日本が誇る食文化「おせち」
世界的にも類を見ない文化の一つです。
そんなおせちについて私たちはどれくらいのことを知っているでしょうか？
詳しく語れる方は意外と少ないのではないかと思います。
そこで、今回はそもそも「おせちとは何か」「一品一品のおせちに込められた想い」を説明していきたいと思います。
聞き慣れない言葉が出てくるかと思いますが、なるべくわかりやすく説明していきますので、最後までぜひ読んで下さい。
おせちとは何か？
おせちの名の由来は「御節供（おせちく）」にあるとされています。
おせちは漢字で書くと「御節」と書きますが、理由はここからきています。
では
「御節供（おせちく）」とは何か？
季節の変わり目などに祝事をする日を「節日（せちにち/せつじつ）」と言います。
これは中国が唐の時代に、一年を竹のように節で区切って特別な日を「節（せち）」と呼び、日本もこれにならったとされています。
この節日の会食のことを「節会（せちえ）」と呼びます。
そして節日に神に供える食べ物（神饌）のことを「節供（節句）」と呼びます。
「節供（節句）」に「御」をつけて丁寧にしたものが「御節供（おせちく）」です。
おせちはこの「御節供」が略されたものであるとされています。
五節句
節供は時代の流れの中で、いつのまにか「節日の日」という意味に変化してしまいます。
江戸時代には中国から伝わった「五節句」という風習が、幕府が公的な行事として定めます。
五節句はそれぞれの季節の草木に関連し、その季節の植物を食べることで邪気を払おうとしたものです。
五節句
一月七日（人日/七草の節供）
三月三日（上巳/桃の節供）
五月五日（端午/菖蒲の節供）
七月七日（七夕/七夕祭り）
八月八日（重陽/菊の節句）
「おせち」の名前の由来とされる「御節供（おせちく）」は、この五節句などの節日に神に供えるものであったと考えられています。
また、節日には、神に供えた飲食物（神饌）を家族で食する直会（なおらい）が行われました。
直会には、神様のエネルギーや新たな命をもらうという意味があったとされる。
つまり、それぞれの季節の節日に、直会に出される食べ物が、もともとのおせちということになるが、現在は、正月料理だけを指すようになっている。
重詰料理
おせちといえば「重詰料理」のように思われていますが、かつては年迎えの「膳」がおせちと呼ばれていたと言われています。
重詰料理がおせちと呼ばれるようになったのは、江戸時代後期〜明治とされています。
保存に適し、「めでたさを重ねる」という意味があります。
正式なおせちは四段重ねとされています。
完全を表す数の「三」の上に一段加えた「四」ということです。
「四」は春夏秋冬や東西南北にも通じるものです。
地方によっても異なってくるが基本は
一の重（一番上） 口取り
ニの重 焼き物
三の重 酢の物
与の重（四を嫌って与とする） 煮しめ
が盛られます。
おせちに込められた想い（縁起物としての意味）
重箱には様々な料理や飾りが盛り込まれますが、それぞれに意味があり、おせちを築いた先人たちの想いが込められています。
祝い肴三種（いわいさかな）
「三つ肴」とも呼ばれます。
三という漢字は完全を意味するとされています。
関東と関西で違いがあり
関東 黒豆・数の子・ごまめ
関西 黒豆・数の子・叩き牛蒡
とされています。
黒豆と数の子は一緒で、ごまめと叩き牛蒡の違いがあります。
黒豆
邪気を払い、黒く日焼けするほどマメに働き、健康であるようにという願いが込められている。
また「黒」は、道教では魔除けの色として尊重されている。
数の子
鰊の卵であり、たくさんの卵の粒が子孫繁栄を連想させると言われる。
日本では昔から祝い事には欠かせないものとされてきました。
数の子という名は、かつて鰊を「カド（イワシ）」と呼んでいたため、「カドの子」となり、「カズノコ」に訛ったとされています。
ごまめ（田作り）
五穀豊穣を願い、「五万米」を当て字とした縁起物。
片口鰯は農作物の肥料として使われた畑は豊作に恵まれたことから、「田作り」とも呼ばれます。
叩き牛蒡
牛蒡は、地中に根を深く張ることから、家の基礎が堅固で代々続くようにという願い。
また、叩き牛蒡は「開き牛蒡」とも呼ばれ、叩いて身を開き、開運を願うとされています。
慈姑
見た目から分かるように、球根部分から「芽が出る」ことが「めでたい」という意味です。
ですので、おせちでは芽を生かして調理されます。
また慈姑という漢字は「慈」は慈しみを、「姑」は母を指し、慈しみ深い母という意味にもなると言われています。
裏白（うらじろ）
おせちだけではなく、しめ縄など正月の飾りに用いられるものです。
二つの葉が相対しているので、夫婦円満になるといわれます。
また、その名の通り、葉の裏が白く、白髪が生えるまで夫婦ともに長生きすると言った意味や、心の潔白の意味も込められています。
千両・万両
どちらも、赤い実をつける植物であり、その呼び名が縁起がよいということで使われます。
その名の通り、財に恵まれるようにという願いが込められています。
海老
長い髭や、茹でると年寄りのように腰が曲がるので、老人に例えられ「海老」と書かれます。
腰が曲がるまで長寿でいられるようにと願いが込められています。
和食では、海老を真っすぐにして茹でることがありますが、おせちでは腰が曲がった形＝つの字に茹でられます。
