パット実戦(9)パットで手首を使ってはいけないのか? | ゴルフを科学する★理系のための理論的ゴルフの勧め!

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パットでは、ロングパットでの距離感とショートパットでの直進性を両立しなければなりません。

腕力や体力よりも感性が物を言う分野なので、プレーヤーの感性に応じた様々なパッティングスタイルがあります。

「パットに形なし」と言われる所以です。

しかし、「パットに形なし」と言いながらも、多くの人が疑いもなく、金科玉条の如く守っている基本があります。

それは「手首を使わない」こと。

人によってパターやスイング軌道、パターの持ち方が変わっても、殆どの人が手首を固定して肩のストロークで打とうとしています。

本当に手首を使わない方が良いのでしょうか?
「パットに形なし」と言うのであれば、手首を使っても良いのではないでしょうか?

「タップ式パット」という言葉があります。

タップ式パットの名手、青木功プロがレギュラーツアーを引退してからは、死語になってしまいました。

青木プロはグリップの位置を殆ど動かさずに、体も不動のまま、手首の横コックだけでパットをしていました。

青木プロはランニングアプローチの名手でもありましたが、アイアンでのランニングアプローチとパターが全く同じストロークだったのです。

おそらく、ロングパットはランニングアプローチのイメージで打っていたのだと思います。

青木プロのように大きく手首を使うのは極端過ぎるとしても、パターでも、特にロングパットでは、手首の動きが入るのは自然なことだと思います。

パットは右手の感覚が大切ですので、右手の動きで説明します↓



テークバック前半はスクエアに引き、テークバックの半分に、右手甲凹になるように右手首をわずかに手背に折り曲げます(写真左側)。

ダウンスイングは、逆に右手首を手のひら側に折りながら、うちわを扇ぐように、右手のひらでボールを包み込むようにインパクトします(写真右側)。

左手首はテークバックで甲側凸。
フォローで甲側凹になります。

ショットと同じように左手首をリリースするのです。

手首の一定の動きの中で球を捉えた方が、終始フェイスをスクエアを保つよりも随分と簡単です。

私は30cmのショートパットも手首を使っています。

ヘッドの動きを上から見ると↓


上は通常のin to in軌道でコックをしない場合。

体の動きで自然にヘッドがインサイドに入り、フェイスは自分に対してスクエアですが、ラインに対しては開いていることがわかります。

下側はわずかに横コックをした場合です。

コックをしない時よりフェイスがほんの僅かに右を向いていることが分かります。

手首を横に折ったからです。

フェイスを開こうとしてグリップを右に回転させてはいけません。
横に折るのです。

クリップを右に回すとフェイスが開き過ぎて、インパクトでフェイスがスクエアに戻り切らず、右にプッシュショートます。

横コック(左手のヒンジング、右手のカッピング)ではテークバックの軌道に対してフェイスのリーディングエッジはほぼスクエアのままで、ハンドファーストの度合いが強まるだけなので、インパクトで自然にフェイスはスクエアに戻ります。

フェイスバランスパターで手首を使わない教科書的なストロークをしていて、どうしてもロングパットの距離感が出なかったり、ショートパットで寸止めのようなパットを繰り返している人は、思い切ってピン型パターで手首を使ったパットを試してみて下さい。

フェイスバランスパターは慣性モーメントが大きく手首の動きを受け付けませんが、ピン型ならそれが可能です。

手首を使う感覚を得るには、練習場の50ヤードのピンに向かって、パターで転がし上げる練習をするのが効果的です。

手首を使わないと、まず届きません。

それ以前に、ちゃんと当たらずにダフることが多いです。

振幅が大きいテークバックをコック(ヒンジング)なしで行うと、パターでもダフるのです。







バットはパターを使ったアプローチなのです。

タップ式パットの名手青木功プロと、1982年の全米プロ(バルタスロール)で優勝を争ったニクラウスは「なんでこの東洋人は、おかしなパッティングスタイルで、長いパーパットやバーディパットをポンポンと簡単に沈めるんだ。信じられない!」

そう思いながらプレーしていたそうです。

フェイスバランスパターが普及する以前、ピン型パターが一般的だった頃は、青木プロほど極端ではないものの、タップ式パットをする選手は大勢いました。

ファジー・ゼラー(全米オープンチャンプ)、コーリン・ペイビン(元賞金王)、故セベ・バレステロスらです。
彼らはパットの名手でウチワを扇ぐようなパットをしていました。

セベは「ショートパットでは手首を使わないが、距離が長くなればなる程、グリップを緩く握り、手首を使う」と言っていました。

その後オデッセイのツーボールパターや、タトリストのフューチュラパターが世に出るようになり、その直進性の良さが脚光を浴び、以後はフェイスバランスの異形パターが花盛りとなりました。

フェイスバランスパターの普及に伴い、手首を使わない打ち方が当然のようになって行きました。

しかし最近になって、プロの世界では、再びピン型にトレンドが回帰しつつあります。

先週開催された2014年度USオープンの上位20人を見ると、優勝したカイマー、2位のコンプトン、3位のファウラー、4位のダスティン、以下ステンソン、スネデカー、フューリク、ポールター、スピースら、20人中16人がピン型パター使用者でした。

フェイスバランスパター使用者はアダム・スコット、ジェイソン・デイらたった4人だけ。

しかもその4人が使っていたのは中・長尺のもので、通常の長さのフェイスバランスパターを使用した選手は20位以内に一人もいなかったのです。

これは明らかに統計学的に有意差があります(統計計算するまでもありません)。

開催地のパインハーストGCのグリーンはとても傾斜がきつく速く、ピン型パターでないと微妙な距離感が出せなかったのだと思います。

しかも、カイマー、コンプトン、ファウラー、ダスティンらは明らかに手首を使っていました。

ガルシアは、太いグリップを巻いたパターで手首を使わないように必死になっていましたが、随分と苦労していました。
手首をガチンガチンに固めて打つのは、かえって外しそうで、見ている方もとても緊張しました。

実は私が、「パターも手首を使うべきではないのか?」と思い始めたのは4ー5年も前のことです。

ピン型パターの使い手、タイガーのロングパットを見ていて、「どうしてあんなに小さいテークバックであんなに転がるんだろうか?」と疑問に思ったのがきっかけです。

タイガーは、おそらく世界中のプロの中で、最もテークバックが小さい選手でしょう。

彼は手首を使っています。
ビデオをコマ送りにして観察してみると、他の選手よりもフォローでトー側が先行していることに気付きました。

手首を使わないようにしている選手は、フォローで左肘を先行させるようにボールを逃がすような動きがありますが、タイガーにはそのような動きがなかったのです。

数年前までなら、「パターで手首を使う」などとは、あからさまに人の前で言えるようなことではありませんでしたが、これからはそうではなくなる予感がしています。

私はロングパットもショートパットも手首を使っていますが、不思議なことに、誰にもそれを指摘されません。

数年前に試した時は、同伴者から「何でそんなに手首を使うの?」と指摘(注意)されたのですが、現在では同じ同伴者(シングル)から何も言われないので、気が付かれない程度に軽くやっているのだと思います。

僕も随分と上手くなったものだと自画自賛しています、エヘン。

ちなみに私の平均パット数は31です。

例によって、とんでもない長文になりましたが、読んでいただいてありがとうございました。

ではまた!