9月15日(日)新楽季幕開けとなるN響第2016回定期公演(9月Aプロ定期2日目)を聴きにNHKホールへ。

































今回公演は、首席指揮者ファビオ・ルイージ指揮による、今年生誕200年ブルックナー/交響曲第8番(初稿/1887年)
ブルックナー「第八」は、ハース版及びノヴァーク版第2稿による演奏ではそれなりの回数で聴いてきましたが、初稿聴いたのは、2017年5月神奈川フィル定期演奏会みなとみらいシリーズ第329回に於ける児玉宏指揮による演奏以来2回目

その折に会場で買い求めた同曲初稿エリアフ・インバル指揮都響CDを、

今回公演に行くにあたり久しぶりに聴き直しました
第2稿ではカットされた第1楽章コーダハ長調の終結部のほか、粗削りな剛直さ透徹感との融合等が初稿特徴ということになろうかと思いますが、慣れの問題もあるのだろうけれど、やはり第2稿、それもかつてギュンター・ヴァント朝比奈隆使い続け、今日でもヘルベルト・ブロムシュテット尾高忠明等が使用しているハース版に、均整美という点に於いて惹かれます



因みに9月6日(金)東京オペラシティコンサートホールでの東京シティ・フィル第372回定期演奏会に於いて、高関健がやはりこの曲初稿採り上げたそうだけれど、

平日夜東京オペラシティにとってリスクが大きいので、残念ながら行きませんでした

開演10分前トイレに行ったら、男性用トイレ長蛇の列

さて今回ルイージ&N響演奏は…「凄いものを聴いてしまった」
全体的に、透徹感と、恣意的な要素が極力排されたデュナーミクとアゴーギクの変化(尤も第2楽章主部と第3楽章中途で気になる箇所はあったけれど)、所謂「ブルックナー休止」の意味深さ際だった壮大かつ深遠な演奏でした。
第1楽章第1主題提示深々とした音第2主題美しさ展開部頂点圧倒的迫力コーダクライマックス直前弱音部(第2稿ではそのまま終結となる箇所)の寂寥感
第2楽章主部巨大な律動感所々での深沈とした趣(但し其処でのテンポの落とし方が上述のとおりやや気になったが)それに対位法的書法声部表出中間部伸びやかな表現
第3楽章第1主題前半部深沈とした趣後半部美しさ第2主題心の籠もった幅広い表現第3主題深い響き残照のようなコーダ名残惜しさ表出
第4楽章第1主題駆動力第2主題第3主題ほの暗さ再現部に於ける第1主題の再現及びコーダ直前での第1楽章第1主題再現凄絶さ、そして壮大に締め括られたコーダ
ステージ上展開されていくただならぬ演奏に、第1楽章では多少ざわついていた客席もいつしか次第に鎮まっていき、あの長大なアダージョの第3楽章に於いても聴衆集中力を切らさずに聴き入っていました
初日残念ながらルイージがまだ手を下ろさないうちに確信犯的フライング拍手が起きてしまったそうですが、この日は(多少早めの拍手はあったものの)総じて余韻を味わった上での盛大な拍手が湧き起こりました

ルイージ指揮ブルックナー交響曲実演聴いたのは、2014年1月N響第1773回定期公演に於ける第9番2021年11月N響第1943回定期公演に於ける第4番「ロマンティック」2022年12月N響第1971回定期公演に於ける第2番(初稿)に次いで4回目でしたが、今回第8番(初稿)疑いなく最高の演奏だったと思います。


















これ迄に接したブルックナー「第八」の実演の中では、1997年3月N響第1317回定期公演2001年7月大阪フィル第40回東京定期演奏会に於ける朝比奈隆



及び2007年6月N響第1595回定期公演2018年4月大阪フィル第517回定期演奏会に於ける尾高忠明指揮による演奏(いずれもハース版)が一つの理想形考えていますが、





今回ルイージ演奏は、流石にそれらと比べれば遜色は否めなかったものの、稿の問題といった次元を超越した充分に価値のある素晴らしいものだったと思います。
正直なところ開演前迄は、演奏されることの稀な初稿に接する貴重な機会という以上の期待さほどしていなかったのですが、聴きに行って本当に良かったです。

TV及びラジオ放送の為の収録既に初日に済んでいる筈ステージ上に、この日マイク幾つか立ち並んでいたのですが、ひょっとしてCD化等の予定あるのでしょうか

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