(メモ)
東京都の公表資料から。

「検査実施件数」の方は「医療機関が保険適用で行った検査件数を含む検査実施件数は、毎週金曜日に前週木曜日から当該週水曜日までの日々の保険適用分の件数を反映して更新」とあるので「なべて見れば」陽性数との比較ができると思いますが、そちらでは、

5月3日検査数 668 陽性数 91
5月4日検査数 951 陽性数 87
5月5日検査数 532  陽性数 58
5月6日検査数 509 陽性数 38 となっていて、

陽性率はそれぞれ、13.6% 9.1% 10.9% 7.4% となり、50%越えというような数字は信頼に足りるのか疑問です。

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

 

厚労省の全国版の報道資料では次のようになっています。

   PCR検査数  陽性者数 率

5月3日 1,724 290 16.8%

5月4日 1,332 200 15.0%

5月5日 1,757 173 9.8%

5月6日 1,644 122 7.4%

5月7日 1,103 109 9.9%

 

 

オウムと私オウムと私感想
外科医である林郁夫氏が、微に入り細にわたってその生い立ちから地下鉄サリン事件を起こし、逮捕されて供述をはじめるまでを綴った本である。罪は重いが、なぜそれに手を染めてしまったのか、オウムとはなんだったのかについて多くの手がかりを与えてくれる貴重な資料だと思う。林氏はもともと「解脱願望」のある人で、外科医になったものの西洋医学の限界を感じて解脱したいと強く思って阿含宗に入ってみたりするのですな。その延長線上にオウムがあった。麻原は薬物で信者を意のままにしようとする。その単純なことが林氏には見えなくなっている。
読了日:01月10日 著者:林 郁夫
誰にもわかるハイデガー: 文学部唯野教授・最終講義誰にもわかるハイデガー: 文学部唯野教授・最終講義感想
さすがは筒井さん、看板に偽りなし。私にもわかりました。本編の講義も親しみやすい文体で書かれており、敷居が低い見事なものだが、さらに大澤真幸さんの「補遺」が秀逸である。特に「締め切り(=死)過ぎの作家」というメタファーは大変わかりやすい。確かに、締め切りが過ぎたら、必死で書きますよね(書かない人も居るかもしれないが、それは既に作家失格でしょう)生と死の問題を正面からとらえた労作であります。
読了日:01月08日 著者:筒井康隆
高田純次のテキトー格言 (中経の文庫)高田純次のテキトー格言 (中経の文庫)感想
ほぼ下ネタしか書いてない本書で、一箇所だけ高田さんがまじめに書いているのは「債務の連帯保証人になってはいけない」ということ。それだけを言いたくて書いたのではないかとすら思わされる。
読了日:01月06日 著者:高田 純次
私の暮らしかた (新潮文庫)私の暮らしかた (新潮文庫)感想
図らずも震災前後の記録になりましたね。ハイライトはやっぱり「特攻の生き残り」である父・大貫健一郎さんにまつわる話と、このお父様とご母堂が続けて亡くなるところ、そしてそれを取り巻く音楽・ご友人・猫たちの物語でしょう。葉山で暮らしておられて、ご両親が亡くなって引越し、といっても札幌とはまた思い切られたものですね。音楽論もあり、多少冗長な気もしますが読み応えのあるエッセイ集でした。一点、枝廣淳子さんの「三脱」の話。「若い人が車に興味がない」のは、むしろ買いてくてもお金がないからじゃないかと思うのだけれど。
読了日:01月04日 著者:大貫 妙子

