あれは半年前。

娘とのお出掛けの途中で新宿の某公園に立ち寄る機会があったので、いつも通り虫探しに励んでいた私たち。

エノキの幼木を探して片っ端から見ていくと、あちこちにアカボシゴマダラの幼虫を発見。さすが特定外来生物アカボシゴマダラ。都会のど真ん中でも逞しく生きているのだな。

新宿の公園のエノキの幼木に居たアカボシゴマダラ幼虫

↑エノキの幼木にかじられた痕(食痕)があったらよ~く探そう。

 

新宿の公園にいたアカボシゴマダラ成虫

↑擦れてない綺麗なアカボシゴマダラ成虫も居ました

 

 

そしてヤブガラシも片っ端から探して見ていったところ、ヤブガラシの蔓にしがみついている、見たことの無い巨大イモムシを発見。

このしっぽピーンはスズメガの幼虫だ!

新宿の公園のヤブガラシの蔓の上にいたウンモンスズメ終齢幼虫

↑ヤブガラシの葉っぱの裏に隠れていた巨大イモムシ

 

踊る心でイモムシを引っ掴んだところ、セスジスズメやコスズメ、ホシホウジャクなど滑らか柔らかな子たちとは違って硬くザラザラした感触。「放せ!放せ!」とクネる動作がとても力強く、驚いて思わず放り投げてしまいそうなほど。

 

ヤブガラシにくっついていたけど、君は一体誰なんだい?

家に持ち帰ってイモムシハンドブック(安田守著/文一総合出版)と照らし合わせて調べてみると、どうやらそれは「ウンモンスズメ」の終齢幼虫のようだった。

ウンモンスズメ終齢幼虫

 

ウンモンスズメ終齢幼虫の三角頭

↑三角頭

 

ウンモンスズメ終齢幼虫の腹脚

↑可愛らしい腹脚

 

ウンモンスズメ終齢幼虫のお尻としっぽ

↑しっぽは真っ直ぐで、イボイボがある。

 

葉脈にそっくりなウンモンスズメ終齢幼虫

↑体側面の斜めの縞模様は、葉脈に擬態しているのかな。

 

幼虫の食樹はケヤキやアキニレなどニレ科植物だというが、この子はヤブガラシの蔓にくっついて居たので、一応ヤブガラシとケヤキの両方を飼育ケースに入れて観察。

2日ほど飲まず食わずだったこの子は、結局どっちも食べずに土に潜って蛹化したので、ヤブガラシの蔓に居たのは食樹のケヤキから蛹化場所を探して降りて彷徨っているうちに、ヤブガラシの蔓に登っちゃった、ということだったようだ。

ウンモンスズメ蛹

↑蛹

 

ケヤキは都心部でも街路樹や公園の植栽としてよく植えてあるので、ウンモンスズメも都心部でけっこう見られるようだ。こんな大物がひょっこり居るなんて、都会のお散歩も気が抜けない。

 

 

 

そして半年が経ち、4月初旬の暖かい日。気が付いたらウンモンスズメちゃんは羽化していた。飼育ケースのフタに卵も産んであったので、メスだ。卵の大きさは2mm。

ウンモンスズメメス羽化成虫

 

 

 

ウンモンスズメメス羽化成虫の正面顔

↑ウンモンスズメ♀羽化成虫。

 

深い緑色のグラデーションがとても美しい。

顔を見てびっくり、目が黄色。

やや吊り目がちで、ゴージャスな深緑色の毛皮をまとった美人さん。昆虫に対して「美人」なんて言葉を使う日が来ようとは、まったく予想だにしなかったぜ。

シャンと伸ばした背筋から凛とした気品が漂う、高貴なる佇まい。

 

↑裏側は黄色味を帯び、表側とはまた異なる風合い。

 

口吻は短いが、ちゃんとあるらしい。

ウンモンスズメ成虫の口吻

↑乳白色の巻いたストローみたいなものがチラ見えしている

 

 

暗闇で写すと目は真っ黒。

モスアイ(moth-eye)構造ってやつだ。

複眼の表面にある、一定間隔で多数並んだナノレベルの微細な突起により僅かな光も取り込み反射しない、そんな特殊な構造により闇夜でも飛び回り餌を探すことが出来るのだ。

ウンモンスズメメス成虫のモスアイ

 

ウンモンスズメメス成虫のモスアイ

 

 

モスアイ構造は、生物模倣(バイオミメティクス)の技術によってさまざまな光学素材やディスプレイの反射防止処理に応用されていて、人間社会に役立っている好例である。

ありがとう、モス様。

 

 

後翅は飛んでいる最中にチラッと見えただけなので写真に収めることが出来なかったが、紅色を呈していた。

ウンモンスズメ、なんと美しいデザインなんだろう。

 

一期一会のこの出逢いに感謝。

また会える日を楽しみにしているよ❤️







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