大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)
【はじめに】

はじめまして。弁護士の長野智子と申します。
このブログでは、法律や社会の出来事を通して「人が人を信じるとはどういうことか」「安心して生きるとは何か」を、日々の出来事や思索を交えながら綴っています。

弁護士として歩んできた年月の中で感じたことは、法よりも先に“心”があるということ。
誰かの痛みや戸惑いに静かに寄り添うことが、最も確かな解決の糸口になる、そう信じています。

どうぞ、気軽に読んでいただき、時に立ち止まり、何か一つでも心に残るものを見つけていただけたら幸いです。

【弁護士長野智子に法律相談等をご希望の方はこちらから】
http://chi-sei.jp/access.html
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

9月28日に読んで頂いた記事







GACKTさんの「NISA不要論」。本質的には間違っていない。


最近、GACKTさんのNISAについての発言が話題になっています。

「NISAなんてやっている場合じゃない。自分の価値を高めろ」

ざっくり言えば、そういう趣旨の発言です。

SNSでは「NISAを否定するなんて間違っている」という反応もありますが、発言の本質を考えると、実はそれほど間違ったことを言っているわけではないように思います。

要するに、

「ちまちま投資する前に、まず自分自身の稼ぐ力を高めろ」

という話だからです。

これは資産形成を考えるうえで、かなり重要なポイントです。

投資では「利回り」が注目されがちです。

年5%で運用できるか、10%ならどうか。

NISAで毎月3万円積み立てたら20年後はいくらになるか。

もちろん、それも大切です。

しかし、もっと大きな問題があります。

そもそも投資に回せるお金を、どうやって増やすのか。

ここです。

たとえば、毎月3万円を投資する人が、毎月5万円投資できるようになれば、それだけで年間24万円の追加投資になります。

10万円なら年間84万円。

20万円なら年間204万円。

投資の利回りを0.5%上げることに必死になるより、入金力を上げたほうが資産形成に与えるインパクトが大きいことは珍しくありません。

つまり、

資産形成=運用力×入金力×時間

と考えたほうがいい。

NISAは、その「運用」を効率化してくれる非常に優れた制度です。

しかし、NISAそのものがお金を生み出してくれるわけではありません。

元になる資金を稼ぐ必要があります。

そう考えると、GACKTさんの言っていることは、

「NISAをやるな」

というより、

「NISAに入れるお金を増やせる自分になれ」

と捉えたほうが、本質に近いのではないでしょうか。

もちろん、ここには一つ大きな問題があります。

GACKTさんには、一般人には簡単に再現できないほどの「稼ぐ力」があることです。

圧倒的な才能、知名度、発信力、ビジネス能力。

それらを組み合わせて巨富を生み出せる人なら、毎月数万円をNISAで積み立てることの優先順位は確かに低くなります。

100万円を投資して年5%なら、1年で5万円。

しかし、自分の能力を高めることで年間1000万円、2000万円と稼ぐ力を生み出せるなら、そちらに時間と資金を投入したほうが圧倒的にリターンが大きい。

だから、

「GACKTさんにとってNISAが必要ない」

という話なら、十分あり得ます。

問題は、それを一般人がそのまま真似できるのかということです。

普通の人には、GACKTさんのような圧倒的な才能はありません。

だからこそ、現実的には別の方法を考える。

会社員なら、給与を上げる。

資格を取る。

専門性を身につける。

転職する。

本業に加えて副業を持つ。

あるいは、小さく起業する。

つまり、

給与+副業

あるいは、

給与+事業

という形で「入金力」を少しずつ上げていく。

そして、増えたお金をNISAなどを利用して長期投資に回す。

これなら、GACKTさんの言っている「自分の価値を高めろ」と、NISAによる資産形成は対立しません。

むしろ両輪です。

稼ぐ力を高める。
入金力を高める。
そして、そのお金を長期で運用する。

これが普通の人にとって、かなり現実的な資産形成ではないでしょうか。

「NISAか、自己投資か」という二択にする必要はありません。

若いうちは特に、自分自身への投資が大きなリターンを生む可能性があります。

そして、ある程度収入が増えてきたら、今度はその余剰資金を金融資産に変えていく。

人的資本を金融資本に変換していくわけです。

GACKTさんの言葉を、そのまま「NISA不要論」として受け取ると、反発したくなる人もいるでしょう。

しかし、

「投資の前に、自分の稼ぐ力を考えろ」

というメッセージとして読むなら、むしろ多くの人に必要な話なのかもしれません。

ただし、GACKTさんのような圧倒的な才能を持っている人は少数です。

だから凡人は、凡人なりの戦略でいい。

一発逆転を狙う必要はない。

本業で少し収入を増やし、副業で月数万円を作り、そのお金を投資に回す。

月3万円だった入金力を5万円にする。

5万円を10万円にする。

そうやって「自分の稼ぐ力」と「お金の働く力」を両方育てていく。

NISAは、その最後の部分を効率化する道具です。

自分の価値を高めることと、NISAで投資することは、どちらか一方ではない。

稼ぐ力を高め、入金力を高め、そのお金を長期で働かせる。

GACKTさんの発言から学ぶべきなのは、「NISAをやめろ」ではなく、