読書メーター
関西人の取扱説明書関西人の取扱説明書感想
関西人、というより大阪人でしょうね、東側の人間にとってその取扱は大変難しいので、このような文書は大変有益だと思います。大阪人は一見気さくでおおらかでよさそうに見えますが、実は京都人(これも難しいが)とはまた違ったプライドを持っているので、その取扱には注意を要します。とにかく、自分たちが田舎モノであることを全く自覚していませんから(ry
読了日:01月20日 著者:千秋 育子
自衛隊と憲法──これからの改憲論議のために (犀の教室)自衛隊と憲法──これからの改憲論議のために (犀の教室)感想
2015年安保法制の問題点をはじめとして、憲法と安全保障、さらに2012年自民党改憲草案の問題点、特に緊急事態条項の異常さ、2017年に野党が憲法第53条に基づいて国会の開会を要求したのにもかかわらず与党は同条に期限の定めがないことを奇禍としてぐずぐずと引き伸ばした挙句、開会すると同時に解散した例の事件に至るまで、憲法および諸外国の憲法とその運用も比較しながら、憲法とその運用をどのように考えるべきかを論じた、冷静かつ学究的でありながら、実際的な観点も広く斟酌した良書である。
読了日:01月17日 著者:木村草太
分断社会・日本――なぜ私たちは引き裂かれるのか (岩波ブックレット)分断社会・日本――なぜ私たちは引き裂かれるのか (岩波ブックレット)感想
いま、そこにある問題を扱った論文集で一読に値するものだと思う。問題点の整理はいいが、ではどうするのかというのは、読者にゆだねられている。「…弱者と弱者の間にくさびを打ち込み、そのことで既得権益を正当化するようなかたちでの再定義は、絶対に阻止しなければならない」と言うが、既得権益受益者は営々と「くさびを打ち込み」つづけてきているわけで、大きく与件が変らなければ既得権益はなくならない。趣旨には賛同するものの、次の一手への方向性を示さなければ学問の価値はない。
読了日:01月16日 著者:
そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学感想
わかりにくい本。政治経済学というものが何を指すのか明確でないが、少なくとも鼎談という形は向いていなかった。反緊縮を掲げているが、リフレ派というのが流行らなくなったので看板を架け替えたのか、あるいはリフレ派を押しのけて出てきたのか。いずれにせよ、5年間の金融緩和で株価も上がり、いざなぎ景気越えをしたのだから、経済にこれ以上なにを求めようというのかわからない。
読了日:01月16日 著者:ブレイディ みかこ,松尾 匡,北田 暁大
愛についての個人的意見 (PHP文庫)愛についての個人的意見 (PHP文庫)
読了日:01月13日 著者:柴門 ふみ
望星 2018年 02 月号 [雑誌]望星 2018年 02 月号 [雑誌]
読了日:01月13日 著者:
先祖からのメッセージ 名字と日本人 (文春新書)先祖からのメッセージ 名字と日本人 (文春新書)
読了日:01月13日 著者:武光 誠
新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)新日本探偵社報告書控 (集英社文庫)
読了日:01月13日 著者:筒井 康隆
夏を拾いに (双葉文庫)夏を拾いに (双葉文庫)
読了日:01月13日 著者:森 浩美
岬 (文春文庫 な 4-1)岬 (文春文庫 な 4-1)
読了日:01月13日 著者:中上 健次
土と兵隊・麦と兵隊 (1953年) (新潮文庫〈第473〉)土と兵隊・麦と兵隊 (1953年) (新潮文庫〈第473〉)感想
石川達三「生きてゐる兵隊」に比べれば戦争(徐州会戦)の描写はマイルドである。著者はここで見てきたことで書きたいことを相当抑えていると見なければなるまい。それでもなお捕虜の不法な殺害は描かれている。日本軍も「点と線」の行く末が見えなかったわけではあるまい。しかし司令部の意向を無視して戦線を拡大、後追いでそれを認めさせるという形で日本は泥沼にはまっていく。どれだけ中国人に害を及ぼしたのか。日本軍と中国国民軍の戦闘を災害と受け止め、両方にいい顔をしてなんとかやり過ごそうとする中国の民衆がよく描かれている。
読了日:01月13日 著者:火野 葦平
越境する在日コリアン―日韓の狭間で生きる人々越境する在日コリアン―日韓の狭間で生きる人々感想
新井将敬氏の自死の事情を知りたかったのだが、あまり具体的な言及はなかった。外国人参政権の話も、過去の経緯はもちろんあるが、「帰化すればいい」論に対する反論としてはやや弱いのではないか。靖国とA級戦犯問題に関しては著者に全く同感である。野中さんの話も興味深いが、あまり踏み込んで語っているようには思えない。無理もないとは思うが。
読了日:01月11日 著者:朴 一
少年少女世界の名作文学〈2(古典編 2)〉 (昭和42年)少年少女世界の名作文学〈2(古典編 2)〉 (昭和42年)感想
実はこのシリーズは全巻とってあるのだ。アーサー王伝説ってのもなぁ。結局不倫話なんだよなー。
読了日:02月25日 著者:川端 康成
つなわたりつなわたり感想
各シーンで時代が変るのでストーリーを追うのに苦労する。私の理解力が弱まっているのかもしれない。ヒロインはいつ登場したんだ?まとまりがない。半分私小説の純文学とはこういうものかもしれない。1970年に業界人同士は「おたく」と呼び合っている。私も70年代は中学~高校だが「おたく」を使っていたので第一世代だと思っていたが、もうひとつ上があったのね。友人との距離の置き方として当時としては新しかったのかもしれない。一応、これはハッピーエンドなんだろうなぁ。よかったよかった。
読了日:02月19日 著者:小林 信彦
極東セレナーデ (小林信彦コレクション)極東セレナーデ (小林信彦コレクション)感想
1987年の小説だが、3.11の被害が未だに続く現在読めてよかったと思う。チェルノブイリ原発事故(1986)の衝撃は大きかったとはいえ、あの時代には「日本の原発はチェルノブイリとは違う」という論調が多かったと思う。それを考えると小林信彦さんの「ぶれない姿勢」はすごい。最後に伏線がきれいに回収されてストンと落ちるあたりはお見事。
読了日:02月13日 著者:小林 信彦
人生がときめく片づけの魔法人生がときめく片づけの魔法感想
内容には概ね同意。それより、この本の画期的なことは「物事を真剣に考えるとはどういうことか」を実例をあげて明確に説明したところだと思う。かつてマイルス・デイビスが「たいていのことは10分真剣に考えれば方がつく」といったとかいわなかったとか。問題の性質によるのはもちろんだが、「たいていのこと」についてはまったくその通りだと思う。こんまりさんも「片付け」という問題について「透徹した理解」=「ある種の悟り」に達されたのです。
読了日:02月09日 著者:近藤麻理恵
沈黙の画布 (新潮文庫)沈黙の画布 (新潮文庫)感想
途中でかな~り面倒くさくなったけど、結局最後まで読みました。話の展開は、そういう書き方だからということもあるけど、大体読めるし、それほど驚きはない。美術は音楽と違って「本物」「偽者」というのがあるからややこしいんですね。しかも、写真がとってあっても燃えたら終わり。音楽なら複製は簡単だし、楽譜は書き写せばいいし、取り巻く状況がずいぶん違うというのが面白うございました。教訓としては「私の夢はあなた」(さだまさし)みたいなことはいい加減にしといた方がいいということですね(笑)
