今日は朝から公益財団法人労働科学研究所が主催する医療分野の「雇用の質」向上シンポジウムに参加してきました。
「医療分野の雇用の質」というテーマが興味深くて参加したのですが、医療現場における労務管理に対してこれまでになくスポットが当てられ、とても共感を覚える会でした。
シンポジウムでの各発表はとても示唆に富むもので、以下の現状認識を確認しました。
・2025年問題(少子高齢化の進展により、医療従事者不足がピークに達する)に向けて、このままでは医療崩壊が止まらない。
・医療崩壊を防ぐためには、職員の量の充足とともに質の向上を図ることも必須。
・医療現場では、労働基準法等の法令知識や労務管理の重要性に関する認識が十分とは言えない。
上記に対する今後の対応策としては、以下のような内容が示されていたと思います。
・働きやすい職場作りや勤務形態の多様化を通して、医療従事者の離職率を低下させる。
・長く働いてもらうために、経営者は職員に対して病院の目的やミッションなどを浸透させる。
・経営戦略としてワークライフバランスを推進する。
・専門職として仕事に充実感をもってもらうため、やりがいや動機づけ、キャリアアップ体系を職員に示す。
・管理職クラスには、労務管理の重要性を認識してもらう。
とはいえ、このような働きやすい職場作りや労働条件の改善などを通じた雇用の質の向上は、頭では分かっていても実行に移すのは非常に難しいと思います。実際に今回のシンポジウムで発表された先進的な病院はまだまだ全国でも少ない状況です。
個人的には、医療経営で以下のような認識が広まれば、雇用の質の向上のきっかけになると思いました。また、社会保険労務士として、医療現場に貢献できる場面が大きいと感じました。
・労務管理は重要な経営要素。適切な労務管理は経営に良い効果をもたらす。
・「労働条件の改善」は必ずしも大幅な「人件費増」をもたらすものではない。
・「雇用の質の向上」は人に対する投資。患者さんに選ばれる病院になるために、重要度が増してゆく。
演者の方もお話されていましたが、数年前までは「医療現場で労働基準法を守ることは不可能」という雰囲気が強かったそうですが、現在では労務に関するコンプライアンスが重要な経営課題という認識が強まっているそうです。
また、管理職研修に労務管理のイロハを取り入れるケースも増えており、このような取り組みは、社会保険労務士が関与することで内容に厚みを持たせることができます。
また、人件費の問題については、このブログでも取り上げましたが、先般「医師の当直は時間外手当(奈良県立奈良病院)」という判決もあり、各病院で大きな経営課題になっていると思われます。
ですが、時間外労働・割増賃金対策は、現状把握をしっかりと行い、適切な手法で段階的なステップを踏み、新たな賃金体系を構築することで、大幅な人件費増を防ぐことは可能です。
労務管理が安定すると、職員の離職率が低下し、職員が生き生きと働ける病院を目指すことができます。2025年問題に向けて、特に中小病院が患者さんから選ばれる病院になるためには、とても重要なことだと思います。
長友社会保険労務士事務所では、労務管理と人事制度の専門家としての強みを生かし、医療現場における人事・労務管理の問題をサポートすることで、医療分野における「雇用の質」の向上に貢献していきたいと考えています。
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