『ごんぎつね』
台風が通り過ぎた翌朝、近くの川沿いの道を散歩しました。
しばらく雨の日が続いていたので、久しぶりに通ってみると、彼岸花のつぼみが
あちこちに姿をあらわしていました。雨水のせいで少し倒れてはいましたが、
すでに花が咲いているところもありました。毎年思うのですが、どうして
お彼岸の頃がわかるのだろう…とても不思議です。
新美南吉の『ごんぎつね』では、すすきの穂に雨のしずくが光り、
松虫がチンチロリンと鳴き、秋の情景が表現されています。
もの悲しいストーリーがなんとも切ないですが、真っ赤な彼岸花を印象的に描き、
儚くやさしい、幻想的な月夜の雰囲気にしました。
illustration by naggy
『木の都』
織田作之助といえば、『夫婦善哉』の作者として有名ですが、彼の小説の中で、
わたしは『木の都』という作品が好きです。
『大阪は木のない都だといわれているが、しかし私の幼時の記憶は不思議に
木と結びついている。』という文章から、この小説は始まります。
戦前から大阪は緑が少ないと言われていたのかと、驚きました。
作品中に「夕陽丘」という地名が登場します。大阪の上町台地という高台の
西側の地域のことをさし、高台から西を臨むと大阪湾に沈む夕日が見えたことが
由来のようで、今も町の名前になっています。
この辺りには、口縄坂や愛染坂、源聖寺坂など、「天王寺七坂」と呼ばれる坂が
あります。界隈にはお寺や神社が多くあるためか、実際に行ってみると、
大阪の中でも比較的、木々の緑が多いように感じられます。
坂の上の高台から、白壁の塀に囲まれたお寺の境内のクスノキや、マキや
カイヅカイブキといった木々が、少しずつ明かりの灯り始めた大阪の下町の
家々とともに、夕日に照らされる光景をイメージして描きました。
illustration by naggy
『フランダースの犬』
『フランダースの犬』をイメージして描きました。
日本のアニメのパトラッシュは、白に茶色のぶち模様の大型犬でしたが、これは、
日本の子供たちにも馴染みやすいようにと、セントバーナードや日本犬を参考にして
考えられた、アニメオリジナルの姿だそうです。
小説に登場するパトラッシュの犬種は、諸説あるようです。
「黄色もしくは褐色」「まっすぐに立ったおおかみのような耳」「たくましい、大きな、やせた、
力のある犬」のようで、何世代も荷車をひくなどの労役犬として生きてきた、
がっしりした大型犬のようです。
2つの犬種がモデルの候補にあがっており、外見の様子はベルギーシェパードのマリノア
という種が似ているようですが、フランダースの牛追い犬、ブーヴィエ・デ・フランダースと
いう犬種の方が有力のようです。
ブーヴィエ・デ・フランダースは、全身もじゃもじゃで、シュナウザーとプードルをミックスした
ような外見なので、小説中の描写とちょっと異なるところもあるようですが、
ネロにいつも寄り添い、力持ちで心優しいパトラッシュのイメージに合うように思ったので、
こちらの犬種をモデルにして描きました。
実は、わたしの幼稚園時代のお弁当箱の柄は、『フランダースの犬』でした。
いつも仲良しパトラッシュと、わたしも一緒でした。
illustration by naggy