読了日:02月06日 著者:篠田 節子
国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)感想
読み方が浅いかもしれないが「学者先生」の書いたものという印象。結論がしょぼすぎませんか。要するに「アメリカだけでなく中国とも上手くやっていきましょうね」ということですよね。(違うのか)
読了日:02月05日 著者:細谷 雄一
音楽言語の技法音楽言語の技法感想
松平頼則「新訂 近代和声学」で扱われていたので概要は知っていたのだが、数え上げがちゃんと出来ているのか確信がなかったが、まじめに数え上げたら、さすがメシアン、大事なところはきっちり押さえていることが判明。メシアンはリズムの扱いも含めて、これらの自作の原理を太っ腹にも公開してしまったおかげで、メシアン風の音楽を書くのは誰にも容易になってしまったが、逆に亜流が生まれるのを未然に防いだという見方もできるのかもしれない。
読了日:02月02日 著者:オリヴィエ・メシアン
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)感想
こんなに面白い本が、2011年に既に出ていたとは。8年間も読んでいなかったとは。でもまー、死ぬ前に読めてよかった。日本人であるということは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、儒教、ヒンズー教、仏教をならべて観察するのに有利な立場ではあるのだよな。グローバル・スタンダードとなった西洋文明とそのよって来るところであるキリスト教の「仕組み」をこれほど明快に説明してくれた本はありませんでした。
読了日:02月02日 著者:橋爪 大三郎,大澤 真幸
日本人と「日本病」について (文春学藝ライブラリー)日本人と「日本病」について (文春学藝ライブラリー)感想
いろいろなヒントをもらったお二人の対談集。話題は少々古くなったが、第二次世界大戦にかかわる話は大変興味深いし、一神教徒が神と個人の契約に依拠しているのに対し、日本人は血縁幻想の中で他の日本人に依存しあっているので、その関係が崩れると一家心中を起こすといった話も。日本的な全員団結「組織なんかあってなきもの」的体制は平時の経済的戦いには強いのではないかと言っているが、これもバブル期までの世界を背景の発言で、失われた20年についてはまた別の考察が必要であろうが、それぞれの聖書学的/精神分析的方法論はまだ使える。
読了日:01月29日 著者:山本 七平,岸田 秀
その女アレックス (文春文庫)その女アレックス (文春文庫)感想
読んじまったよ。
読了日:01月24日 著者:ピエール ルメートル
偉大なる作曲家たちのカルテ―40人の作曲家のライフスタイル・病気・死因と作品との関連偉大なる作曲家たちのカルテ―40人の作曲家のライフスタイル・病気・死因と作品との関連感想
CRO(医薬品開発受託)のシミックが創業20周年記念に出した本。以前仕事の関係でもらったがきちんと読んでいなかったので読み直した。著者はコレステロールの大先生で、音楽好きが昂じて音楽関係の交友も広いらしい。2003年に亡くなっているが「ショスタコーヴィチは一般にはほとんど知られていないだろう」と書かれている一方で参考文献には1990年のものもあり長期にわたって書かれたものらしい。内容的にはどこまで信用していいかわからないが著者の背景を知って読めば面白い。時代的なこともあるが作曲家たちは結構早死ですな。
読了日:01月21日 著者:五島 雄一郎
音楽のたのしみ(1) 音楽とは何だろう (白水uブックス 1094)音楽のたのしみ(1) 音楽とは何だろう (白水uブックス 1094)感想
ロラン=マニュエル(1891-1966)のラジオ番組の書き起こし。ペダンティックというかスノビッシュというか。お相手はピアニストのナディア・タグリーヌ(1917-2003)。1944年から1966年まで続いた長寿番組らしい。番組開始時RM53歳、ナディアは27歳だから、若いピアニストといっていいだろう。この人も番組中なかなか黙っていない。ゲストがすごいラインナップ。初回はジャック・イベール。モイーズもプーランクもデュティユーも来ている。これだけ贅沢なゲストを招いておきながら、ほとんどしゃべらせない(笑)
読了日:03月27日 著者:ロラン=マニュエル
キュンとしちゃだめですか?キュンとしちゃだめですか?
読了日:03月26日 著者:益田 ミリ
トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体感想
わかりにくい。他罰的な私としては、著者がよくわからずに書いているからだと判断してしまうのだが…米国の共和党保守派の考え方を伝えたいという熱意は伝わってくる。共和党保守派が日本で開いたレセプションで自民党の代議士が「米国に対しても政官財で連携してしっかり対応していく」という趣旨の発言をしたというくだりで、著者は政官財の癒着は米国保守派が腐敗としてもっとも嫌うところだと指摘する。占領されて70年も経つのに日本人が米国を理解していないことおびただしいということは認めざるを得ない。
読了日:03月23日 著者:渡瀬裕哉
紋切型社会 (新潮文庫)紋切型社会 (新潮文庫)感想
「紋切り型でなければ語れぬ真実もある」と喝破したのは、小林信彦さんの「唐獅子株式会社」の登場人物だったと記憶しているが、それは相当深刻で、かつレアなケースであろう。ここにあげつらわれているのは、比較的新しいがすでに鼻につくようになったクリシェである。「誤解を恐れずに言えば」「逆にこちらが励まされました」云々。ありますね、違和感。武田さんはきちんと整理できないのは承知の上でとりあえず喧嘩を売ってみる。その心意気やよし。ハナから「乙武君」だからね(笑)
読了日:03月20日 著者:武田 砂鉄
新方丈記 (福武文庫)新方丈記 (福武文庫)感想
東京空襲を直接体験して焼け出された百閒先生の赤裸々にして貴重な記録のエッセンスがまとめられている。徹底した無差別爆撃を受けるとこうなるのだということを、追体験できる貴重な文章だと思います。
読了日:03月17日 著者:内田 百けん
四重奏 カルテット四重奏 カルテット感想
小林信彦さんが乱歩のもとでヒッチコックマガジンの編集長をやっていたことは知っていたが、こんなにややこしい事情があったとは。しかも、これは作者の感受性の問題もなしとはしないが、周辺人物が編集者にしろ、翻訳者にしろ、プロ意識というものが欠如しているとしか思えない。こういう中で毎月雑誌を発行するのはつらかろう。同じ作者の大人向けの方の「オヨヨシリーズ」の背景にはこういう経験があったのだな、といまさらながらに種明かしをみる気分である。
読了日:03月16日 著者:小林信彦
パワーパワー感想
いかにも女性の書いた小説である。もし、このような社会的に根本的な変革を迫るような「異変」が起きたら、政治・経済・軍事、そして何より宗教的な大変動が起き、おそらくは大規模なテロや戦争が起きるだろうが、この小説はそういうマクロな観点での説明は最小限で、ほとんどのエピソードは狭い人間関係を扱っており、地理的にも狭い範囲の話である。男性が書けばおそらく、そういった小さなエピソードをちりばめたにせよ、それらが合流してマクロな動きにつながっていくさまをダイナミックに描くだろう…てなことを書くと炎上するだろうか。
読了日:03月14日 著者:ナオミ・オルダーマン
