8月9日(土)、今度は母を伴い、「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2025」に於ける下野竜也の指揮による日本フィルコンサートを聴きにミューザ川崎シンフォニーホールへ。
今回の選曲の意図、西洋音楽の語法で日本的題材を扱うことの意義、サン・サーンスの音楽的特徴、そして何よりドヴォルザークに寄せる想いを、下野らしい誠実さとユーモアとを兼ね備えて語っていました。
15時00分から本公演。
前半最初は、小山清茂/管弦楽のための鄙歌第2番。
第1曲「和讃」のもの哀しい情念や第4曲「豊年踊り」の華やかな賑々しさが、とりわけ印象的でした。
続いて、母にとってのこの日のメインである宮田大をソリストに迎えてのサン・サーンス/チェロ協奏曲第1番。
私が宮田の実演を聴いたのは今回が4回目ですが、過去3回はいずれも尾高忠明との協演によるエルガー/チェロ協奏曲と尾高尚忠/チェロ協奏曲。
今回のサン・サーンスでも、期待どおりの宮田のノーブルな音色と安定した技巧による、美しく魅力的な演奏が展開されていきました。
下野&日フィルも清澄な色彩感を以て宮田を支えており、とりわけ第2部の冒頭をはじめとするデリカシーは聴き応えがありました。
ソリスト・アンコールは、サン・サーンス繋がりで「白鳥」。此処でも宮田の艶やかで優美な演奏が聴衆を惹きつけていました。
後半は、ドヴォルザーク/交響曲第8番。
2001年10月のN響第1444回定期公演に於けるウォルフガング・サヴァリッシュ、2021年10月のN響第1940回定期公演に於けるヘルベルト・ブロムシュテット、2023年11月のウィーン・フィル来日公演や2025年1月のN響第2030回定期公演に於けるトゥガン・ソヒエフの演奏と比べてしまうと、流石にソノリティに於いて遜色は否めなかったものの、とは云え、鮮烈さと歓びに充たされた第1楽章第1主題の提示とその後の精細さ、熾烈な同楽章展開部やコーダ、一抹の淋しさを内包した第2楽章冒頭と同楽章中間付近の思い切った表現、アーティキュレーションとバランスに意の払われた第3楽章主部と慈しみを感じさせる中間部、そして温かさに満ちた主題の提示と燃え立つような燦然たる輝きとが交錯する第4楽章と、下野のドヴォルザーク愛が随所で伝わってくるような演奏ではありました。



オーケストラ・アンコールで演奏されたのは、プーランク(下野竜也編)/平和のためにお祈りください。
2023年8月5日の広響「平和の夕べコンサート」の冒頭でもこの曲を聴いたことがありますが、 今回、演奏前の下野の「今日は8月9日ですね」との、決して声高ではない、静かで落ち着いた、しかしながら確かな平和の希求を想わせるひとことを耳にして、思わず涙がこぼれ落ちそうに。










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