医師の当直は時間外手当~奈良県の敗訴確定~ | 元MR・社労士がお届けする医療業界のための人事・労務News

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/東京都豊島区池袋 長友社会保険労務士事務所

昨日のニュースになりますが、病院経営に重大な影響を与える最高裁判決が出ました。

 

日経新聞記事(2013.2.14)より抜粋

 

▼奈良県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が当直勤務の時間外割増賃金などの支払いを県に求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は13日までに、県の上告を退ける決定をした。当直を時間外労働と認め、県に計約1500万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した。決定は12日付。▼

 

通常、医療機関において医師や看護師などが行う当直(労働基準法でいう宿直)は労働時間とはみなされませんので、1週40時間と定められた法定労働時間の枠とは別に勤務させることが可能です。

 

当直が、このような形で法定労働時間の規制から外されているのは、当直が電話対応や病室の巡視などが中心で、常態としてほとんど労働する必要のない勤務として、あらかじめ労働基準監督署の許可を得た場合でなければ行わせることができないものだからです。

 

【当直の許可基準】平14.3.19基発319007号

 

①勤務の態様
常態としてほとんど労働する必要のない勤務。病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈・検温等、特殊な措置を要しない軽度かつ短時間な業務のみ。
救急医療等が稀にあったとしても睡眠が十分に確保されるのであれば認められる。但し、救急医療を行った時間は、労基法第37条の割増賃金の支払いを要する。
②睡眠時間の確保
③当直の回数
当直勤務は週1回が限度
④当直手当
職種毎に、当直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1を下回らないこと

 

この他にも判断要素が示されていますが、今回のケースでは上記①について、「県が2007年6月から9カ月間について調査したところ、通常勤務(救急外来患者への処置全般および入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術など)の時間は、宿日直勤務時間の24%だった。」として、当直の許可基準を逸脱したと判断されました。

 

このため、当直勤務時間が時間外労働と認定され、その時間分の時間外手当の支払いを命じられています。県立奈良病院では当時、当直1回あたりの定額で定めた当直手当しか支払っていませんでした。

 

当直勤務時の賃金については、全国的に今でも1回◎円で支払っている病院が相当数あると思われます。今後も当直扱いを続けるのであれば、改めて当直勤務の実態を検証し、許可基準を逸脱していないかチェックすることが重要です。

 

許可基準を逸脱し実態として当直が認められないと、多額の未払い賃金が発生するリスクがありますので、そのような場合には当直を交替制勤務に変更するなど早急に対策を打たなければならないでしょう。




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