増税への執念? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

増税への執念?

秘書です。
菅総理は、自分の手で増税をしたいから延命を図っているのでしょうか?


「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな
新聞が報じない増税反対に集まった超党派議員211人

2011年06月20日(月)ニュースの深層 高橋 洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9228

簡単に辞める気などない菅総理は、エネルギー政策や補正予算でやる気をみせている。 最近は、「自然エネルギーへの転換は30年来の主張だ」と言い出した。しかし総理として本気にやる気だったら、就任直後の所信表明で言うべきだろう。しかし一言も触れていない。ななにより、特に大きな政策変更には少なくとも1年は要する。そんな基本も知らないなら総理としては、辞める前から失格だ。

発送電分離も、本コラムでこれまで書いたように、菅政権での東電温存スキームでは当分の間できない。単なるリップサービスに終わってしまう。

菅政権の政策はこういう付け焼き刃が多い。その中で、増税だけはしっかりしている。常日頃から増税をしっかり考えている財務省とべったりだからだ。いいか悪いかは別として、いつも考えて準備している人(役所)はやることが違うと、皮肉を込めて言っておこう。もっとも、財務省にとって総理は増税達成の単なるコマであり、用済みになれば代えてもいいくらいにしか思っていない。

財務省の狙っているのは、当面の復興増税とその後の消費税増税だ。3年間くらい復興財源のために増税が行われ、その次は社会保障のための消費税増税が行われる。これらの増税は復興とか社会保障に充当するので、直ちには財政再建にならない。その後に、本格的な財政再建増税になるだろう。ホップが復興、ステップが社会保障、ジャンプが財政再建という三段階大増税が進行中だ。

右と左のアベが一緒になった
 ホップは復興増税である。民主党と自民党が合意した復興基本法では、復興債を発行して、それを3年間くらいの短期間で償還する財源は増税とされている。経済学のクッション理論によれば、大震災のような一時的ショックに対応するのは長期にわたり償還する国債での対応だ。もし100年に1回の大震災なら100年国債が基本になる。だが、復興基本法の国債発行は増税が目的で、そのためのつなぎ国債である。クッション理論による超長期国債ではない。

だからこそ、今の復興基本法に対する反論は国会議員の中にも多い。16日(木)、超党派による「増税によらない復興財源を求める会」が、復興財源について復興債の日銀買取や埋蔵金での対応を求めた。

その中身は、本コラムでこれまで書いている復興財源33兆円と基本的には同じだ。ただ、この超党派の集まりははかなり大きく広がっている。16日現在で集まった署名は民主115、自民66、みんな16、公明2、国民新・新党日本5、社民4、無所属3の計211人。(具体的な氏名はコラム最後に掲載)


16日の記者会見は、民主・宮崎たけし衆院議員の司会で開会。まず自民・山本幸三衆院議員が経過報告。その後、民主・松原仁衆院議員、自民・安倍晋三元総理、社民・阿部知子政審会長、みんな・渡辺喜美代表、公明・遠山清彦衆院議員、国民新・亀井亜紀子政調会長が各党代表であいさつした。

安倍元総理の参加が目玉だった。安倍元総理は「自民党の安倍晋三から社民党の阿部知子先生まで、反対側のアベとアベが一緒になった」と話して会場は爆笑だった。

ステップは社会保障だ。6月2日の内閣不信任騒動に隠れて目立たなかったが、その日に公表された「社会保障改革案」では消費税率を2015年度までに10%まで引き上げることになっている。

菅政権は、20日(月)までに消費税引き上げを政府・与党で決定したい。ところが、17日行われた民主党調査会・PT合同総会では、反対意見が9割以上を占めた。20日にも菅政権は強行突破するという見方だが、その場合、松原議員の言葉を借りれば、民主党執行部はファシズムだ。

与謝野大臣が麻生政権時代に仕掛けた「増税時限爆弾」
 そもそも論をいえば、社会保障財源に消費税を用いるというのは、社会保障理論からおかしい。社会保障の基本は所得再分配と給付・負担の明確化だ。所得再分配のためには財源は所得比例のものが望ましい。