耳の思考―現代音楽の意味場 (1985年)耳の思考―現代音楽の意味場 (1985年)感想
1985年に近藤譲さんがこういうしっかりした本を書いてくれているのは後世からみてまことにありがたい。当時の現代音楽の状況がよくわかる。すでに「前衛の終焉」という言葉で総括されている。なにより(比較的)平易な日本語で書かれているので、アドルノを読むような困難がない。
読了日:03月14日 著者:近藤 譲
おどろきの中国 (講談社現代新書)おどろきの中国 (講談社現代新書)感想
我々が持つ中国に対する疑問に丁寧に答えながら、中国の成り立ちからその政治原理、なぜ国民党ではなく共産党が勝利したのか、日中戦争とはなんだったのか、米国と中国の関係、果ては北朝鮮問題まで広範な分野を概観する。第二次世界大戦までの日中(朝鮮含め)関係の認識はよく理解できるし首肯できるものだ。中国・朝鮮・日本の間の「認知地図」の違いという議論はよくわかる。これを理解して外交なり経済交流しないとうまく行かない。最後にある、日本がアカデミックな「中国研究所」を立ち上げるというアイデアに賛成する。
読了日:03月13日 著者:橋爪 大三郎,大澤 真幸,宮台 真司
(あまり)病気をしない暮らし(あまり)病気をしない暮らし感想
面白くてためになるという本。仲野先生の「ひとりのりつっこみ」が堪能できます。やっぱり大学でも「教授」となるとけっこう給与は高いんですね。
読了日:03月01日 著者:仲野徹
ゆかいな仏教 (サンガ新書)ゆかいな仏教 (サンガ新書)感想
使えるものはなんでも使っての仏教論で大変わかりやすいし、面白い。他の宗教との比較はもちろん、現代哲学、ドラえもん、数学(集合論)、なんでもござれ。仏教は原始仏教からめちゃめちゃかけ離れたところまでいってしまうという話で、たとえば「市場経済をやっているのに社会主義」には笑った。ここでは論じられていないが、仏教の「誰でも覚れる(可能性がある)」という発想が、遠く現代日本でサリン事件を起こしたとも言えるよね。
読了日:02月26日 著者:橋爪大三郎,大澤真幸
レモンケーキの独特なさびしさレモンケーキの独特なさびしさ感想
oversensitiveについての本と言えばあたらずといえども当からず…かな。自分もoversensitiveだろうとは思うが、長い年月をかけて折り合いをつけてきた。身につまされるので半ばまではページを追ったが、そこからは飛ばし読み(すみません)最後に作者のコメントでJeff BuckleyのHallelujahを紹介しているが、この歌詞ももうひとつよくわからないなぁ。
読了日:04月27日 著者:エイミー・ベンダー
陰謀の日本中世史 (角川新書)陰謀の日本中世史 (角川新書)
読了日:04月27日 著者:呉座 勇一
数学史 ―数学5000年の歩み―数学史 ―数学5000年の歩み―感想
最後のコラム「いくつかの定理の新しい証明」はとても興味深いのだが、少々説明が「出来る人」向けすぎて…結城浩先生ならもっとわかりやすく説明してくれるのにな(ぶつぶつ
読了日:04月19日 著者:中村 滋,室井 和男
ノーベル賞受賞者にきく子どものなぜ?なに?ノーベル賞受賞者にきく子どものなぜ?なに?感想
残念ながらノーベル賞受賞者たちは、説明があまり上手くないようだ。優れた科学者だからといって優れた教育者ではないということを証明しているような本だ。しかもホメオパシーの先生(ノーベル賞受賞者ではない)が出てきたりして怪しげでもある。ただ、エリ・ウィーゼルの言葉は印象に残る。若い人たちの夢の中に「戦場での勝利」が入っていないことを望むというのである。「本当の名誉は戦場では得ることはできません」「退役軍人の日」に「国を守って戦った兵士の名誉」に酔っている多くの人々に小一時間説教したいところである。
読了日:04月15日 著者:
“音楽”という謎“音楽”という謎感想
音楽の基本的な事柄についての哲学的論考だが現役の作曲家の著書であり、クラシック音楽に携るものにとってはわかりやすい。「多くの前衛作曲家達は、批評的思考が、作曲という行為の重要な一部分であると考えているようだ」とあってどきっとさせられるが、創作者かならずしも自作の分析なり理論を知っているわけではないという論旨でほっと胸をなでおろす(笑)。漱石も猫の中で東風に「…詩人はその他には何等の責任もないのです。註釈や訓義は学究のやる事で私共の方では頓と構いません」と言わせている。作曲家はそのスコアにのみ責任を持つ。
読了日:04月12日 著者:近藤 譲
原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―感想
もろ手をあげておっしゃるとおりとはいえないのだが、経済学の前提がそもそもおかしい話や「原子力とオカルトは共に、熱力学の第二法則を乗り越えようとする幻想という点で同じ論理構造を持っている」という指摘などは首肯せざるを得ない。「立場」という日本語についての考察は学問的正統性はともかくとして、「ゴミ当番が回ってくるから福島に帰る」という話とともに、日本人の「役割意識」を明らかにする面白い視点だと思う。確かに「東大話法」は蔓延している。
読了日:04月11日 著者:安冨 歩
エンダーズ・シャドウ〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)エンダーズ・シャドウ〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)感想
最後まで読んでいうのもなんですが、「エンダーのゲーム」だけ読めばいいな。「ゲーム」を読んだ直後に読めばもっと面白かったかもしれないけど。超天才を描くのは作者が超天才でない限り難しい。時間はかけられるだろうが、「エンダーのゲーム」は奇跡の処女作だからなぁ。
読了日:04月11日 著者:オースン・スコット カード
エンダーズ・シャドウ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)エンダーズ・シャドウ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
読了日:04月11日 著者:オースン・スコット カード
東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?感想
東大生叩きの本に対して「どうでもいいんだけどさ」というポーズをとりながら、斜め横からの反論を加えるという、くだらない本。2005年にはまだ多少なりとも「東大ブランド」が生きていたことがわかる。
読了日:04月04日 著者:新保 信長
史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)感想
看板に偽りなし。西洋哲学史がよくわかる本。飲茶氏、あなどるべからず。考えてみれば、ユダヤ教、キリスト教を背景に持つ西洋哲学史を日本人が理解することに多大な無理があるのは当然なわけだよね。著者はニーチェが「神は死んだ」と言った時に、それがいかに西欧文化にとって画期的だったかを述べ、同時に「オレたちにとってはあたりまえのことだけどね」と言ってみせる。その後現代日本における「生きるとは何か」に関わる熱い「語り」が、飲茶氏のもっとも言いたかったことではないかと思う。ここまで抽象の階段を楽々と登った本は始めて。名著
読了日:04月01日 著者:飲茶
