羽化から2週間。
グズついた天気と夜の冷え込みを気にするあまり、外に放せずに飼育ケースの中で飼い続けてしまったサザナミスズメの一方が、朝見たらひっくり返って下に落ちていた。瀕死の状態だ。2週間飲まず食わずでついに寿命を迎えたようだ。
腹部が凹んでいるので、産卵を終えたメスだろうか。片方の個体より一回り体が小さい。
で、口はどーなっているんだい、と思って拾い上げて見てみると…
ストローあるじゃないかィ❗️
くるりと巻いたストローが顎のモシャモシャの中から出ている。まだ息絶えてはおらず、時々触覚や腹部がピクリと動く。
ポカリあげたら回復したりするだろうか…。
ポカリをたっぷり吸わせたスポンジの上に置いて、くるくる巻いた口吻の真ん中の穴に爪楊枝の先端を入れてグイーと引っ張り口吻を伸ばさせると、なんとも可愛らしい超短いストローが伸びて、スポンジに刺さった。飲んでる?
その長さわずか5-6mm程度。
これでは、筒状花の蜜には届かないはず。
自然界では、ハルジオンとかタンポポとか頭状花序のお花の蜜なら吸えそうだが、どうなんだろう。
日本のスズメガの中で一番口吻の長いエビガラスズメは、ストローの長さが11cmにもなる。
↓過去ブログ
それに対してサザナミスズメさんのストローの可愛いこと可愛いこと。
口吻が退化していて、成虫になると摂食しないものの中で有名なのはカイコだ。
昨年の秋に白川郷の田島家養蚕展示館の見学に行った際に館長さんがご好意でウチの娘に下さったカイコの成虫の口は、口吻が二股に別れたままでストロー状になっていないようだったが、サザナミスズメはちゃんと左右の管が正中で合わさったストローの形になっており、機能的には問題無さそうに見える。
↑カイコの口吻は左右に分かれたままに見える。グレムリンみたいだね
↑サザナミスズメの口吻をNikonの実体顕微鏡ファーブル(20倍)で観察。ちゃんとストローになっているようだ。
こちらの学術的な文献には、「サザナミスズメは口吻が退化傾向で,吸蜜を行わない.」と記載されていた。
兵庫県のスズメガ:池田 大,阪上洸多,きべりはむし,43 (2),p26-45
形態学的には異常が無くとも、生態学的にはもはや自然界においてこの超短いストローは上手く機能しないということか。
では飼育下で、サザナミスズメさんが口吻を伸ばすための何かのトリガーを作り出せれば、吸蜜して長生きする可能性もあるかしら。とうやってストロー伸ばして吸蜜するスイッチを入れたら良いんだろう。サザナミスズメさん、あなたの好きなお花の色は一体なぁに?
サザナミスズメさんが夜な夜な飼育ケースの内壁に産み付けた卵は、総数百数十個にも及んでいるが、産卵から2週間、まだ一つも孵化していない。未受精卵か。
同胞とは交尾しないのかな、と不思議に思っていたら、もう片方の生き残っている方の子(体の大きな子)が、目の前でお尻から黄色い管を出して産卵した。ギョギョーッ!オスだと思ってたら、もしかして両方メスだった?以前の記事「サザナミスズメ飼育日記②」で片方の子のお尻から出てたのは、オスの生殖器でなくメスの「誘引腺」というものかもしれない。はやとちりの大間違いだった!前回記事を、訂正しときます
生き残った片方の子(卵を目の前で産んだので確実にメス)は、ポカリをあげてみたけど飲まなかった。ベランダに出したら、暖かい春の夕暮れの空に飛んでった。オスと出逢って、我が家のオリーブに産卵に戻ってきてくれると嬉しいな。
半年間私たち親子をときめかせ続けてくれて、ありがとう。狭い飼育ケースの中で羽が擦れてしまった尊い亡骸は、サザナミスズメの口吻の形態を知るための貴重な標本として大切に保管しますね。
都市公園のゆる〜いネイチャーガイド
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