某自然観察園の園路にコガタスズメバチの巣が落ちていて、スズメバチが群がって危ないということで駆除・回収したという情報をキャッチ。

 

 

スズメバチに並々ならぬ畏敬の念を抱いている私は、かねてからスズメバチの空の巣が欲しいと思っていた。自然観察会でスズメバチを題材に取り上げることがあれば、この素晴らしき巣の構造や働きバチたちの驚くべき統制の取れた役割分担などを、実際の巣をお見せしながら解説出来ればいいなと常々思っていた。

スズメバチの巣を譲って頂けないかと聞いてみたところ快くお譲り頂けることになったので、貰い受けてきた。

 

 

ハチノックを吹き掛けまくった後だというので、生きているハチは居ないものとして巣の解体に臨む。

コガタスズメバチの巣

 

 

 

 

ほげェ!驚き巣盤の端っこの方にプリプリの生きた幼虫が❗️

コガタスズメバチの幼虫

かんわい〜〜〜い❣️

まんまるコロコロ太ってて、アザラシの赤ちゃんみたいで可愛いフォルム(アザラシ好きの人には怒られてしまいますね)。

小さな口をハムハムしているのがとてもかわいい。くわえているのは試しに与えたハニーワームの断片。ハムハムしているけど噛み切るような口の構造ではないようだ。

このプリプリムチムチの赤子のような姿を見てしまうと、殺すに忍びない。。。

 

 

幼虫はとりあえず置いといて、巣の解体を進めていく。

まず、繭を切り開いて中身を確認。中には蛹が入っていた。

女王蜂が卵を産みつけた順に蛹の成熟度が違うので、蛹の色のグラデーションが出来ている。文献によると、女王蜂は巣盤の中心から外側へと卵を産みつけていくため、中心に近いほど蛹の成熟が進んでいるという。

コガタスズメバチの蛹のグラデーション

 

繭の穴からチラリと見えるコガタスズメバチ成虫

 

この、中心部のチラ見えしている成虫がマジで怖い。死んでいるのだろうけど、生きてて繭を開いた途端に飛び出して来たらと想像すると怖ろしすぎる。。。

 

 

繭を開いていくと、まだ蛹になり切っていない幼虫なのか前蛹なのか、そんなような子も居た。

 

コガタスズメバチの前蛹?

表現するなら「幼虫の背中」と思わしきところに透けて見えるのは、蛹の目の部分(黄色矢印)。こんなとこに目が出来るんだ!?

 

 

そして幼虫と蛹を育房から一つ一つ引き抜いていく。

 

こちらは、蛹化途中で息絶えてしまったのだろうか、幼虫の皮が残っている不完全な蛹。

コガタスズメバチ蛹化途中

 

 

 

 

形こそスズメバチだが、蛹の体はとても柔らかく、押すと凹んでまるで水風船のようだ。

コガタスズメバチ蛹

 

コガタスズメバチ蛹

 

様々な成熟度の蛹から、目が段々と色付いていく過程が見て取れる。

 

 

 

巣盤は3段目が作られ始めた矢先のようだ。

3段目の巣盤の基部が2段目の巣盤の繭の一部にかかっており、これではこの直下の繭の中の子は出て来られない。

コガタスズメバチの巣盤の基部で封鎖された繭

 

コガタスズメバチの巣盤の基部で封鎖された繭

 

↑ 完全に出口を固められ、閉じ込められている。

 

コガタスズメバチの巣盤の繭を開いたら成虫が入っていた写真

このチラ見えしている怖いハチも、新しく造設されようとしていた巣盤の基部で固められ、閉じ込められて出てこられずに絶命したのだろうか。

 

 

スズメバチのような真社会性昆虫は「個」より「群れ全体」の存続を重視する生き物であり、その自己犠牲の姿に私は感銘を受けスズメバチたちをリスペクトしているわけだが、群れ全体の利益のためには群れの一員の犠牲は誰も何とも思わないのだ。。。

勝手に擬人化して感情を移入し想像するから自己犠牲の姿にジーンときちゃうわけだが、群れの繁栄のためには自己の犠牲も他者の犠牲も厭わない働きバチたちの姿は、もはや「ロボットか」とさえ思う。。。

DNAによってプログラムされたアルゴリズムに則って、YESNOで進むだけの、、、?

 

なんだか、生き物を見ているのではなくロボットを見ている気分になってしまった。

 (2024/10/5追記:このような封じ込めを受けた繭でも、巣盤と新支柱の間の隙間を破って自力でちゃんと出て来ることが分かりました)

 

 

そんなことを考えているうちに、解体終了。

コガタスズメバチの巣の解体

 

 

 

2匹の幼虫は、育房から引き抜いて手作りの透明フィルム制の育房へお引っ越し。

コガタスズメバチの幼虫

↑こうやって育房に踏ん張って納まっているのか。

 

お餅みたいなコガタスズメバチの幼虫

 

↑ ボテっとしてお餅みたい

 

コガタスズメバチの幼虫を手のひらに乗せる5歳娘

 

↑ 手のひらに蜂の子を乗せたがる5歳児

 

 

蜂の子に何を与えれば良いのか分からないので、茹でた鶏卵の黄身とハチミツを混ぜたペーストを与えてみたところ、パクパクするけど弱々しくて口の中には入っていっていない様子。

ハチミツを水で薄めたものを与えてみたけど、やっぱり嚥下してないように見える。

日に日に弱っていく蜂の子たち。殺虫剤も掛かっているのもあって弱っているのだろう。あぁ可哀想😢

 

最後のあがきとして、テントウムシ飼育のために購入してあった蜂の子粉末を水に溶いて与えてみたが、この数日で不可逆的に弱ってしまったのか、口はほとんど動かない。

コガタスズメバチの幼虫に給餌

 

 

 

ごめんね。君たちを育てるのは私には無理みたいだ。育てられたところで、スズメバチだから殺処分は免れないのだが

 

スズメバチに生まれただけでこんな憂き目に遭うなんて、神はなんて残酷で不公平なのでしょう。

生まれ変わりなんて信じていないけど、「来世があるなら幸せな生き物に生まれ変わってくれ」と願うことで、やる瀬ない気持ちを収めるのであった。。。(まだ蜂の子たち生きてるけど)

 

そして3段目の小さな巣盤の育房には…