リゲティ、ベリオ、ブーレーズ―前衛の終焉と現代音楽のゆくえリゲティ、ベリオ、ブーレーズ―前衛の終焉と現代音楽のゆくえ感想
2005年の本。三人の作曲家の作品群をマクロに分析するのに十二音の出てくるまでの小節数を数えたり、臨時記号の付け方をみたり、大変な労作である。引用された譜面も面白い。西洋音楽に革命をもたらした12音技法も平均律の上に成り立っているという皮肉。反復を避けたために聴衆が音楽をとらえる手がかりを失わせてしまったり。このような分析法を発明せざる得ないところに1970年代前後の前衛の特徴が端的にあらわれているように思う。個人的にはセリエルな手法は作曲家の手足を縛るだけだと思う。
読了日:03月29日 著者:沼野 雄司
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編感想
23章の終わりに画家の手元を離れた絵はもう画家の手の及ぶものでなく「まるでかつて自分のものであったのに、今では他の誰かのものになってしまった女性のように…」とある。イマドキ問題な記述とは思うが幸か不幸か西洋音楽作品は楽譜は印刷可能だし、演奏もかなりの精度で再現できるので、楽譜が演奏家の手に渡ったら一人歩きするのが当然だし、またのぞむところでもあるが、複製技術のそこまでは発達していない(再現芸術ではない)絵画とはずいぶん事情が違う。これは英訳が読んでみたいな。「あらない」もだが「諸君」どう訳すか。
読了日:06月11日 著者:村上 春樹
村上春樹 イエローページ〈1〉 (幻冬舎文庫)村上春樹 イエローページ〈1〉 (幻冬舎文庫)感想
作曲家が同業者のスコアを読むときは分析的に読むこともあるし、鉄道ファンは時刻表をすみずみまで読むのだろうが、一読者としてはここでとりあげられている本はどれも楽しく読んだけれど、こういう読み方はしないし、しなくてもいいよねぇ?
読了日:06月06日 著者:加藤 典洋
あなたに伝えたい政治の話 (文春新書)あなたに伝えたい政治の話 (文春新書)感想
この本に関する限りプラグマティックなものの見方は首肯できる。気になる点は、日本の軍拡、非核三原則の見直しに関わる提言だが、軍拡は米国主導の下「多額のお買い物」で現実にはすすんで行っているし、非核三原則を公的に廃しても、日本のどこに米国の核があるかなど、米国が明らかにするわけもなく、何か意味があるのだろうか。いずれにせよ、米国が内向きになり、中国は大国となることを欲し、北朝鮮が核軍拡を続ける現況にあって、プラグマティズム(あるいはマキャベリズム)がより必要とされる中、著者の言に耳を傾けるに吝かではない。
読了日:06月04日 著者:三浦 瑠麗
平成経済 衰退の本質 (岩波新書)平成経済 衰退の本質 (岩波新書)感想
著者本人が大怪我してICUにいる間にも著書はよく売れて稼いでいるらしく、ご同慶の至り。平成というか、Japan as No.1の時代からいかにこの国が転落してきたかを概括的に説明する書としていいと思う。対案?失敗の逆をやればいいのである。この本にもあるようにアベノミクス3本の矢の経過をみれば、何が起きたかは大筋でつかめる。アメリカが許してくれる限りで円安誘導、金融緩和で市場を買い支える。株価がなんとか持ちこたえる。それはいいが、一方で財政出動は旧態依然の既得権者優遇、構造改革にいたっては何も出来ていない。
読了日:06月04日 著者:金子 勝
知ってるつもり――無知の科学知ってるつもり――無知の科学感想
あとがきにもあるようにあたりまえのことを指摘しただけ、という本ではあるのだが、重要な論点を網羅している。特にp.192 「誰も自らの無知を理解できない、しかしコミュニティがメンバーに正しいという感覚を与えつづけるという情況が行き着くところまで行ってしまうと、きわめて危険な社会的メカニズムが動き出すリスクがある」というのは極めて重要な指摘。ここ10年ほどの日本社会は、こういう方向に向かっているように思える。少しは自分のアタマで突き詰めて考えるという習慣を持った方がいい。
読了日:05月30日 著者:スティーブン スローマン,フィリップ ファーンバック
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)感想
評判どおりすごい小説だと思う。前半はクリスティ・タッチの1955年のイギリスの地方を舞台にしたミステリーだが、そのやや冗長な感じまで含めて見事なオマージュになっている。そして後半の展開には驚かされる。動機の構成は、少々難があると思うが、あとからリカバリーもしてあり、まずまず破綻なしとしてよいと思う。ミステリーの遊び心というものを堪能できる、特にホームズやポアロの黄金時代のミステリーに思い入れのあるむきにおすすめしたい。
読了日:05月24日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ
カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)
読了日:05月24日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ
音楽のたのしみ III 音楽のあゆみ ベートーヴェン以降 (白水uブックス)音楽のたのしみ III 音楽のあゆみ ベートーヴェン以降 (白水uブックス)感想
私の持っているのは1979年の5刷で「ベートーヴェンから今日まで」という副題が付されている。フランスの作曲家に重点が置かれている。R=Mは12音技法について何も決定的なことを言っていないが、ナディアにベルクのヴァイオリンコンチェルトを賛美させ、自らもヴォツェックを評価するといった具合で、12音はドイツ・ロマン主義の論理的帰結であり、そこですべてはいったん終了し、ドビュッシーはじめ長調・短調ではない新しい「調性」がこれに取って代わると見ているといっていいだろう。要は12音は一過性の流行という立場と思われる。
読了日:05月12日 著者:ロラン マニュエル
雪の階 (単行本)雪の階 (単行本)感想
「鳥類学者のファンタジア」「ビビビビバップ」に続くシリーズということなのだろうが、少々毛色が変わっている。1935年から翌年へという戦前日本の命運を決する時期を舞台にして、親英米派と親独派の対立、軍部特に陸軍の動きあたりを描いて著者の歴史観も大変面白い(終盤は圧巻)と思うのだが、いかにもテンポが悪い。もちろんディテールが面白いのが奥泉さんで、戦前の描写はそれなりに面白いのだが、推理モノ仕立てにしては冗長すぎる。中心になっている事件にしてからがスケールが小さすぎるし大上段に振りかぶったのはいいが肩透かし。
読了日:05月11日 著者:奥泉 光
お話はよく伺っておりますお話はよく伺っております感想
わたしもUSBメモリーの容量くらいの話ならわかります。通信関係は全滅です。
読了日:05月04日 著者:能町みね子
音楽からみた日本人 (NHKライブラリー)音楽からみた日本人 (NHKライブラリー)感想
1997年の本だが20年経ってそれほど状況が変わっているとも思えない。おっしゃるとおり、日本は明治期に西洋音楽を取り入れて音楽の「欧化」を図ってきた。戦後はアメリカ文化も流れ込んで、いまや何でもありで、それはそれで結構だと思うが、小島先生のおっしゃるとおり、われわれのルーツは「はないちもんめ」。日本語が話されている限り、音感はなんらかの形で継続していくようにも思うがどうだろうか。
読了日:04月30日 著者:小島 美子

