冬晴れの海―。
碧い青い、空と海。
ここのところ、“食”とか“森”が続いてて、久々の“海”テーマ。
まぁ、冬ですから、当然っちゃ当然だが。
海はやはり良い。
この青を浴びると、体と心がすぅっと自然体になれる。
そんな感じ。
* * *
今回海には、海洋生態学研究室の調査としてきた。
研究室のフィールドである相模湾・真鶴半島沖2kmの海上。
毎月調査でやってくる場所だが、
今回は珍しい光景を目にした。
蜃気楼
普段、真鶴からは見えない対岸の房総半島の一部が見えていた。
しかも、“浮島”状態で。
横浜のみなとみらいビル群も。
陸地は見えないのに、水平線上にビルの頭だけがちょこんと突き出ていた。
近くの沿岸の町並みも、あやしげに揺らいでいた。
そんな幻想的な光景を見渡しながら、調査のサンプリングに勤しんだ。
蜃気楼は、密度の異なる大気中で光が屈折して起こる現象。
大気の密度は温度で決まるが、温度が低いほど密度が高くなる。
今回のように、水温の低い海水によって、海面近くの大気が冷やされると、
上空の大気より下の大気が密度が高くなって、下の大気のほうに光が屈折する。
だから、本来は水平線の下にあるものが、光が屈折することによって見えるようになる。
科学的に言ってしまうと。
* * *
蜃気楼は光のいたずらによって見える幻。
本来見えるはずないものが見える自然の魔法。
科学的にメカニズムが解明されていない時代、蜃気楼は人々を驚愕させたという。
魔法とか、呪いとか、伝説とか。
蜃気楼といえば、エジプトのピラミッドの謎を解明する1つの説を思い浮かべる。
ナイル川が氾濫し、ピラミッドが逆さになって空に浮かび上がる時、
王が天に昇っていけるようにと、
通路の天井に階段を作り、ピラミッドの底に逆さになった船を作った―。
その説をひらめいたとき、その人は蜃気楼を見て、
古代の人々の思想と壮大なロマンを感じたのかもしれない。
蜃気楼の幻想的な光景は、自然の壮大さと巧妙さを感じさせてくれると同時に、
この幻想を科学的根拠で解明して見せた人間の頭脳と探究心に、
改めて感心してしまったりなんかして。
海はこれだからおもしろい。