ベジタリアンは健康的?
皆様こんにちは。ナチュロパスの植村和美です。ブログを覗いてくださってありがとうございます。今日は、ベジタリアンとホルモンバランスについて書きたいと思います。4週間ほど前、クリニックに、5か月間生理が来ないと悩んでいる女性がやってきました。彼女の名前はテレーザさん。ドイツ出身の20代の女性です。色白でほっそりした体型の彼女。色の白さは、きっと多くの女性が憧れるのでしょうが、私は一目みて、あらっもしかして栄養足りてないんでない?というのが第一印象でした。3年ほど経口避妊薬を服用していました。ピルを飲むのをやめた2か月後に生理が1回きたのですが、そのあと5か月間全く月のものがお出ましにならない。それを悩んでクリニックに来られました。いろいろお話を聞いていくと7か月前からビーガンダイエットを実行しているとのこと。ビーガンとは、完全菜食主義で、野菜の他に、穀物、果物、豆、海藻、種子、きのこだけを摂る人々のことをいいます。野菜しか食べない人が、ベジタリアンと呼ばれるのかといえば厳密に言うとそうではなくベジタリアンにもいろいろいて、肉を基本的に食べないノンミートイーターベジタリアン(でも、動物の皮や油、魚、乳製品、卵は食べる)や、セミベジタリアン (肉を食べる量が少ない時々野菜のみ、でもフレキシブルに食べる)ラクトベジタリアン(基本的に野菜や穀物、豆類など植物由来のものを食べるが、乳製品も食べる)オボベジタリアン(野菜や穀物、豆類など植物由来のもののほかに卵も食べる)ラクトオボベジタリアン(野菜や穀物、豆類など植物由来のもののほかに乳製品や卵は食べる)アクアタリアン(野菜や穀物、豆類など植物由来のもののほか、魚類も食べる)などなど実はいろいろなカテゴリーに分かれているのです。卵や乳製品、魚類を食べる人もいるベジタリアンは、大なり小なり動物性のタンパク質を含む食品を摂取することになるのですが、これに比べて ビーガンの場合、食べる食品にかなりの制限があり、栄養の偏りが見られる傾向にあります。テレーザさんに、どうしてビーガンになったのかその理由を聞くと、動物を殺傷したりすることはどうしても許せないことなので、ビーガンになったとのこと。うーん(゜-゜)あなたの決断はリスペクトする。しかーし、残念ながら栄養面や健康面を考えると決してベストな状態ではないのじゃよー。それが証拠に、彼女は、疲れやすく、すぐにエネルギー切れ、立ちくらみがすることもあり、顔色が透き通るように白すぎる。健康な人に見られるほんのりの赤みがかった血色のよい顔色からは程遠い、青白ーいお顔。アンタそれは栄養不足でっせ!しかも、ほとんどしっかりと脂質もとっていない状態。そりゃー生理もこないよー。女性ホルモンの大元の素材はコレステロールなんです。コレステロールって聞くと溜まったら体によくないというイメージを持たれるものですが、実は三大栄養素である脂質、糖質、タンパク質を材料にして、体内でそのほとんどが合成されるもの。というもの、性ホルモンや、胆汁、ビタミンDの素材になるため、体にとっては必要だからです。ビーガンの方は、特に脂質やタンパク質が不足しがち。その結果ホルモンの材料になるコレステロールが十分合成されない可能性があります。特に、魚類に多くふくまれるオメガ3と呼ばれる必須脂肪酸が足りなくなる傾向にあります。また、ビーガンやベジタリアンの方は、植物由来の油を多く摂取する傾向にあります。植物由来の油は、オメガ6と呼ばれる必須脂肪酸が多く、摂取は必要なのですが、多く摂りすぎると、体内で炎症を起こしやすいアラキドン酸に変換される傾向があります。一方オメガ3は、炎症を抑える物質へと変換されます。ですからオメガ3を意識して多く摂るほうがよいということになります。オメガ3とオメガ6の摂取比率は、1:1から1:4が理想といわれています。またビーガンの人は、鉄、ビタミンB12, 亜鉛も不足しがち。鉄は、赤血球のヘモグロビンの成分、肌や爪の成分、酸素運搬、神経伝達物質や遺伝子細胞に形成に必要になるため、卵子を産生する卵胞の形成のためにもなくてはならない栄養素です。鉄はほうれん草など野菜にも含まれていますが、植物に含まれる鉄は、ノンヘム鉄と呼ばれるもので、体で吸収されにくいものなのです。一方動物性の肉などに含まれる鉄分はヘム鉄と呼ばれるもので、これは比較的吸収されやすい鉄分になります。植物由来のノンヘム鉄の吸収を高めるためには、ビタミンCあるいはそれを含む食品を一緒に摂取する必要があります。鉄不足の人の赤血球が小さくなります。ビーガンの人が不足しがちな栄養素のうち ビタミンB12は基本的に動物性の食品にしか含まれていません。いったん吸収したビタミンB12は腸内細菌の影響でリサイクルされます。昔はお肉を食べていたけど、ある時を境に肉を食べなくなった人は、もしかすると腸内環境がよければある程度のビタミンB12の蓄えがあるかもしれませんが、基本的に、野菜しか食べない食事を長期に渡って続けるとビタミンB12が不足する傾向にあります。