哲学的な何か、あと数学とか哲学的な何か、あと数学とか感想
ずぶのシロウトには、いやずぶのシロウト向けでもフェルマーの最終定理についてはサイモン・シンの本をおすすめしますねー。
読了日:08月20日 著者:飲茶
名曲の暗号: 楽譜の裏に隠された真実を暴く名曲の暗号: 楽譜の裏に隠された真実を暴く感想
かなりマニアックな領域に踏み込んでいる本で、クラシック上級者向けといえるでしょう。こういう話は面白いのですが、知らなくてもクラシックの名曲は楽しめると思います。あえて言えば、音楽の本質とはあまりかかわりあいのない話。面白いですが(笑)
読了日:08月15日 著者:佐伯 茂樹
小暮写眞館II: 世界の縁側 (新潮文庫nex)小暮写眞館II: 世界の縁側 (新潮文庫nex)感想
「世の中には不思議なこともある」という世界観で、それはSFでもそうだから別にいい。Iを読んだところでなにかすっきりしなかったが、IIでそういう前提なのねということがよくわかった。要は人間が描けているかという点からいえば、さすがは宮部みゆきさんだといわざるを得ない。Iより二重底構造のIIの方が面白い。Iの方は設定の描写で手間がかかったのでしょうがないのだが。
読了日:08月07日 著者:宮部 みゆき
ノワール-硝子の太陽 (中公文庫)ノワール-硝子の太陽 (中公文庫)感想
ノワールとルージュで対をなす小説。それぞれ中公文庫、光文社から出ている。両社の顔を立てたのかな?二つのシリーズが交錯するので、これは手間がかかっただろうなぁ。解説にあるようにノワールの方は、誉田さんの「必殺仕掛け人」である「歌舞伎町セブン」シリーズなので、最後の「仕掛け人の仕事」に入ってからは型どおりであり、それを可能にするために「それはないだろう」という犯罪が出てくるが(実際かなり脱力する)これはしかたのないところなので目をつむることにします。ルージュともども面白かったです。勝俣ってのは悪いやつだなぁ。
読了日:08月05日 著者:誉田 哲也
線の音楽線の音楽感想
元の記事がエピステーメーに不定期連載されたのが1977年からだそうで、1979年に単行本として出た。この難しい(私には)本が2014年に復刊されるというのはすごいですね。またもや哲学の時代がやってきたのだろうか。
読了日:07月16日 著者:近藤譲
硝子の太陽R-ルージュ硝子の太陽R-ルージュ感想
姫川玲子シリーズのファンだが、これはまたかなり政治がらみに踏み込みましたね。幕切れも見事でした。
読了日:07月11日 著者:誉田哲也
内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ (角川oneテーマ21)内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ (角川oneテーマ21)感想
言い方が悪いかもしれないが「面白かった」。特に極右の鈴木邦男氏とか、今はなき「みんなの党」の江田憲司氏とか、そういう見方もできるか、と思わされるところもある。
読了日:07月01日 著者:保阪 正康,東郷 和彦,富坂 聰,江田 憲司,金平 茂紀,松元 剛,鈴木 邦男,宇野 常寛
西洋音楽史 印象派以後西洋音楽史 印象派以後感想
大変な労作だと思うが、特に第二部の無数の作曲家の作品を昭和42年にどうやって聞いたのだろうというのがさしあたっての疑問である。
読了日:06月26日 著者:柴田 南雄
キーワード150 音楽通論キーワード150 音楽通論感想
アカデミックに、音楽に関する総論を学んでいないので、この本はありがたかった。ポピュラー音楽から所謂「現代音楽」や民族音楽までを網羅しており、「音楽」全体を概観するには格好の著である。初版で読んだので譜例に何箇所か大きな間違いを見つけたが、新版では修正されているであろう。西欧の音楽は西欧では「民族音楽」とよばれず、同様に日本でも自国の民族音楽を「民族音楽」と呼ばないが、中国・韓国ではむしろ誇りをもって「民族音楽」と呼ぶという指摘が面白い。
読了日:06月21日 著者:久保田 慶一,上野 大輔,川本 聡胤,木下 大輔,本多 佐保美,白石 美雪,神部 智
音楽の現代史 (岩波新書 黄版 358)音楽の現代史 (岩波新書 黄版 358)感想
1986年の出版だが、今読んでも十分面白い。20世紀初頭の音楽を当時の政治状況を絡めて叙述するという、ロスの「20世紀を語る音楽」の序章といってもいい。つくづく、音楽は時代を離れては存在し得ないと思わされる。
読了日:06月15日 著者:諸井 誠
バーのマスターは、「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由バーのマスターは、「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由感想
酒はほとんど呑まないのでBarにも縁はないのだが、芸談を聞くように、水商売の人の話は面白いので好きだ。林さんの話も大変面白い。しかし、もちろん(?)bar bossaに行ったりはしませんけど。だって、私めっちゃ悪い客だから(笑)
読了日:06月14日 著者:林伸次
絹の家  シャーロック・ホームズ絹の家 シャーロック・ホームズ感想
「かささぎ殺人事件」が傑作だったので、これも読んでみようと思った。もちろん悪くない。よく書けている。他のホームズ物の特徴をよくとらえて、かつ他の作品に触れたり、矛盾しないようにして、大掛かりな仕掛けもある。でもやっぱりオリジナルにはかなわない。あたりまえかー。しかし、ワトソンが遥か後日に書いているという設定だけでも、シャーロック・ホームズのファンにはたまらないものがありますね。こういうの近頃の言葉で「ムネアツ」っていうんでしょうか(笑)
読了日:06月13日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

