増税の前提条件としての「経済状況の好転」(←マジックワード) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

増税の前提条件としての「経済状況の好転」(←マジックワード)

秘書です。

景気が持ち直しの動きが続いているということは、「経済状況が好転」しているということであり、増税の環境は整ってますよ、ってことですか?


景気「持ち直しの動き続く」 日銀支店長会議で
2011.10.20 10:35 産経新聞
 日銀は20日、東京都内の本店で支店長会議を開いた。白川方明総裁は、経済の現状について「わが国の経済は持ち直しの動きが続いている」と述べ、東日本大震災以降の供給制約が解消し、生産や輸出、設備投資の緩やかな回復が続き、個人消費も底堅く推移しているとの見方を示した。
 先行きについては「海外経済は当面減速するものの、基調的には新興国を中心に底堅く推移する」と述べた。欧州債務危機の連鎖などを背景に、先進国経済には減速懸念を示しながら、新興国向けの輸出増加が下支えとなり、一方で震災からの復興需要も顕在化し、内需を牽引(けんいん)するとの考えを提示。物価については、当面ゼロ%近傍で推移するとの見方を示した。
 同会議では、国内を9地域に分けて景気動向を判断する地域経済報告(さくらリポート)をまとめ、午後に公表する。

→でも、たとえ今後、増税に失敗して日本経済がおかしくなっても、それは政府・日銀の責任ではありません、欧州の責任です、国民はいまからそのことはよく理解しておくように、ってことでしょうか?だめだ、だめだ!そんな言い訳はダメですよ。目の前で起きていることじゃないですか。浜口内閣が金解禁したときに世界大恐慌がはじまっていた。それでも金解禁を断行するのに匹敵することじゃないですか。今後、未曾有の政策失敗の責任を欧州におしつけるようなことは、今回は絶対に許されません。夢を断たれ、平穏な生活を失った人の人生に対する責任を、欧州におしつけることは絶対に許されません。そのことだけは覚悟しておいていただきましょう。

日銀地域経済報告:複数の地域で「海外経済の減速の影響」(1)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920013&sid=aheb2n7FX3jE
10月20日(ブルームバーグ):日本銀行が20日午後発表した「地域経済報告」(さくらリポート)によると、9地域中5地域が判断を上方修正したものの、複数の地域から「海外経済の減速などの影響が生産活動の一部にみられ始めている」との報告があった。

  5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄)から供給制約の解消などから持ち直し方向の報告があった一方、4地域(北陸、近畿、中国、四国)から前回からの持ち直しの基調に大きな変化はないとの報告があった。

  一方、海外経済の影響については、近畿が「このところ海外経済の減速などの影響が一部にみられ始めている」、九州・沖縄が「海外経済の減速や為替円高を背景に、一部に操業度を引き下げる動きがみられる」と報告した。このほか、会見した調査統計局の市川能英参事役によると、「支店長会議では、中国地方から、先行きの下振れ懸念がじわじわ広がっているとの報告があったほか、東海地域からも、先行き不透明感が強まっているとの報告があった」としている。

  7月の前回報告では、全9地域中7地域が情勢判断を上方修正し、「供給面の制約の和らぎ、家計や企業のマインドの改善等を背景に持ち直しの動きが出ている」と報告した。白川方明総裁は20日午前、定例支店長会議であいさつし、「海外情勢をめぐる不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動がわが国経済に与える影響については、引き続き丹念に点検していく必要がある」と語った。

東北は「全体として回復」

  震災で甚大な被害を受けた東北からは「被災地以外の地域では震災前を上回る水準にまで復してきているほか、被災地の一部でも経済活動再開の動きがみられるなど、全体として回復している」、関東甲信越からも「着実に持ち直してきている」と、震災以降の経済活動の着実な立ち上がりを示す報告があった。

  また、複数の地域から、「地域・業種・規模間で、持ち直しの動きにばらつきがみられている」との報告があった。

→ここで問題になるのが、経済が低迷していても増税ができる根拠になっている「経済状況の好転」という所得税法104条附則の文言ですね。


経済低迷下の消費増税…試される国会議員の力
2011.10.20zakzak
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20111020/plt1110200804000-n1.htm

安住淳財務相は15日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、消費税率を5%引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出すると説明した。

 欧州の財政問題に関して安住財務相は「国債が信頼を保てなければ、世界経済にとてつもない悪影響を及ぼすことを(各国が)自覚せざるを得なかった」として、日本も「国債の消化は順調だが、累積債務や1年間の国債の消化量を考えると、これ以上財政の悪化を招いた場合、国の信用を失いかねないと認識した」という。

 安住財務相が言うほどに、日本財政は悪くないことを前回の本コラムで書いた。

 また、前原誠司政調会長も今年中に上げ幅と時期を明記すると発言した。前原政調会長は自民党の麻生政権が2009年の通常国会に提出し、成立させた改正所得税法の附則に「今年度中に成立を期すと付則に書いてある」と指摘している。

