昨日の続きです。
今日はある土曜日の第２部の話になりますが、具体的には自由組手になります。
いつもお話ししているように、ここでは千唐流の試合ルールに基づいて行ないますので、昨日までお話ししてきたような技は使用できません。
組手稽古に参加した道場生の場合、まだまだ大会で実績を出すことに注力してもらいたいので、試合ルールに慣れた動きで行なってもらうことが大切です。
防具を着用している箇所に対してきちんとコントロールした上でしっかり当てる、ということであり、喧嘩のような感じで手足を振り回すことがないように留意し、過度な攻撃にならないようにしてもらいます。
限定された中で培える「見えない技」の部分もありますので、稽古ではその点に留意した上で頑張ってもらいました。
とは言っても、組手好きの道場生ですから、いったん始まればエネルギー全開といった頑張ります。
そのためか一つ一つの技に迫力が増していて、時折、これまでの稽古の成果かと思えるようなシーンも見られました。
それが偶然なのか意識して行なったものなのかは不明ですが、今日はそんなシーンを交えながらお話を進めていきたいと思います。
伸びやかな「蹴り」を放っているシーンです。
軸足を相手のほうに倒しながら「回し蹴り（まわしげり）」を出しているところですが、しっかり当たっていれば結構効いていると思われます。
攻撃された側はそれを捌こうとしており、蹴り足を捕ろうとしています。本当に捕ったら反則となりますので、そのような展開にはなりませんでしたが、そのイメージで上肢を動かそうとしていたならば武術的にはＯＫです。
ただし、「受け」の方向が違っており、相手の攻撃のベクトルに対抗しようとする場合、自身の上肢へのダメージが懸念されます。攻撃技の衝撃のピークを過ぎたところを狙ったというのであれば有りなのですが、そこまでのレベルではないので、この写真は受ける側の様子というより、攻撃した側の意識ということでアップしました。
同様に体重を乗せた「蹴り」を放っている様子です。
今度は「前蹴り（まえげり）」になりますが、この道場生は身体が柔らかいため、「蹴り」も伸びます。この時も軸足の様子を見るとしっかりした意識で蹴込んでおり、相手が後方に動いていなければタイミング次第では防具の上からでもＫОしていたかもしれません。
実は千唐流で使用している防具は薄く、しっかり腹部への防御を意識していなければ、結構効きます。時々防具付き空手については、当たっても痛くないから間合いを詰められるのでは、という話を耳にすることがありますが、一口に防具といってもいろいろあります。
先日の都大会でも当道場の少年部の道場生が重い「回し蹴り」を放ち、相手をＫＯしています。軸足のコントロールについて良い感じで撮れた写真がありましたので今日のブログでご覧いただきましたが、闘志の表れの一例としてその成長を嬉しく感じたところです。
先の写真で攻撃されている側の道場生も負けていません。
それが上の写真ですが、「左中段回し蹴り（ひだりちゅうだんまわしげり）」にて１本取っている様子です。
軸足が相手側に傾いているわけではありませんが、立っているところで腰を切って蹴っているところです。
相手が少し引き気味になったところに「蹴り」を放ち、極めたところです。
冒頭の２枚の写真からは一方の道場生が押されているような感じだったかもしれませんが、気持ちの上では負けているわけではない、というのがここでお分かりいただけたのではと思います。
そういう様子を表した別の写真です。
互いに引かず、「蹴り」の応酬になっています。
ここでは互いに身を退かず、積極的に前に出て戦おうという気迫が感じられます。
こういう中から相手の技のピークを外すということも学んでいくことになりますので、武術を意識した空手としては必要なところです。だからといって、我慢比べをやるということではなく、自分へのダメージは極力減じ、効果的な攻防を意識することを目指してもらうことになります。
そういうことを彷彿とさせるシーンが上の写真です。
左の道場生が放った「右上段逆突き（みぎじょうだんぎゃくづき）」をわずかに躱し、同時に反撃を試みている様子です。
残念ながら反撃については有効ではありませんでしたが、相手からの上段攻撃に対してスルリと躱している様子にこれまでの稽古の成果を見たわけです。
この日の第１部では「上段逆突き（じょうだんぎゃづき）」を仕掛け技として稽古しましたが、こういう風に自由組手の場でも見られる技ですので、設定が効果的であったことがお分かりいただけると思います。
もっとも、稽古したばかりだからといって「膝蹴り（ひざげり）」を出すというのは今回の組手稽古として反則行為になりますので、そうならないで良かったと思ったところでした。
でも、その時の反応を見ていると、防具を着けていなければそのまま相手の襟を掴めそうな感じになっている様子がご覧になれると思います。
結果は違っていても、第１部で稽古した身体操作につながりそうな瞬間を見ることができました。自由組手の前の稽古は約束事ということで地味に感じる人もいたかもしれませんが、身体で覚えた動きが自由組手にもつながることになったことに気付けば、稽古の意義を感じてもらえるのではと思っています。
上の写真は通常の戦いのライン上に居ません。
しかし、これまで稽古の様子をお話ししたブログの中で、相手からの攻撃を９０度転身で捌くということを稽古していました。
この様子はそのことを彷彿とさせるシーンですが、実際、立ち方を見れば相手からの攻撃に対応して捌いている様子が伺えます。
そして咄嗟に突いてる側も相手の動きに合わせて行なっており、その様子は「抜塞（ばっさい）」に出てくる「横屈立ち（おうくつだち）」で足の方向にに対して９０度の方向に突いている様子に似ています。
組手の中でのことですから、「形（かた）」の様にきれいなカタチになることは無いでしようが、そういうシーンを思わせるような瞬間です。
同様の動きについて最近の稽古の話をした時に写真と共にご使用介したと記憶していますが、今回の組手稽古ではそういうシーンが見られたことが大変嬉しく思います。
時々「形」の動きは組手に使えないという声を耳にすることがありますが、基本をきちんと重ねることで瞬間的な動作として現れるということを証明したような組手稽古になりました。
最後に「上段突き」がきれいに極まった写真をアップします。
この両名、勝敗で言えば引き分けでしたが、そういうことでなく質的な意味で大変良い内容だったと思います。
この技の場合、よく写真を見ると当たった瞬間の衝撃が防具の奥にきちんと見えます。
当たった場所も良い箇所で、先ほど１本取られた「回し蹴り」を返すことになり、両者の良いところが見られた結果になりました。
この後、稽古は第３部に移りましたが、そのことは明日のブログでお話ししたいと思います。
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