昨日の続きです。
ある土曜日の第2部の話になりますが、「形(かた)」の稽古になります。
最近のパターンには、一つの「形」を全員で行ない、細かくそこに存するポイントを動作で表現することを意識する場合と、複数のグループに分かれ、同時に複数の種類を稽古し、巡回してアドバイスする、という2つのケースがありました。
でも今回は前述の2つのパターンと異にし、これまで試合直前に時々やっていた試合形式に則り、一人ずつ「形」を打ち、それに対して個別にアドバイスする、という形式にしました。
こういう場合、同じ「形」を行なうということもあるため、複数の人数でも種類は限られます。
実際に行なわれたのは「四方拝(しほうはい)」、「正整(せいさん)」、「抜塞(ばっさい)」、「壮鎮(そうちん)」の4種類でした。
それぞれ別個にお話しし、4回に分けてブログにアップすることも可能ですが、それではこの日の話が長くなりすぎますので、稽古でアドバイスした中からいくつかピックアップしてお話しします。なお、実際の順序は異なりますが、先ほど「形」の種類としてお話しした流れで行ないます。
ということで最初にお話しするのは「四方拝」を行なった道場生の話になりますが、今回は1人だけでした。
ですから、この道場生に対してアドバイスしたことになりますが、「形」別でグループを作って稽古する時、決まって「四方拝」を選択していました。何か思い入れがあるのかもしれませんが、きちんとしたものを持っているのであれば大いに結構です。
今回の場合、試合を意識した部分も含めますので、コートがあると想像し、そこに入るまでの動き方も合わせて稽古してもらいました。
その道場生の場合、弓道も行なっている関係で、こういうところの作法は結構意識しているようです。そういうところを考えると、「四方拝」という「形」は儀礼形としての性格を有すると知っているため、そういう場での所作についての意識があるのかもしれません。それが最近、この「形」を集中して稽古している理由なのかもしれませんが、他に後輩へのアドバイスを意識してのことかもしれない、ということを指導員から聞きました。
いずれにしろ、単に身体を動かしていれば稽古、というところからこれを一つの「行」として意識してのことであれば、空手道は格闘技ではなく哲学の域に昇華します。
そういう視点で見た時、細かな注意点はいくつかあったものの、全体的なまとまりはありました。これまでの稽古が少しずつ身に付いてきているという感じで、良い内容でした。
続いて「正整」です。
今回行なわれた中では最も時間が長く、また行なった人数も複数になりますので、アドバイスしたことも多くなります。書けるボリュームのこともありますのでいくつかピックアップしてお話ししたいと思いますが、まずは上にアップした箇所です。
これまで「正整」の話をする時によく登場するイラストであり、「形」の冒頭箇所ということで試合における最初の印象付けとして大切になります。
ご覧のように、「受け」と「突き」が交互に出ていますが、「中段外受け(ちゅうだんそとうけ)」の箇所は呼吸法と共に行ない、全身をしっかり締めます。そのことで武術体を練りつつ、「柔」の「受け」に必要な身体操作のコツを掴むようにします。
それに対して「中段逆突き(ちゅうだんぎゃくづき)」ですが、一撃で相手を倒すくらいの意識でパワフルに突きます。「受け」と「突き」の動作としてのコントラストがそこでうまく表現できれば試合としても良い印象になりますし、武術的にもそういう使い分けは重要ですので、試合・実戦双方に良い結果となります。
ただ、そういう意識で行なっているためか、変に身体の動きが固くなり、それぞれの動作の時、微妙に身体の安定を欠くところがありました。こういう状態は減点要素になりますので、稽古を通じ身体の安定を図るようにというアドバイスをしました。
今度も「正整」に登場する個所ですが、ご覧のように「正整立ち(せいさんだち)」による「上段逆突き(じょうだんぎゃくづき)」から「下段四股突き(げだんしこづき)」を行なっているところです。ここは「二連突き(にれんづき)」として行なうところなので、2つの「突き」の間の拍子に気を付けなければなりません。
そこで見かけた問題点ですが、引き手の意識の甘さがありました。
このことは基本で何度もアドバイスしているところでが、ちょっと気が緩むと引きが不十分だったり、「正拳(せいけん)」の握りに甘さが見られます。
「突き」自身をきちんと極めようと思うなら、引きの要素は必要条件であり、引きを武技として意識するなら拳の握り方に対しても同様です。つまり、この様なことは関連し合っているというわけであり、こういう点をしっかり意識して改善していただければと願っています。
続いて「抜塞」に登場する個所ですが、上のイラストに示した「誘い構え(さそいがまえ)」の箇所です。
文字通り、相手からの攻撃を誘発し、その上で反撃の意図を隠し持っているイメージで行なう個所です。
そのために両上肢を上に挙げているわけで、ドラマや映画でよく登場する敵意が無いことを示す状態でもあります。
しかし、武術の場合、そういう消極的な意識での状態は無く、一見無抵抗に見える状態でもここからの反撃を隠し持つことが必要です。
ここでは立ち方も意識のポイントの一つになり、ご覧のように自然な歩幅による「平行立ち(へいこうだち)」になります。変に下肢を締めた状態になっていれば相手の警戒を誘うことになりますので、逆効果です。
ところがここで狭い「平行立ち」になっている人がおり、それでは相手からの仕掛けに対して土台の部分で不安、という状態でした。あくまで「誘い」を技の一つと理解した上での立ち方であることが必要なので、ここでは歩幅に留意してもらいました。
上のイラストも「抜塞」からのものですが、「横屈立ち(おうくつだち)」で「掬い受け(すくいうけ)」を行なっているところです。
ここで気になったのが上肢の動かし方で、単調になっています。
この箇所は、動き始めのところは鋭く行ない、前腕が上を向くあたりで脇を締めるようにします。
これはこの動作を武技として用いる場合の要諦でもあり、その時により効果的に行なうためにも拳を「縦拳(たてけん)」の状態にし、脇の締めを容易にします。
つまり、この「掬い受け」の箇所は、わずかな時間内に緩急があり、それを武技の質に転化するように行なうことが大切なのです。
試合の場でもその要素は必要で、そういったところが「形」の要素として挙げられる技の緩急の大切なところで、決して大雑把な感覚で言う速い・遅いということでなく、より細かなところで要求されることがあるのです。
最後に「壮鎮」の話ですが、「形」に登場する特徴的な個所の問題というより、ある瞬間の動作が気になりました。
ということでイラストに挙げたのは「中段逆突き」ですが、多くの「形」に登場する技です。
「壮鎮」という「形」は牛をイメージして行なうような内容ですから、パワフルに行なおうとすれば、変な力みが入ることがあります。
今回、「逆突き(ぎゃくづき)」の場面でそれが見られたためアドバイスの対象になりましたが、具体的には脇の締めや肩の落としを意識するあまり、それが身体の中心軸の歪みを誘発していたという状態だったのです。
あくまでも身体の中心軸はそのままキープした状態で行なうことが必要ですので、そこに問題を生じるような身体操作にならないようにしなければなりません。そこさえ注意すれば良い内容だっただけに、残念な結果でした。
「形」の稽古は毎回行うことになりますので、今回のことも含め、少しずつ自身の問題点を洗い出し、改善していくことを期待します。
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