 これは法律論であるので、その附則104条をみてみよう。そこでは、「政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」と書かれている。

 この条文で、「法制上の措置を講ずるものとする」とあって、「~しなければならない」とは書かれていない。こういう場合、行為の義務付けではなく、原則的な方針であって、行わないという裁量がある。

 しかも、もし行う場合であっても、その前提として「平成二十年度を含む三年以内の(中略)経済状況の好転」となっている。

 2008~10年度で「経済状況が好転」したかといえば、誰の目にも答えはノーである。リーマンショックと今回の大震災の2度のショックで経済はよくない。今なおGDPギャップが20兆円もあるデフレで、「経済状況が好転」になっていない。むしろ、条文を素直に読めば、前提条件が崩れているので、今は「必要な法制上の措置」を講じてはいけない場合だ。

 こうした法律議論は是非国会でやってもらいたい。財務省は消費税増税が悲願であるので、今年中に消費税増税法案を決めて、来年の通常国会に出したいだろう。民主党として法案を国会に提出するか、国会で野党が法案を通すか、国会議員一人一人の力が試される。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

→「経済状況の好転」というワードは、戦時体制でも平和だといえるかのごとき、マジックワード。これまでもこのブログで何度もとりあげてきましたが、いよいよ、経済状況好転下の増税か?


2011-02-10 18:10:15
経済状況好転してます?:税制改正法付則104条の前提条件は崩れてませんか?
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10796477285.html

2011-02-16 11:49:38
経済状況好転?:トリッキーな解釈で「デフレ下の増税」をするのでしょう。
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10803006621.html

2011-06-17 23:38:00
消費税の前提条件の「経済状況の好転」って何でしょう?
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10926563182.html

2011-06-20 13:46:00
増税への執念?
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10929100968.html

2011-08-28 09:44:00
「経済状況の好転」=景気のどん底近辺です。ご用心
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10999997123.html


2011-08-18 20:09:00
「あまりにも来年、景気が悪かったら増税はできない」→税法附則104条「経済状況好転」との関係は」
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10990189870.html


(参考)「経済状況の好転」についての2011年3月9日の衆議院内閣委員会の問答


○中川(秀)委員 ・・・では、さらに伺いますが、あなたが増税のよりどころとする税法の附則百四条、これは、「法制上の措置を講ずる」とか、そういういろいろなことが書かれているところですが、「経済状況を好転させることを前提として、」と明記しております。この前提条件にはデフレの終結は含まれるのですか。

○与謝野国務大臣 百四条のお話だと思いますけれども、これは、デフレという言葉は使っておりません。

 そこで、あの百四条に書いてある経済という言葉をどう解釈すべきかということで、今論文をつくっております。それは、消費税を増税した場合、消費者の心理に対する影響、消費者の行動に対する影響、マクロ経済的な影響、そういうものをすべて研究した上で、経済の回復を待ってということをどういうふうに解釈するかということは量的、質的に御提示できると思います。

○中川(秀)委員 あなたは、平成二十一年の一月二十六日の参議院の予算委員会、つまり一昨年の予算委員会ですが、経済状況の好転について、こう答えておられますね。当時は違うお立場ではいらっしゃったけれども。一説は潜在成長力を考えたらどうかとかいろいろな説があったけれども、やはり税制改正をするときはすぐれて総合的な政治判断、総合的な経済状況の判断によるということであって、細かい数字ももちろん必要ですけれども、この数字に依拠するというよりは政治としての大きな判断、これは景気回復であって消費税をお願いすることができるという政治的、経済的判断というものが基礎になっていると思っています、こう答えておられます。覚えておられると思います。

 この政治的判断、政治としての大きな判断というのは何なんでしょうか。今の御答弁なら、量としても、数字としても、経済状況の好転の基準というものを何か示せるという御答弁に聞こえましたが、前には違うことをお答えになっています。前の答弁だと、何の基準もなく、政治的状況を見てやってしまえということにとれますが、今の御答弁はちょっと違いますけれども、そこをはっきりしてください。

○与謝野国務大臣 最初の部分、よく聞こえなかったので、少し間違った答弁になるかもしれませんが。

 結局は、税をどうするかというのは、最終的には政治家の総合判断であると思っております。しかし、その総合的な判断をする前に、これは消費税に限らず、所得税、法人税等主要な税制を変えた場合国民の生活、国民の経済にどういう影響があるのかということはやはり分析、解析をしておかなければならないと思っております。

 したがいまして、今回も、税・社会保障一体改革を行うに当たっては、やはり、税が変化した場合、特に消費税が変化した場合国民の生活、経済にどういう影響を及ぼすかということは量的、質的に検討していかなければならない。しかし、税をどうするかということは、すぐれて政治の判断でございまして、最終的には、政治家の判断、決断によるものだと私は思っております。

○中川(秀)委員 それでは、ちょっと聞き方を国民生活へと変えますが、国民生活への影響を質的、量的に判断しなきゃいけないということですが、国民生活への影響を質的、量的にというのはもう一つイメージが、経済理論でいうとわかるようなわからないような説明なんですよ。大ざっぱ過ぎるんです。