ビタミンB12はこれまた遺伝子細胞のもと、赤血球のもとなる栄養素で、骨髄や腸壁の粘膜に必要、細胞の合成に必要な大切な栄養素なんです。不足すると、赤血球が肥大したり、ソーセージのような細長ーい形になります。それから、もう一つ不足しがちな栄養素が亜鉛。亜鉛は非常に多くの役割を担うミネラルの一つで、体内の200以上もの酵素の働きを活性化させたり、抗ウイルス、脳機能の発達、遺伝子細胞の形成、ビタミンB群の吸収を助ける、免疫力アップ、インスリンの生成を助ける、成長ホルモン生成に関与する、乳酸のレベルを抑制する、傷の修復を助ける甲状腺ホルモンの働きに必要なんです。また、ビーガンやベジタリアン食で多く食べられる豆類や穀物類から摂取できるタンパク質は、動物性の食品に比べると必要なアミノ酸が十分とれない可能性があります。タンパク質は、20種類ほどのアミノ酸から作られていますが、そのうち、体の中で合成できない必須アミノ酸が9種類ほどあり、食品から摂取する必要があります。動物性の食品はこの9種類の必須アミノ酸をすべて含むのに対して、植物由来のたんぱく質の場合一部のアミノ酸が少なく十分に摂取できない可能性があるのです。例えば穀物類は、リジンやイソロイシンが少ない豆類は トリプトファンやメチオニンが少ない種やナッツ類はリジンやイソロイシンが少ないという具合に。リジンは、抗ウイルス作用があり、余談ですが、口唇ヘルペスがよくできる人にはお勧めのアミノ酸です。また、お肌に必要なコラーゲンやエラスチンに欠かせないアミノ酸でもあります。イソロイシンは、ホルモンやペプチド合成や、筋肉の発育に必要なアミノ酸です。そして、トリプトファンはハッピーホルモンと呼ばれるセロトニンと、眠りに必要なメラトニンという神経伝達物質やホルモンのもとになるアミノ酸です。このように、野菜だけを食べる生活を続けると、栄養が偏ってしまうことがお分かりいただけたかと思います。そして研究文献や調査結果では、ベジタリアン食を実践している人のほうが比較的生理不順になりやすい傾向にあると報告していますし、菜食主義ではない人と比べると、菜食主義の人のほうが、うつなどの精神的な症状になる人の数が多いという統計結果もでています。神経伝達物質の元になるものは、アミノ酸ですし、その変換に鉄分やビタミンB12,その他の栄養素は欠かせません。もし、あなたが菜食主義を選ぼうとされているもしくは、菜食主義を始められたとしたら、体の声をよーく聴いてください。疲労や、エネルギー不足、生理不順 爪がもろくなる、髪がぬけやすい落ち込んだり、いらいらしたりという精神的な症状が出やすくなるなど、何か変調がでてきたらそれは あなたの食生活を見直すか、栄養素不足の部分をサプリメントで補う必要性がでてきているのかもしれません。さて、前述のテレーザさん。彼女を説得して オメガ3オイルのサプリメントを処方し、亜麻仁油やチアシード(これらはαリノレン酸を含みます。αリノレン酸は体内でオメガ3必須脂肪酸へ変換されます)、アボカド、ココナッツオイルなどの体によい脂質を積極的に摂ってもらうようにし、穀物、豆類、ナッツや種類をまんべんなく組み合わせできるだけ必要なアミノ酸を含むタンパク質が取れるよう、また、必須アミノ酸が入ったプロテインパウダーで、不足のアミノ酸を補うようにし更に鉄分とビタミンB12を補給する栄養補助剤を 処方したところ3週間後のフォローアップセッションで、生理がきましたーと報告をいただきました。ハレルヤ―めでたしめでたし参考文献:* Ingenbleek Y & McCully K, 2012, Vegetarianism produces subclinicalmalnutrition, hyperhomocysteinemia and atherogenesis, Nutrition,Vol 28, no. 2, pp 148-153* Barr, S, 1999, Vegearianism and menstural cycle disturbances:Is there an association?, The American Journal of Clinical Nutrition,vol 70, pp 549-554* Banies, S, Powers, J & Brown, W, 2005, How does the health andWell-being of young Australian vegetarian and semi-vegetarian womencompare with non-vegetarian? Public Health Nutrition, vol 10no 5, pp436-442* Osiescki, H, 2006, The Nutrient Bible, Bio concepts Publishing,EagleFarm, Australia