ふしぎなイギリス (講談社現代新書)ふしぎなイギリス (講談社現代新書)感想
面白いのだが、少々抽象度が低すぎて読むのに骨が折れる。トシとともにこちらにこらえ性がなくなっているのだろう。それでも女王と王室がらみの部分は面白く読んだ。英国もずいぶん変わったのだということがよくわかる。もう米国との間のアングロサクソン連合も終わってしまったし、階級社会といっても中間層が多くなって、結果として二大政党の交替制でもなくなったし、いままでのイギリスについて常識と思われていたことが大きく変わっているのですな。それでもなお変わらない部分というのはなんだろうか。
読了日:10月18日 著者:笠原 敏彦
瑠璃色の石 (新潮文庫)瑠璃色の石 (新潮文庫)感想
戦後すぐの風俗が描かれているのが興味深い。
読了日:10月14日 著者:津村 節子
人工知能が音楽を創る人工知能が音楽を創る感想
EMIの作曲したコラールとフーガの譜面があったので見てみた。一聴AIがこれを創るのはすごいと思ったが少々気をつけてみるとかなり(音楽としては)残念なものだとわかった。ということで真ん中あたりで興味を失いました。すみません。コラールとフーガの要らぬおせっかいの添削はこちら。http://jun-yamamoto.hatenablog.com/entry/2019/10/09/165258 http://jun-yamamoto.hatenablog.com/entry/2019/10/12/121849
読了日:10月12日 著者:デイヴィッド・コープ
機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで (ちくま学芸文庫)機関銃下の首相官邸 二・二六事件から終戦まで (ちくま学芸文庫)感想
二・二六事件とポツダム宣言受諾時を中心に、前者にあっては首相秘書官、後者にあっては内閣書記官長という重職にあった迫水氏の詳細な記録である。後から振り返っての記述であるから脚色もあるであろうが、理路整然と大変面白い読み物になっている。終戦(ポツダム宣言受諾)の詔書に「義命の存する所」という原文を「時運のおもむく所」と直してしまったは痛恨の極みだと安岡正篤に指摘されるところがあるが、非常に象徴的な話だと思う。すべて「時運のおもむく所」では無責任以外の何物でもないではないか。
読了日:10月12日 著者:迫水 久常
平成音楽史平成音楽史感想
なぜ朝比奈ブルックナーなのか、ブルオタはどこから来たのか、室内管弦楽団流行りの由来、古楽ブームの寄ってきたる所以などなど、いろいろ不思議に思っていたことの謎が解けた。ぼーっと生きてきた音楽好きにはありがたいご本です。
読了日:10月08日 著者:片山杜秀,山崎浩太郎,田中美登里
マチネの終わりにマチネの終わりに感想
大変な力作ですね。「新しい運命劇」であるメロドラマにありとあらゆる深刻なテーマをぶち込んだ労作だと思います。ちょっとやそっとでは消化しきれない情報量。主人公はじめ超インテリしか出てこない超絶スノビッシュ小説でもあります。この手のものには結構耐性がある不肖わたくしもやや辟易するくらいですが、我慢して読むと十分報われると思います。全体を貫くテーマは(オカルト的な意味では全くなく)「過去は変えられる」。この主張には全面的に賛成するものであります。だから「死んで花実が咲くものか」というのですよね。違うか。
読了日:10月04日 著者:平野 啓一郎
十六の墓標 上―炎と死の青春十六の墓標 上―炎と死の青春感想
赤軍派についてはおぼろげな記憶しかない。本書を読んでいると著者があくまでも革命戦士としての信念を捨てずにいることがわかり慄然とせざるを得ない。オウム真理教事件と極めてパラレルなものを感じる。「組織的な整然とした狂気」とでもいえばいいだろうか。浅間山荘事件は運命の年1972年。もはや戦後ではないと言われたはるかあとの事件であり、23年後の地下鉄サリン事件と不気味なほどの類似性を感じる。著者は何度も強姦されて性の道具に貶められているのに何とかそれを正当化する理屈を自分で考えて革命幻想にしがみつく。
読了日:10月02日 著者:永田 洋子
連合赤軍 少年A連合赤軍 少年A感想
1973年、私はまだ高校生だったが、浅間山荘事件はテレビで見ていたから記憶している。加藤さんの弁明は、米帝がけしからんので手近なところから武力闘争する、というところまでは理解できるにしても、その後逃走といって1.なぜ山に逃げるのか、2.次々「総括」と称して仲間を殺していくのか、については明確な説明になっていないように思う。当時少年だった加藤さんにそれは酷なのかもしれないが、いくら何でも兄が殺された時点でなぜ逃げなかったのか、これだけでは我々には理解できない。一種の集団催眠などということで済まされないだろう
読了日:09月15日 著者:加藤 倫教
戦後70年 にっぽんの記憶戦後70年 にっぽんの記憶感想
戦後70年の節目で有名無名の経験者の話を細部に目を向けて記録しておく。趣旨はよくわかるし、実際貴重な記録となっている部分もある。ただ、あくまで読売新聞史観に立っているということが限界を作ってしまっている。冒頭の橋本五郎氏の文章では「反安保法案派」の主張に反論しているのだが、いずれも本質を突いていない。安保法案の必要性を正面から語るならまだしも反対派を詭弁を弄して貶めようというのは読んでいてあまり気持ちのいいものではない。そのため全体のトーンがおかしくなってしまっている。読み手が主体的に読む必要がある。
読了日:09月09日 著者:
マジョガリガリマジョガリガリ感想
示唆に富む指摘を多く含む良著だと思います。
読了日:09月04日 著者:森 達也
結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ感想
佳著。そうか、大竹さんは東大附属か。
読了日:09月02日 著者:大竹 まこと
歌舞伎町セブン (中公文庫)歌舞伎町セブン (中公文庫)
読了日:08月29日 著者:誉田 哲也
放送禁止歌 (知恵の森文庫)放送禁止歌 (知恵の森文庫)感想
16年前の本。前半は放送局が保身と忖度で勝手に放送自粛したのが「放送禁止歌」の実態だという話、後半が「被差別部落問題」と「竹田のこもり唄」の話。「表現には必ず副作用があるんです。どんな言葉にも様々な人のいろんな思いが集積されています。気にし始めたらきりがない。絶対に誰も傷つかない表現などあり得ない。現状のメディアは逃げているだけだと僕は思う」という石高健次さんの言葉が重い。いまや、一億総マスメディア時代ですよ。自分の頭でモノを考えましょうぞ、おのおのがた。
読了日:08月26日 著者:森 達也