欧米では給付付き税額控除という仕組みを導入して、税負担や財源(負担)はマイナスの給付と考え、給付と合算して所得再配分政策を行っている。給付付き税額控除の場合、まさしく税と社会保障がシームレスに一体化する。

ところが、日本では、単に消費税増税の口実として、税と社会保障の一体改革が語られている。ちなみに、民主党では給付付き税額控除を導入するといっていたが、この制度は消費税を社会保障財源にするには不都合なので、財務省のいうとおりに、あっさり放棄したようだ。

また、社会保障では給付と財源(負担)の関係が明確でなければならない。かつて民主党が得意だった年金問題は個人ベースの給付と負担のデータの不備で起きた。そこで、国民が年金情報を知るために年金定期便などができた。そこには払った消費税というデータはない。

しかも、保険料であればいくら足りないかは保険手法で明確にわかる。しかし、消費税になるとどんぶり勘定になって給付・負担の関係が不明確になる。

もし社会保障財源が足りないのであれば、保険料の引き上げを行うべきだ。もっとも、その前にデフレを脱却するのがもっとも公平な財源確保の道である。

しかし、財務省はこうした基本論を飛ばして、消費税を社会保障目的税としてきた。そして、消費税増税を麻生政権での平成21年度所得税等を改正する法律附則104条で仕組んだ。これは、今、菅政権に鞍替えした与謝野経済財政担当相が、自民党時代に取りつけた「増税時限爆弾」だ。

復興よりも増税を急ぐのはなぜか
 それには、「政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」と書かれている。

これは今でも有効な条文であるので、これを根拠として消費税率引き上げがでている。

 しかし、2008~10年度で「経済状況が好転」したかといえば、誰の目にも答えはNOである。リーマンショックと今回の大震災の二度のショックで経済はよくない(下図参照)。

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それに関わらず、この条文を根拠して、民主党が消費税引き上げを行うというのであれば、今なおGDPギャップが20兆円もあるデフレで、「経済状況が好転」になっていない。むしろ、条文を素直に読めば、前提条件が崩れているので、今は「必要な法制上の措置」を講じなくてもいい。

17日の民主党調査会・PT合同総会では、消費税引き上げのタイミングとして、「経済状況が好転したら」という修正提案があったという。しかし、修正には何の意味もない。和田隆志隆史政務官(財務省OB)の説明もしどろもどろだった。

このまま、菅政権はやるべき復興はすぐやらずに、増税だけを急ぐのだろうか。

数字上では低い日本の財政破綻の確率
 ジャンプは財政再建だ。財務省はいつでも財政再建キャンペーンをやっている。債務残高がGDPの2倍、1000兆円もあるとかいう話は耳にタコができている。政府の資産もたっぷり700兆円もあることはいわない。しかも、この資産のうち大半は官僚の天下り機関への公金(貸付金や出資金)だ。

ほんとうに日本は財政危機なのか。ソブリンもののクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)からわかる。国が破綻すれば国債が紙くずになって損失が出る。CDSでは、保険料を支払う代わりに万が一の時に保証してもらえる。その保険料の大きさで、国の財政破綻のリスクがわかる。

ギリシャでは1600ベーシスポイント(=16%)を超えて、5年以内に破綻すると予想されている(下図参照)。

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日本は大震災で高くなったが、イタリアより低く100ベーシスポイント(=1%)にもならず、100年以内に破綻するかどうかだ。同列に比較できるかどうかわからないが、数字上では30年間以内に87%の浜岡原発より、はるかに低い確率だ。

しばしば、震災復興と財政再建を両立しなければいけないというが、数字の上からはそうでない。しかも、なにより、経済復興すれば、財政再建は達成できるので、そもそも財政再建を別の目標とすべきかも疑わしい。

増税に賛成の新聞メディア
 最後に、マスコミ報道にふれておこう。ホップ、ステップ、ジャンプの増税について、新聞ではあまり報じられない。新聞の世論調査では、増税賛成のほうが多いという結果がよくみられる。

増税については、今の民主党執行部だけでなく、自民党執行部も賛成だ。争いにならずに面白くないからという事情もあるが、新聞そのものが増税に賛成だから、取り上げない。

特に、消費税増税では、新聞は軽減税率かゼロ税率にしてもらうということで、政府と手打ちがすんでいるという噂もある(本コラム「消費税増税」賛成の裏側に大新聞の「非競争的体質」あり」 )。

菅政権は、マニフェストに書かれたことをやらないばかりか、書いていない増税には熱心だ。もし、今週に消費税増税を政府で決めるなら、実施のまえに国民の信を問わなければならない。死に体内閣のとんだ置き土産だ。


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→このリストにのっていないみなさま!「経済状況の好転」についての2011年3月9日の衆議院内閣委員会の問答をご参考に。つまりは、政治判断でなんでもありってことになりませんか?


