2022年3月11日を以て、ロマンスカーVSEの定期運用終了というニュースを見た私は、まだ車齢の浅いロマンスカーが引退という現実に対して、衝撃を隠せずにいました。定期運用を終えてからもしばらくは、団体臨時列車に使われるということですが、2023年秋を以て完全引退となります。VSEが営業運転を始めたのは2005年。1980年代初期にデビューしたLSEだって、2018年まで第一線で活躍してきましたし、1995年頃に誕生したEXEは現在も、EXEαとしてリニューアル工事が進められていますから、先輩ロマンスカーよりも短期間の活躍で引退を余儀なくされる見込みになったことを果たして、1年前や2年前には考えることができたのでしょうか。
それはさておき、小田急ではここ10年近く車両の入れ替えが全くと言って良い程なかった通勤型車両の世代交代も進んでいます。80年代、あるいは90年代から走り続けている車両もリニューアル工事を受け、走り続けているという印象がかなり強い路線ではありましたが、2019年度に5000形車両が営業運転を始めたことで、既存の通勤型車両に変化が訪れました。
特に変化が大きかったのは、1000形と8000形と呼ばれる車両です。このうち8000形に関しては、6両編成3本が廃車となりました。8000形は2013年頃までに"ほぼ"全ての編成が機器更新工事を受けたのですが、このうち1編成は踏切事故で損傷。修繕されることなく、事故廃車という形で引退を余儀なくされました。また、8000形が"ほぼ"全て工事を受けたと書いておきましたが、実は6両編成2本のみ、走行機器の更新を受けていませんでした。この2本はVVVF制御ではなく、界磁チョッパ制御と呼ばれる方式のまま更新されたこともあり、2編成共に昨年までに廃車となりました。
8000形が3編成の廃車に留まった一方、1000形に関しては計画が一転し、置き換えが加速する形になってしまいました。1000形は最盛期には、10両固定編成が4本、8両固定編成が1本、6両固定編成が6本、そして4両固定編成が19本、それぞれ在籍していました。4両編成のうち4本は登山電車の赤い塗装を纏い、小田原~箱根湯本間の区間輸送を担っていました。ただ、これはあくまで、ノーマルドアと呼ばれる標準的な大きさのドアを持つ編成に限った話であり、この他に"ワイドドア車"と呼ばれるドア幅の大きな6両固定編成が6本、在籍していたのです。1000形のリニューアルは2014年度から始まり、当初はワイドドア車6本を除く全ての編成がリニューアル工事の対象となる予定でした。が、5000形が次々と増備されたことに伴い、ワイドドア車だけではなくノーマルドアの編成にも、置き換えの波が及ぶこととなりました。
1000形のリニューアルは10両固定編成が4本全てに施され、これ以外に4両固定編成の半分くらいには施されています。また、6両編成と4両編成を10両固定化した編成が3本あり、2016年度に施工された2本は6両編成の新宿側と4両編成の小田原側の運転台を取り、強引に中間車化する工事を施した上で固定編成化されました。2020年度に施工された1本に関しては、意外な方法で実施されています。
まず2020年初夏の頃、8両固定編成が運用を離脱しました。ノーマルドア車としては初めての廃車となり、このうち6両はそのまま解体処分という形になりました。残りの2両は・・・というと、6両編成と4両編成1本ずつを10両固定化する際、6両編成の新宿寄り先頭車と4両編成の小田原寄り先頭車と入れ替える形で組み込むことにしたのです。これにより、先頭車1両ずつが廃車となり、新たな10両固定のリニューアル編成が誕生しました。
だがその後、ノーマルドア車の廃車は留まるどころか、加速をする一方でした。ワイドドア車も次々と廃車になる一方、ノーマルドア車は4両固定編成を中心にリニューアル工事が見送られて次々と廃車に。21年には、登山線カラーの編成の廃車も始まりました。10両固定化されず、6両のまま残った3本についても廃車が濃厚であり、全編成の概ね半数近くが引退するという結果に至りました。5年くらい前までは、まさかこれだけの数の1000形が廃車になってしまうとは、思ってもいませんでしたから・・・。
小田急線は22年度から、運行形態が大きく変わることとなります。VSEの定期運行終了で、代替のロマンスカーが新造されるのかと思いきや、意外なことに日中の減便等がある関係で、車両の本数自体は現状維持という形になっています。一方、快速急行や各駅停車などの特急以外の列車は日中時間帯の減便や運行規模の縮小が顕著であり、
・新宿~新松田(一部小田原)間の急行運行の取り止め、町田~小田原間で6両編成の代替急行(新松田~小田原間は各駅停車)。
・千代田線直通の準急の運行の取り止めと急行化。
・多摩線直通の急行の全列車、新百合ヶ丘~唐木田間各駅停車化
といったところが、大きな変化となります。恐らく、複々線化前に近い状態へ戻ったと言っても良いでしょう。これに伴い、6両編成の出番が増えたと言っても良さそうですが、一番変化が大きかったのは・・・
・江ノ島線の運行区間を、新宿・町田・相模大野~藤沢間と藤沢~片瀬江ノ島間で分離
でしょう。特急に関しては現状維持であるものの、町田方面から来る快速急行、急行、そして各駅停車はほぼ全便が、藤沢駅を始発・終着とするようになります。特に各駅停車に関しては、全ての列車が町田・相模大野~片瀬江ノ島間を通しで運行していたために、3月12日以降は駅の行き先表示で『各駅停車 藤沢』という案内を嫌な程、見るようになります。そして、藤沢~片瀬江ノ島間だけを走る各駅停車が設定されるようになり、これが4両編成での運行になるのか、それとも6両編成での運行になるのかも気になるところでしょう。
小田急で大きな変化があったダイヤ改正は恐らく、2016年と2018年、2019年であったかなと考えられます。2016年には常磐線各駅停車で使われているJR東日本のE233系が小田急線内にも乗り入れるようになり(反対に、小田急の4000形もJRへ乗り入れるようになった)、2018年には梅ヶ丘~代々木上原間の複々線区間が開業したことで、新宿から日中でも優等列車が10本出るという大増便ダイヤが組まれるようになりました。そして2019年には、これまで8両編成までしか停車できなかった代々木八幡駅が10両編成の列車の停車にも対応するようになり、新宿発着の各駅停車を10両編成で運行できるようになりました。このような華々しい改正が続いた最中、2020年に新型コロナウィルスの感染が日本国内で拡大し、人々の生活スタイルが変わったことが故に、鉄道の利用者数が大きく落ち込んでしまいました。22年の改正は、過熱化した輸送競争が落ち着いたと言っても良さそうです。