日の名残り (ハヤカワepi文庫)日の名残り (ハヤカワepi文庫)感想
「夜想曲集」が思いがけなく面白かったので手を出してみた。日系のイギリス人の書いた大戦間、大戦後のイギリス人の執事の話である。イギリスは階級社会だということをことさらに強調しているし、英国社会への肯定・否定がないまぜになっているようにも思える。もっと言えば民主主義とは何か、という根源的な疑問をも投げかける。衆愚政治とののしられても、貴族政よりはいい、というのが私の立場だが、それを成功させるには国民の意識とメディアの自戒・自制が必要なのだが…。名著であること間違いないが、嫌な話でもある。
読了日:11月19日 著者:カズオ イシグロ
違和感のススメ違和感のススメ感想
キッチュのtwitterをフォローしてればだいたいわかる話なのだが…最後の志の輔さんとの対談が面白いです。
読了日:11月18日 著者:松尾 貴史
睥睨するヘーゲル睥睨するヘーゲル感想
池田さんはイライラしているのだ。「こんなに明らかなことがなぜてめぇらにはわからないんだ。何度も説明してやってるだろう」しかしわからない。「存在することそのもの」がいかに不思議か。ひとはそう考えない。私の座右の銘は「人生万事色と慾」である。哲学とは無縁の衆生である。ただ、そんな私でも彼女の言葉には動かされるのだ。たとえば「…政治的現実のみ現実と思い込んで、『べき』とか『せよ』とか『ねばならぬ』とか、誰に対してだか知らないが命令ばかりしているオピニオンなど、夢の中での寝言みたいなものだ」まったくその通りである
読了日:11月15日 著者:池田 晶子
入門!論理学 (中公新書)入門!論理学 (中公新書)感想
私の狭い読書経験から言うだけだが、もっともわかりやすい論理学の入門書である。命題論理と述語論理を扱う。最大の見せ場は著者の描いたツチノコの絵である(嘘です)
読了日:11月13日 著者:野矢 茂樹
ドキュメント 日本会議 (ちくま新書1253)ドキュメント 日本会議 (ちくま新書1253)感想
面白いですね。被爆地長崎で活動を開始した椛島有三氏を中心に日本会議の成り立ちとその後の展開を追ったドキュメンタリーでありますが、椛島氏のルーツである生長の家にとっても日本会議は異質であるとか、反創価学会で戦前戦中に弾圧された新興宗教が団結してサポート勢力になるとか、極めてダイナミックに動く。「神国日本」が戦争に負けたのだから前提が間違っていたというロジックにならず、歴史の方が間違っているのだとなる精神構造を持った人々。一度靖国参りをして中韓の批判に触れて引っ込んだ中曽根氏が「賢人」に見えてきますよ。
読了日:11月08日 著者:藤生 明
ウンコな議論 (ちくま学芸文庫)ウンコな議論 (ちくま学芸文庫)感想
まず、なによりテーマとなる「ウンコな議論」Bullshitについて定義を置いていない。これでは議論にならない。まさにこれが「ウンコな議論」だというシャレか。「おためごかし」という言葉が出てくるが、どうも原語は"humbug"らしい。ペテンごまかしの意であって、日本語の「おためごかし」(いかにも相手のためを思って言っているように見せかけた、実のところ話者の利益をはかる意図での発言)とは全然違う。「屁らず口」という表現もあるがこれも妙だ。要するにまじめに見せかけたジョーク本だったのね。
読了日:11月03日 著者:ハリー・G. フランクファート
数学書として憲法を読む: 前広島市長の憲法・天皇論数学書として憲法を読む: 前広島市長の憲法・天皇論感想
やりたいことはわかる。憲法以下の立法体系を厳密に検証しようということね。確かに憲法のいくつかの条文は変更不能だろうし、変更することは「公理系の改変」にあたるよね。ただ大きな問題は、憲法を含め法律てぇものは「数学ではない」ということですな。「永久に」と書かれていても改正の手続きをとれば「当面は」に変えられちゃう。公理系をどんどん書き換えちゃう数学みたいなもので、メタな立場をどんどん作っていけばなんとでもなってしまう。問題のとらえ方として面白がる人(私とか)はいるにしても、政治の世界ではあまり意味はない。
読了日:11月02日 著者:秋葉 忠利
平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム (幻冬舎新書)平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム (幻冬舎新書)感想
「平成」という区切りは恣意的ではあるが、少なくとも終わりに関しては上皇の意思が強く働いているし、直近の歴史を俯瞰するには都合がいい。ここ30年来感じている「世の終わり感」のよってきたる所以をうまく言語化してもらった、という気がする。佳書である。サブタイトルが天皇・災害・ナショナリズムといいえて妙である。ソ連崩壊で始まり、9.11があり米国が暴発して戦争だらけになり、東日本大震災があって原子力神話が公に崩れさり、地球環境の変化が顕著になってもともと災害国家の日本の災害がさらに常態化している。平でも成でもない
読了日:10月28日 著者:片山 杜秀
脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)感想
両眼視野闘争。意味は分かるが、自分でもいつどちらに切り替わったかなんて明確にはわからないと思うのだが、それをサルにやらせる。レバーで回答させる。科学的に入念な準備の上でやって有意な結果が出ているのではあろうけれど、これを読んだところで「無理」となって頭が拒否。そこからさきはわからない。最後にはシリコンとタンパク質を電気的に結んで交信云々の話になるんだけど、量子コンピューターよりぶっ飛んだ話で全くついていけませんでした。はい。
読了日:10月25日 著者:渡辺 正峰
夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)感想
ノーベル賞作家だから難しいかと思ったが、むしろその辺にありそうな「昨日今日の男と女の話(音楽がからむ)」でとても面白かった。フィクションで次の展開が知りたくてページをめくったのは本当に久しぶりのような気がする。ほとんどドタバタに近いものもあり、一歩間違えれば筒井康隆の世界である。落ちはない。結局どうなったのかわからず、読者は宙に取り残されるが、その方が余韻があるというものかもしれない。ジャズは原曲を無視してアドリブを乱暴に載せていく無神経な音楽という指摘は、おっしゃる通りかも。
読了日:10月21日 著者:カズオ イシグロ
俺たちはどう生きるか (集英社新書)俺たちはどう生きるか (集英社新書)感想
自ら「駄文」だとおっしゃる。「若い人に贈る言葉が見当たらない」とおっしゃる。ラジオのメジャーな番組を3000回以上看板で支えた人というだけですごいがその謙虚な姿勢、「猪口才でないところ」がありがたい。(昔はいろいろあったと思うけど)私なぞが見ることも叶わぬ世界を垣間見せていただいて、ありがとうございます。この本ではないが、最初に書いた本を小林信彦さんに贈ったという。その人選がもうね、シブい。東京人の鑑。それを数行でも活字に取り上げた小林さんもエラい。今すぐわかれとは言わないが若い人に読んでもらいたい。
読了日:10月20日 著者:大竹 まこと