「投資できる金額そのものを増やせる人になろう」

というところなのかもしれません。



「NISAに投資する」は間違い。でもGACKTさんの警告は、案外核心を突いている


政府が「貯蓄から投資へ」と旗を振り、2024年から新NISAが始まりました。

いまやNISAは、投資をする人にとって当たり前の存在になりつつあります。

ところが最近、GACKTさんのNISAに関する発言がSNSで話題になりました。

「NISAの利益が生まれる構造を説明してみて」

「なんで世の中の人がNISAに投資するのかわからない」

「思考が止まっている」

かなり辛辣な言い方です。

当然、SNSでは「NISAは投資商品ではない」「NISAに投資するという言い方自体がおかしい」とツッコミが入りました。

これは、その通りです。

NISAは投資商品ではありません。

NISAとは「少額投資非課税制度」。

株式や投資信託などを入れる「非課税の箱」です。

その箱の中で、トヨタの株を買うのか、S&P500の投資信託を買うのか、全世界株式、いわゆるオルカンを買うのかは、投資する本人が決めます。

利益を生み出すのはNISAではありません。

NISAという箱に入れた「中身」です。

100万円をNISA口座に入れただけで、110万円になるわけではありません。

100万円で購入した株式や投資信託の価格が110万円になれば、10万円の利益が出る。

通常なら、そこに約20%の税金がかかります。

NISAなら、一定の条件のもとでその運用益が非課税になる。

それだけです。

だから、「NISAに預ければ増える」という理解は完全に間違っています。

むしろ、ここからが大事です。

「では、オルカンはなぜ増えるのか?」

例えば、オルカンを買っているとします。

「みんなが買っているから」

「NISAで人気だから」

「金融庁が推奨しているから」

という理由だけなら、ちょっと危ない。

では、なぜオルカンの価格が長期的に上昇すると考えるのでしょうか。

世界中の企業が利益を上げ、その利益を内部留保や設備投資に回し、あるいは株主に還元する。

経済が成長し、企業の利益が長期的に増えていけば、企業価値も上昇する可能性がある。

オルカンは、そうした世界中の企業に広く分散して投資する商品です。

もちろん、永遠に右肩上がりという保証はありません。

戦争もある。

金融危機もある。

景気後退もある。

企業そのものが倒産することもある。

株価が半分になることだってあります。

それでも「世界経済全体の長期的な成長に賭ける」という考え方に合理性を感じるから、オルカンを買う。

ここまで理解しているなら、NISAを利用する意味は十分あります。

「S&P500なら、なぜ買うのか?」

同じことはS&P500にも言えます。

アメリカの主要企業500社に投資する。

アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットなど、世界経済を牽引する企業が組み込まれています。

しかし、これも「S&P500だから儲かる」のではありません。

米国企業の利益成長や米国経済の成長が長期的に続くと考えているから投資するわけです。

逆に言えば、

「米国企業の成長が止まる」

「企業利益が長期的に縮小する」

「割高な株価が修正される」

といったことが起きれば、当然、S&P500も下落します。

NISAは暴落を防いでくれません。

国が損失を補填してくれるわけでもありません。

「みんながやっている」は投資理由にならない

ここはGACKTさんの発言から、考えさせられるところです。

「国がNISAを勧めているから」

「YouTubeでオルカンが人気だから」

「友達もS&P500を買っているから」

「銀行預金では増えないから」

こうした理由だけで投資を始めるのは危険です。

NISAはあくまで税制上の優遇措置。

その中に何を入れるかは、自分で考えなければなりません。

そして、自分が何を買っているのか。

なぜ長期的に増えると思うのか。

どの程度の値下がりなら耐えられるのか。

10年後、20年後に何のために使うお金なのか。

そこまで考えて初めて「投資」になります。

NISAは「魔法の箱」ではない

新NISAによって、日本人の資産形成の環境は大きく変わりました。

非課税で長期投資できる制度として、非常に使いやすくなったのは間違いありません。

しかし、制度が優れていることと、投資する商品が必ず儲かることは別問題です。

NISAという「箱」がどれほど立派でも、中に入れる商品を間違えれば損をします。

反対に、きちんと仕組みを理解したうえで、長期・分散・低コストの投資商品を選び、暴落にも耐えられる資金で運用するなら、NISAは非常に強力な制度になります。

だから、

「NISAは正しいのか?」

という問いそのものが、少し違うのかもしれません。

正しいのはNISAではなく、

「自分は何に投資しているのかを理解すること」

です。

NISAはただの箱。

その箱の中身を選び、リスクを引き受けるのは自分自身です。

GACKTさんの「NISA」という言葉の使い方には、確かに制度上の誤解があります。

けれど、

「みんながやっているから」

「国が勧めているから」

という理由だけで、大切なお金を投資するな。

自分のお金なら、自分の頭で考えろ。

そういう警告だと受け取るなら、意外に本質を突いた発言だったのではないでしょうか。


1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>