloneも36928得点とかなり迫ってはいた。
合計19年間プレイし、キャリア平均25.0得点。鉄人と呼ばれただけあって19年のうち17年は80試合以上出場と非常に好材料が揃っているが、デビューシーズンの14.9得点と最終年の13.2得点が足を引っ張ってしまう形となった。とはいえ素晴らしい記録だ。
LeBronに迫る選手は現れるのか?
Maloneの内容を見れば分かるように、かなりの好材料を揃えても1位には届かない。LeBronの場合は、高校からドラフト入りできたことが、かなりのアドバンテージとなっている。
現在、現役でトップ20に入っているのはCarmelo Anthonyのみ。流石に今から1位を追いかけるのは、年齢や能力の衰えから不可能だろう。ハイスコアラーの彼でも11位で28289得点と、いかに壁が高いか思い知らされる。メロの次で現役なのはKevin Durant。24位で25526得点だが、既に33歳。トップ5も狙えるほど順調に得点を積み重ねていたが、直近5年の故障欠場などで一気に可能性は低くなってしまった。個人的には歴代トップ3には入るスコアラーなので、非常に惜しい。
実はLuka Doncicが比較的順調なスコアリングをしている。LeBronと同じ19歳からNBA入りし、4シーズンを終えて平均26.4得点と悪くない。得点を維持しつつ75試合ほど出場するシーズンが大半を占め、20年近くプレイできれば可能性は出てくるが、やはり厳しいだろう。
僕の予想ではあるが、30年以上は歴代2位すら届く選手は出ないだろう。
もしかすると僕が90歳(63年後)になってもLeBronが1位のままかもしれない。
そのいくつかの理由を挙げてみよう。
歴代1位になるには・・・
もしLeBronの引退以降で歴代1位を狙う選手が現れるにはどんな条件が必要か、考えてみる。
一応書いておくが、選手達は当然 この記録を最優先にプレイしたりしていない。あくまでファンとして妄想するだけである。
まず、近々再び解禁される高校から直接NBA入りという条件は重要なポイントだ。
若いうちに25得点近くを稼げるかが最初の試練であり、僕の中ではAnthony Edwardsがここで歴代1位候補から外れた。
18歳もしくは19歳でNBA入り、ルーキーから続けて25得点程度を記録。
加えて、毎シーズン70試合以上出れる健康体を維持しなければならない。シーズンアウトが1度でもあれば、一気に難易度が上昇する。
上記の状態を少なくとも19年は続ける必要がある。
仮にここまでを最低レベルでこなすと・・・
毎試合25得点 × 年間70試合 × 19年間 = 33250得点(1シーズンあたり1750得点)
これでも歴代6位のDirk Nowitzkiをようやく超えた程度。
もう少し妄想してみよう。
毎試合28得点 × 年間70試合 × 20年間 = 39200得点
こんな恐ろしい化け物スタッツでようやく現在なら1位。恐ろしいのは、LeBronが引退する頃にはこれ以上の可能性があることだ。
LeBronの引退
本人も「まだまだいける」と話しているように、大きな怪我が無い限り引退は少なくとも3年以上先だろう。
今オフで2年の延長契約を結んだが、これは以前から公言している、自身の長男であるブロニー君との共演に合わせた契約と言える。さらに先日のとある記事によると、次男のブライス君との共演の可能性も匂わせる発言をしている。
ブライス君が最速でNBAデビューを果たすとすれば2026年。
その頃はLeBronは24年目で42歳。そう、Kareemの引退年と同じ年齢である。仮にそうなれば40000得点も既に超えている計算になる。
5年前にそんな話をされても「いや、流石に衰えて厳しいでしょ。笑」と言われるだろうが、もはや不思議ではない領域に入っている。歴代でも類を見ないほど衰えを見せないLeBronが一体どこまで魅せてくれるのか。
まずは今季 歴代1位になる瞬間が、無事にくることをただ祈るのみ。