○中川(秀)委員 ・・・では、さらに伺いますが、あなたが増税のよりどころとする税法の附則百四条、これは、「法制上の措置を講ずる」とか、そういういろいろなことが書かれているところですが、「経済状況を好転させることを前提として、」と明記しております。この前提条件にはデフレの終結は含まれるのですか。

○与謝野国務大臣 百四条のお話だと思いますけれども、これは、デフレという言葉は使っておりません

 そこで、あの百四条に書いてある経済という言葉をどう解釈すべきかということで、今論文をつくっております。それは、消費税を増税した場合、消費者の心理に対する影響、消費者の行動に対する影響、マクロ経済的な影響、そういうものをすべて研究した上で、経済の回復を待ってということをどういうふうに解釈するかということは量的、質的に御提示できると思います。

○中川(秀)委員 あなたは、平成二十一年の一月二十六日の参議院の予算委員会、つまり一昨年の予算委員会ですが、経済状況の好転について、こう答えておられますね。当時は違うお立場ではいらっしゃったけれども。一説は潜在成長力を考えたらどうかとかいろいろな説があったけれども、やはり税制改正をするときはすぐれて総合的な政治判断、総合的な経済状況の判断によるということであって、細かい数字ももちろん必要ですけれども、この数字に依拠するというよりは政治としての大きな判断、これは景気回復であって消費税をお願いすることができるという政治的、経済的判断というものが基礎になっていると思っています、こう答えておられます。覚えておられると思います。

 この政治的判断、政治としての大きな判断というのは何なんでしょうか。今の御答弁なら、量としても、数字としても、経済状況の好転の基準というものを何か示せるという御答弁に聞こえましたが、前には違うことをお答えになっています。前の答弁だと、何の基準もなく、政治的状況を見てやってしまえということにとれますが、今の御答弁はちょっと違いますけれども、そこをはっきりしてください。

○与謝野国務大臣 最初の部分、よく聞こえなかったので、少し間違った答弁になるかもしれませんが。

 結局は、税をどうするかというのは、最終的には政治家の総合判断であると思っております。しかし、その総合的な判断をする前に、これは消費税に限らず、所得税、法人税等主要な税制を変えた場合国民の生活、国民の経済にどういう影響があるのかということはやはり分析、解析をしておかなければならないと思っております。

 したがいまして、今回も、税・社会保障一体改革を行うに当たっては、やはり、税が変化した場合、特に消費税が変化した場合国民の生活、経済にどういう影響を及ぼすかということは量的、質的に検討していかなければならない。しかし、税をどうするかということは、すぐれて政治の判断でございまして、最終的には、政治家の判断、決断によるものだと私は思っております

○中川(秀)委員 それでは、ちょっと聞き方を国民生活へと変えますが、国民生活への影響を質的、量的に判断しなきゃいけないということですが、国民生活への影響を質的、量的にというのはもう一つイメージが、経済理論でいうとわかるようなわからないような説明なんですよ。大ざっぱ過ぎるんです。

 そこで、あなた自身が今までやったことの中で、もう少し具体的に、経済学として、経済政策として確認をさせていただきます。

 二十年の十二月の二十四日、つまり、もう三年前になりましょうか、あなたはまだ経済財政担当大臣でいらっしゃった。そのときに閣議決定をした中期プログラムがあります。持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム、これは大臣が担当されたものですよ。

 この中に「経済状況の好転後に実施する税制抜本改革の三原則」というのがうたわれています。御担当だったから覚えていると思いますが。これは、現在あなたが進めようとしている税制抜本改革の原則なんでしょうか。

