僕たちFOUR TRIPSは98年の10月から、大阪のイベンターI氏の事務所に所属することになったんだ。I氏は大阪に帰って来いというけど、僕たちはそれは断った。

 

「わかった、じゃあ、もう一年だけ東京でやれ。結果が出なければ大阪に帰ってこい」とI氏、親戚の叔父さんみたいなことを言う(笑)僕たちに、選択肢はないと思われたので、渋々、承諾した。

 

I氏。ゴッドファーザーに出て来そうな、恰幅のいい若き実業家という感じ。30代後半だったと思う。彼の珍采配のおかげで、またしても僕たちの運命は「めっちゃ笑える悲劇」モードに突入するよ!(笑)

 

事務所から毎月の給料も少しは出るけど、メジャー時代の半分以下だった。それでは全然足りず、メンバーはアルバイトを始める。僕は下北沢の老舗レコード屋で働き始めるんだ。「WONDER」の印税はみるみる減ってゆくしね(笑)

 

事務所移籍のタイミングで、ベースの池田がバンドをやめることになった。池田は長身で、飄々とした独特の雰囲気を持つナイスガイ。ファンもたくさんいたよ。対バンや芸人さん達と一番仲良くなるのは池田だったし、どこに行ってもスタッフ達にも可愛がられていたよ。そんな男だ。

 

そう、彼はメンバー4人の間の潤滑油的存在だった。口数は少ないけど、いつも的確だった。93年に「WONDER」を演るか演らないか、バンド内が二つに割れて結局メンバーが1人辞めることになった時も「僕はこの歌、すごくいいと思います!」と口を尖らせて言ってくれた。頼もしく感じたよ。

 

思い出は尽きない。離れるのはとても辛かったけど、当時、どう考えてもそれ以外の選択が出来なかったんだよね。

 

「プロになるために」なんてお題目を掲げて、90年代のはじめに神戸で集まった、年齢も経歴もバラバラの4人は、心の中のハングリーさを照れ笑いで隠しつつも、眩しいスポットライトを夢見て、結束して頑張って来た。「頑張る」というひどく泥臭く、今では流行らないであろう言葉をわざわざ選んで表現したいくらい、あの頃の僕ら4人は誰よりも頑張った。

 

僕の20代は全てFOUR TRIPSに捧げた。今思うと、本当に楽しかった。全部ひっくるめてフォルダーに入れてzipにまとめて、心のクラウドに「楽しかった」と名前をつけて保存している。

 

池田はあの頃の事をどう感じているだろうか。

 

image

 

彼が今、幸せに暮らしているといいな、と思う。

 

彼がトラックで神戸に帰った夜、僕は「夕方フレンド」という歌を書いた。

 

夕方フレンド

 

抱えた夢も どっか置いといて

クニヘ帰るんね 胸をはれよ

だけどね 人はいつでも 忘れることだけ忘れないから

My Dear Friend  贈る言葉 やめた

 

離したくないな 傷つけたくないな

君はいつだって 素敵に笑った

だけどね 髭は剃れよな 不況の波に埋もれないように

My Dear Friend 誰とだってやれる

 

夕方 爪弾いた歌 あの日僕らは瓦礫の街で

同じメロディ 空に浮かべた

泣き顔見せるだけで 世界が解決出来るなら

それもいいね いつかそれもいい

 

結果が出ないと、続けられないんだ。僕たちはそれを、友を失うという悲しみをもって、身にしみて理解した。痛感した。

 

売れたい。

 

 

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「俺たちの次のアルバム作りを手伝って欲しい」とアップル&ペアーズのフロントマン、岡田純に告げられたのはそんな頃だった。

 

メジャーセブンなコード感とガレージ的質感のハイブリッドなサウンドを当時の純は目指していた。その「メジャーセブンなコード感」な曲作りを僕が手伝うことになった。彼らの名作2ndアルバム「エレクトリック・ドーナツ・ショップ」のうちの数曲、僕は「立会人」もしくは「目撃者」となる。

 

 

毎晩のように、純が家に来て、作りかけの歌を聴かせてくれた。

 

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いつも読んでいただいてありがとうございます!!

成瀬英樹

http://www.hidekinaruse.com

 

 

 

 

※因みにもちろんインスパイア元はキャロル・キング「You've got a friend」だが、僕は中野督夫さんの’夕方フレンド’から着想した。ウルフルズにも同タイトルの曲がありますが、それは随分後の作品です。

督夫さん、闘病中だと聞いています。心から祈っています。

 

 

2018年12月1日(土)
成瀬英樹 生誕50祭@大阪
「ただいま!マスター!大ちゃん連れて帰ってきたでー!」

出演 成瀬英樹/白井大輔

場所 5th Street
http://www.5th-street.com
大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル2階・3階

開場 18:00
開演 19:00

料金 2800円 
当日 3300円  
※(1D別途)

 

 

2018年12月10日(月)
「成瀬英樹・生誕50祭 / ヒデキ感激!ナルーソニック!」

座りの座席は満席となりました。現在立ち見のご予約を受け付けております!

出演:
成瀬英樹
スペシャルゲスト:
石田ショーキチ
黒沢秀樹
榊いずみ
山崎あおい
SOWAN SONG

etc.

下北沢 風知空知
時間:開場18:30/開演19:30
料金:前売り¥2,800/当日¥3300
(共に+1Drink600円)

風知空知メール予約のみ(先着受信順整理番号付き)
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
*ご希望公演名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号をご明記の上、お申し込みください。

 

10月13日(土) 新宿:真昼の月 夜の太陽

こちらノルマ付き、インディーズの皆様と!なんと持ち時間たったの30分!笑
アウェイの成瀬の苦悶を見に来てください!!

出演:ナガオカ智 、夢井みづき 、DELMO 、成瀬英樹 、あるはるか 、Lizards get tails 
open/start 17:15/17:45
前売/当日 2300円(ドリンク別)

 

2018年11月10日(土)
白井大輔×ナルソワン(成瀬英樹、SOWAN SONG)
"西の星、東の星と光る夜"

ナルソワンの初ライブ!特別な新しい曲を用意してお待ちしております!!

 

場所 lete
東京都世田谷区代沢5-33-3
下北沢駅南口 徒歩4分

開場 18時半
開演 19時半

料金 2500円 1D別途

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※因みにもちろんインスパイア元はキャロル・キング「You've got a friend」だが、僕は中野督夫さんの’夕方フレンド’から着想した。ウルフルズにも同タイトルの曲がありますが、それは随分後の作品です。

督夫さん、闘病中だと聞いています。心から祈っています。