玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする


きっと、藤原定家撰小倉百人一首においても、人気のある歌ではないでしょうか。

私も大好きです。

なんだか気になる人なんですよね……式子内親王

 

 鎌倉初期の歌人。後白河天皇の第3皇女。賀茂斎院。准三后。のち出家。宮内卿・俊成女と並び称される。大炊御門(おおいみかど)斎院。大炊殿。萱(かやの)斎院。家集「式子内親王集」。しょくしないしんのう、しきしないしんのう。( ~1201) 『広辞苑』第五版より


とはいえ、そんなに歌すら知っているわけではありません。


  山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえかかる 雪の玉水

  桐の葉も ふみ分けがたく なりにけり かならず人を 待つとなけれど

  忘れては うち嘆かるる 夕べかな われのみ知りて 過ぐる月日を

  わが恋は 知る人もなし せく床の なみだもらすな 黄楊の小枕

  夢にても 見ゆらむものを 嘆きつつ うちぬる宵の 袖のけしきは


私が知っている数少ない歌のなかで、好きなもの五つ挙げてみました。


よくわかんなくても、なんかわかるでしょ?

季節への細やかな感覚、閑寂なイメージ、そして、忍ぶ恋……


歌から思わず想像するに、地味だけどしっとりした、おとなの美女。

あふれる知性と教養、三十一文字にこめる抑えつけられた自我。

内親王でしかも斎院だったこともあって(もちろん未婚)。

……などなど、美しい想像が止まらなくなりそうな。

もちろん、歌は歌なんですけど。


そんな私のイメージにほぼぴったりの「式子様」がおりました!

超訳百人一首 うた恋い。

http://mediamarker.net/u/n-kujoh/?asin=4840134782

この漫画、最高です。絵はヘタウマ(?)だけど、キャラに色気があります。

百人一首のいくつかの歌をピックアップして、それぞれの恋物語を短編形式で綴ったものです。


最後の恋物語が式子と定家の話でした。

あこがれだった式子様と、練習のために恋歌を詠み交わすうち、定家の恋心は本物に育っていき、ある日……


 そうよ! 私はひどいの!

 ままごとでも…それが私にできる精一杯です……

 和歌(うた)だけなの…

 詠(うた)うことしかできない… 不自由さの中で…

 和歌だけが どこまでも自由なの……

 だから、どうか… お願い…

 詠って…定家 私を……

 私を…… 許して ね… [108-109頁]


このあとの、定家のリアクションがまたいいんだよね~!


能の演目「定家」 の題材にもなった式子と定家の恋の噂ですが、これくらいのことがあってもロマンチックでいいなあと思います。というか、これくらいのことだからこそ、想像するには一番素敵です。


式子様についてもっと知りたい!

ところが、意外に式子内親王についての書籍は少ないようです。

現在、読んでいるのが、

式子内親王の歌風

http://mediamarker.net/u/n-kujoh/?asin=4877372369

ところが、和歌などを初見で正しく理解することを前提とした論文なので、ちょっと敷居が高いです。


笠間書院 の<コレクション日本歌人選>のシリーズで、『式子内親王』が近日発売(2011年5月2日予定)です! 上記の本と同じ著者(平井啓子さん)によるものですが、シリーズパンフレットをみると、歌の内容から歌人の略歴まで丁寧に解説したもののようですので、私のような初学者でも楽しめそうです。期待。

ちなみにこのシリーズ、さまざまな時代の日本の代表的歌人はもちろん、『戦国武将の歌』などもあって、約2年間の刊行で全60冊だそうです。



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定家と式子内親王の相聞歌?  (古代史推進委員会)


『式子内親王』<コレクション日本歌人選>

定家百首

清盛徒然~式子のことなど

アニメ・うた恋い。第13回



才媛内親王つながりで→有智子内親王