 三原則の中の原則の二という中に、もっと経済政策そのもののコアのところなんですが、「改革の実施に当たっては、景気回復過程の状況と国際経済の動向等を見極め、潜在成長率の発揮が見込まれる段階に達しているかなどを判断基準」としているんです。原則の第二。これはあなたが直接担当されたんですよ。文書に書いているんですよ。

 ここにある「潜在成長率の発揮が見込まれる段階に達しているかなどを判断基準」、これは現在も有効な判断基準なのかどうか、これをお伺いします。

○与謝野国務大臣 もちろん、そうでございます

○中川(秀)委員 これは今、明確な御答弁をいただいたと思います。

 では、当時の経済財政諮問会議、当時は経済財政諮問会議があったんですよ。担当大臣はあなたですね。この経済財政諮問会議で配付された中期プログラム関連経済財政諮問会議有識者議員提出資料等には、潜在成長率到達点という考え方が出ているんです。そして、この潜在成長率到達点というのは、デフレギャップが最大となる点と一致するんです。これも経済学の常識であります。そして、過去の平均値でずっと見ると、この一致点というのは景気の谷のちょうど一年後なんですよ。これは経済学を研究している人だったら皆わかることです。つまり、デフレギャップが最大でも増税できるということになるんです、理屈は。

 もう一回言いますと、さっきも、潜在成長率到達点というものが見込まれる、今度もそれは原則になるとおっしゃったが、その到達点というものは、デフレギャップが最大になる点と現実には一致するんです。しかも、それは大体景気の谷の一年後なんです。これは恐らく、私もここで言う以上は外の批判もちゃんと受ける覚悟で申し上げているから、経済学をやっている者ならわかります。そういうことになると、デフレギャップが最大でも増税できるということになります。

 そこでお尋ねですが、この潜在成長率到達点、これは税法の附則百四条にある経済状況の好転を判断する際の基準となるんでしょうか。

○与謝野国務大臣 政治の判断というのは、ある種の政治家の総合判断であって、税法、百四条の方は景気の回復を待ってと書いてありまして、どういう観点から判断されるんだろうと。

 これはやはり財政の状況あるいは税制の抜本改革が総合的に国民の生活や国民の経済にどのような影響を与えるかということを考えるので、余り、学問的な思考というよりは、実際上あるいは実務上の難しい判断であるけれども、判断として判断が存在するんだろうと私は思ってお
ります


○中川(秀)委員 二十年の十二月に担当大臣として閣議決定した中期プログラムに三原則を掲げて、「潜在成長率の発揮が見込まれる」、そういう判断基準までうたわれた。それは今度の判断基準にも有効な判断基準だと御答弁になった。しかし、詰めていくと、結局何だかわからない、そういう御答弁のような気がいたしますね。

 それでは、現在の景気の判断において、百四条に定める経済状況の好転の条件を満たしているとお考えですか、政治的な判断として。

○与謝野国務大臣 下振れリスクは多数存在いたしますが、ディフュージョンインデックスあるいはその他の経済統計を見てみますと、横ばいながら少しずつ明るい兆しが見えてきたというのが私の印象でございます

○中川(秀)委員 それは発表される月例経済報告の繰り返しにしかすぎないので、私の直接的な、では税法の附則百四条に定める経済状況の好転の条件を満たしているのかという御質問には全然お答えになっていませんね。

 あなたは、二月の十八日の夜、BSフジの番組で、社会保障と税の一体改革に関連して、消費税率一七%への引き上げを提言している経済団体、たしか同友会だったと思いますが、その案に対して、ちょっと高過ぎるというか、企業としての責任を逃げている感じがすると指摘したと報道されております。あなたは何を根拠にちょっと高過ぎると言っているのか、企業としての責任を逃げているというのは何を意味しているのか。

○与謝野国務大臣 税というのは、机の上で計算するのはとても簡単ですけれども、税の提案をするということ自体相当な作業でありますし、その案を国民に理解していただくというのはさらに難しい作業であるわけでございます。

 したがいまして、どんな案であれ、政治的にこなせるかどうか、政治的に消化できるかということも極めて大事な観点であって、ただこれだけ必要だからこれだけにしますということだけでは済まないものを含んでいる、私はそういう点を申し上げたわけでございます


→すべては政治決断ということのようで。