 そこで、あなた自身が今までやったことの中で、もう少し具体的に、経済学として、経済政策として確認をさせていただきます。

 二十年の十二月の二十四日、つまり、もう三年前になりましょうか、あなたはまだ経済財政担当大臣でいらっしゃった。そのときに閣議決定をした中期プログラムがあります。持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム、これは大臣が担当されたものですよ。

 この中に「経済状況の好転後に実施する税制抜本改革の三原則」というのがうたわれています。御担当だったから覚えていると思いますが。これは、現在あなたが進めようとしている税制抜本改革の原則なんでしょうか。

 三原則の中の原則の二という中に、もっと経済政策そのもののコアのところなんですが、「改革の実施に当たっては、景気回復過程の状況と国際経済の動向等を見極め、潜在成長率の発揮が見込まれる段階に達しているかなどを判断基準」としているんです。原則の第二。これはあなたが直接担当されたんですよ。文書に書いているんですよ。

 ここにある「潜在成長率の発揮が見込まれる段階に達しているかなどを判断基準」、これは現在も有効な判断基準なのかどうか、これをお伺いします。

○与謝野国務大臣 もちろん、そうでございます。

○中川(秀)委員 これは今、明確な御答弁をいただいたと思います。

 では、当時の経済財政諮問会議、当時は経済財政諮問会議があったんですよ。担当大臣はあなたですね。この経済財政諮問会議で配付された中期プログラム関連経済財政諮問会議有識者議員提出資料等には、潜在成長率到達点という考え方が出ているんです。そして、この潜在成長率到達点というのは、デフレギャップが最大となる点と一致するんです。これも経済学の常識であります。そして、過去の平均値でずっと見ると、この一致点というのは景気の谷のちょうど一年後なんですよ。これは経済学を研究している人だったら皆わかることです。つまり、デフレギャップが最大でも増税できるということになるんです、理屈は。

 もう一回言いますと、さっきも、潜在成長率到達点というものが見込まれる、今度もそれは原則になるとおっしゃったが、その到達点というものは、デフレギャップが最大になる点と現実には一致するんです。しかも、それは大体景気の谷の一年後なんです。これは恐らく、私もここで言う以上は外の批判もちゃんと受ける覚悟で申し上げているから、経済学をやっている者ならわかります。そういうことになると、デフレギャップが最大でも増税できるということになります。

 そこでお尋ねですが、この潜在成長率到達点、これは税法の附則百四条にある経済状況の好転を判断する際の基準となるんでしょうか。

○与謝野国務大臣 政治の判断というのは、ある種の政治家の総合判断であって、税法、百四条の方は景気の回復を待ってと書いてありまして、どういう観点から判断されるんだろうと。

 これはやはり財政の状況あるいは税制の抜本改革が総合的に国民の生活や国民の経済にどのような影響を与えるかということを考えるので、余り、学問的な思考というよりは、実際上あるいは実務上の難しい判断であるけれども、判断として判断が存在するんだろうと私は思っております。

○中川(秀)委員 二十年の十二月に担当大臣として閣議決定した中期プログラムに三原則を掲げて、「潜在成長率の発揮が見込まれる」、そういう判断基準までうたわれた。それは今度の判断基準にも有効な判断基準だと御答弁になった。しかし、詰めていくと、結局何だかわからない、そういう御答弁のような気がいたしますね。

 それでは、現在の景気の判断において、百四条に定める経済状況の好転の条件を満たしているとお考えですか、政治的な判断として。

○与謝野国務大臣 下振れリスクは多数存在いたしますが、ディフュージョンインデックスあるいはその他の経済統計を見てみますと、横ばいながら少しずつ明るい兆しが見えてきたというのが私の印象でございます。

○中川(秀)委員 それは発表される月例経済報告の繰り返しにしかすぎないので、私の直接的な、では税法の附則百四条に定める経済状況の好転の条件を満たしているのかという御質問には全然お答えになっていませんね。

 あなたは、二月の十八日の夜、BSフジの番組で、社会保障と税の一体改革に関連して、消費税率一七%への引き上げを提言している経済団体、たしか同友会だったと思いますが、その案に対して、ちょっと高過ぎるというか、企業としての責任を逃げている感じがすると指摘したと報道されております。あなたは何を根拠にちょっと高過ぎると言っているのか、企業としての責任を逃げているというのは何を意味しているのか。

○与謝野国務大臣 税というのは、机の上で計算するのはとても簡単ですけれども、税の提案をするということ自体相当な作業でありますし、その案を国民に理解していただくというのはさらに難しい作業であるわけでございます。

 したがいまして、どんな案であれ、政治的にこなせるかどうか、政治的に消化できるかということも極めて大事な観点であって、ただこれだけ必要だからこれだけにしますということだけでは済まないものを含んでいる、私はそういう点を申し上げたわけでございます。