また、海老は脱皮を繰り返して成長していくので、生命が続いていくこと、出世を願う思いも込められています。
橙
橙はなった実を落とさずに、何年も新しい実をつけていくことから、
家が代々つづき、繁栄するようにという願いが込められています。
また橙には面白い特徴があり、中国では「回青橙」と書きます。
これは緑だった実が秋になり熟すと橙色になります。その実を採らずに歳をまたぐと、実が再度、緑色に戻るのです。
一度熟したものが、元に戻るので「青年に戻る」という意味合いもあるようです。
金柑
おせちでは「金冠」とも書き、神々しい色合いが富をもたらす縁起物とされています。
鮮やかな色合いは、重箱に華を添えてくれます。
昆布
昆布巻きや子持ち昆布
多くの語呂合わせがみられるのが昆布です。
「こぶ」は「慶ぶ」に通じるとされる。
「子生」と書いて子孫繁栄に繋がるとされる。
「子生婦」と書いて、子宝に恵まれようにや、出産祝いの想いも込められている。
また昆布は「夷子布（えびすめ）」とも呼ばれ、七福神の恵比須様に繋がって縁起がよいとされました。
ちょろぎ
「長老木」「長老喜」「長老貴」「千代老木」「千代呂木」などの当て字で書かれ、長寿を願う意味が込められています。
また、形が米俵に似ているので豊作祈願にも通じています。
中国原産で、日本には江戸時代に入ってきたそうです。
節が多くあるミミズに似ていることから、韓国語のミミズ＝チーロンイが訛ってチョロギになったとされています。
きんとん（栗金団）
黄金色が商売繁盛や金運を呼びとされ、縁起のよい料理とされている。
本来は、和え衣もすべて栗で作るのだが、栗だけで作ると手間やコストが大きくかかるため、さつま芋で作られることが多い。
するめ
幸せをとどめる女という意味の「寿留女」と江戸時代の当て字が使われます。
長い間日もちするするめのように、末長い幸せや、夫婦円満の意味も込められています。
「夫婦喧嘩はするめえ」と洒落ていわれたりもしたそうです。
結納品としても用いられますが、かめばかむほど味が出てくる夫婦の象徴として贈られるます。
鯛
「めでたい」の語呂合わせは有名ですのでご存知かと思います。
七福神の恵比須様が抱えている魚としても有名です。
関西では「睨み鯛」という風習があり、三が日の間は鯛に箸をつけず、眺めるだけにするという習わしがあります。
それだけ鯛は特別な魚として捕らえられてきたという証です。
鰤
鰤が出世魚であり、立身出世（社会的によい地位につき、世間に有名になること）を願うとされます。
出世魚とは、成長するにつれて呼び名が変わっていく魚のことです。
ワカシ（ツバス） 20cm前後
→イナダ（ハマチ）40cm前後
→ワラサ（メジロ）60cm前後
→ブリ１m以上
※地域によっても呼び名は異なります。
蒲鉾
紅白の蒲鉾で、正月のおめでたさが表現されている。
半円の形が初日の出に似ていることからもおめでたいとされます。
また紅白の「赤」は魔除けや慶を、「白」には清浄や神聖の意味があります。
※かつてより日本では赤色は魔除けとされ、神社の赤い鳥居は見たことがあるかと思います。
縄文時代の土器にも、赤色顔料を塗ったものが見つかっています。
赤飯や小豆も魔除けに通じるものがあり、邪気を払うために食されたとも言われています。
ちなみに蒲鉾というのは、昔は竹輪のことを指しました。
名前の由来は、竹輪が植物の「ガマの穂」に似ていて、
ガマの穂は鉾（ほこ）の形だったため「がまのほこ」となり、
「かまぼこ」となりました。
蛤
蛤は左右の貝がぴったり合うのは一つしかないことから、「貝合わせ」と名づけられました。
「一夫一妻の鏡」とされ、別名「めおと貝」とも呼ばれる縁起物です。
平安時代から江戸時代にかけて、公家や大名家の女性達の間では「貝合わせ」という遊びが行われていました。
貝殻の上下に絵や歌を書き、それを合わせて楽しむというもの。
ここでは蛤の殻が主に使われていたのです。
伊達巻
由来は諸説あるが
「伊達」とは豪華、華美、魅力的、見栄を張る
などの意味であることから、伊達巻の見栄えのよさを表しているという説が有力。
また、形が巻物に似ていることから、知識が増えるようにという話もあります。
八つ頭（里芋）
八つ頭は里芋の品種の一つで大きな親芋と小芋が分かれずにくっついて成長しています。
親芋が小芋を引き連れている親分のように見えるので、食べれば「頭（リーダー）」になれるとされています。
里芋も小芋がたくさんつくことから、子宝を連想させ、子孫繁栄に繋がるとされています。
また里芋や、慈姑は六方に剥かれたりします。
この六方にも意味があり、六角形は亀の甲羅に見えることから縁起がいいとされています。
それゆえに六方剥きは「亀甲切り」とも呼ばれます。
蓮根
蓮根のたくさんの穴は、将来の見通しがよくなるようにという願いが込められています。
主に花蓮根として用いられる。
花蓮根は甘酢に浸されているので、防腐効果があり、焼き魚の横によく添えられます。
紅白なます
京人参の赤と、大根の白で紅白のおめでたさ。
千切りは紅白の水引きを指しています。
いかがだったでしょうか。
日本人であるならば、やはり理解しておきたいですし、
想いを感じながらおせちを食べるというのは、とても素敵な時間になると思います。
みなさん、よいお年をお迎え下さい。
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