昨日の続きです。
この日は基本を意識したメニューからスタートしましたが、具体的には「移動突き(いどうづき)」と「移動蹴り(いどうげり)」でした。
前者についてはさらに2パターンあり、そのうちの一つは昨日のブログでお話ししました。
今日はその続きになりますが、タイトルからもお分かりのように、鍛錬的な要素を含んだ内容でした。
もちろん、武術としての稽古の場合、すべてに鍛錬の要素は入っていますが、今回は土台の部分を通常とは異にし、その上で武技を練り、特殊な条件でも一定以上のクオリティを得られるようにということを意図しての稽古です。
そういう稽古の場合、今回のようなメニュー以外にもありますが、時間の制約や道場生のレベルの問題もあり、なかなかそれらをこなすことは難しくなっています。
昔、私が総本部に通っている頃は、身体を動かすことについては空手道以外には興味はなく、学校が終われば道場に顔を出し、誰もいない時は裏山まで走り、基本をこなして道場に戻る、あるいは巻き藁やサンドバッグを突いたり蹴ったりし、道場稽古の後は夕食後、友人と近くの公園で自主稽古を行なうということをやっていました。
道場稽古の場合、日曜はお休みでしたが、自主的な稽古はやっており、雨以外には何らかの稽古をやっていたことになります。
ある先輩と仲良くなった時には自転車であちこち動き回り、実戦用の稽古などと称し、空き地や階段などで組手をやっていました。
今はそのような時間を取ることはできませんし、ましてや道場生にそのような稽古をやらせることはできません。何か相談があればいろいろな稽古のアドバイスはできますが、今はそのような空手バカはなかなか育たないような時代と感じています。
だからこそ、与えられた条件でどうしたらよりレベルアップできるかということを模索する必要があり、このようなところは以前やっていた受験業界の効率の良い勉強法を考えることと構造的に似ています。今やっていることは、そういう経験からの発想ですが、与えられた時間の中で関連付けて効果的に技術を習得してもらい、それを他の技にも活かしてもらうように考えています。
そこで今日のお話ですが、まずは下半身の強化を意識した「移動突き」です。もちろん、昨日お話しした稽古も下半身の強化に効果的ですが、立ち方を変えることで身体操作も変わり、その質をアップさせるには全身的なレベルで身体の使い方を向上させなければなりません。
そういう意識でこの日稽古したメニューの一つが左のイラストに示した「突き」です。
「抜塞(ばっさい)」に登場する技ですが、ご覧のように「横屈立ち(おうくつだち)」で立ち、上半身を真半身にして突きます。
このまま「突き」の方向を変え、下肢が屈曲している側に対して突けば「前屈立ち(ぜんくつだち)」による「突き」ということになりますが、意識する方向がそれとは直行しますので、この場合の立ち方の名称は「横屈立ち」となるわけです。
ただ、名称は異なっても、立ち方そのもののポイントは同じであり、一方の足の膝は屈曲させ、他方の足は膝を伸ばしピンと張るようにします。
体重は7対3くらいを意識し、その場合、膝を屈曲させる方にかかるようになります。
それに連動し、身体の中心軸もそのようになりますが、このことが武技的にもある効果をもたらします。
これは半身で突くことも関係しますが、体重移動とも絡み、この状態自体が体捌きになっているのです。
というより、そのイメージで行なうことで前述の体重の配分が可能になりますし、真半身になることができるのです。
稽古はそのことを意識できるよう、モデル役の道場生に対して「突き」を放ち、イラストのような状態で躱しつつ突いてもらいました。
「突き」の方向は実際には多少状況に応じてアレンジすることになりますが、その意識ができれば、何も「形(かた)」通りに側方からの攻撃に対する場合だけでなく、組手の時のように、正面にいる相手からの攻撃の場合でも応用できます。
具体的には、相手からの仕掛けに対して前足を斜め前に動かし、その状態から突く、ということです。この時、中途半端な踏み込みでは間合い的にこの「突き」のような感じにはなりませんが、深く踏み込み、相手が自身の側方に近い時に位置している時にはイラストの様子に近くなります。
その場合、仕掛け技は「突き」だけに限らず、「蹴り」であっても構いません。要は相手の側方に位置するように体捌きを行なうことができれば、この動作をそのままカウンター的な感じで用いることができるわけです。
ただ、この「突き」の場合、土台のフォームと「突き」のベクトルの関係で、反作用にどこまできちんと耐えられるか、という問題があります。足の開き方と「突き」の方向が一致している場合は強いのですが、このように直行している場合はどうしても脆弱になります。
ですから、この「移動突き」の稽古は、その時にしっかり土台としての役割を果たせるように、という意図で行なってもらいました。稽古の際、どういう目的で行なうかが明確でなければ、辛い稽古の時に気が抜けやすく、同じ回数・時間で行なっても効果は減じます。だからこそ、その目的を明確なするわけですが、これも稽古の効率をアップするための工夫の一つになります。
さて、この「突き」を移動しながら行なう時のポイントですが、運足の基本通り、軸足側に少し引き寄せ、その上で方向転換し、再び「横屈立ち」になって突く、ということになります。
この時、腰が浮き上がりがちですが、それをしないようにして行なうことが必要です。
腰の上下は丹田の位置のキープにも関係し、一定に保つことを必要とします。その場合、慣れていなければ下肢に負担を感じますが、それ自体が鍛錬であり練りになります。
稽古の様子を見ると、どうしても腰の上下が見受けられますが、極力そうならないようにとアドバイスしました。少年部からの移籍組の場合、多分稽古したことがないと思われますが、こういった鍛練的なところも経験してもらったことになりました。
また、この立ち方の場合、足首が固い人にとっても辛いものになります。
膝を伸ばす側ですが、ここで注意しなければならないことの一つがかかとを浮かさないことであり、つま先の向きです。
いずれも足首の柔軟性が関係することですので、そのようなところが見られる道場生に対しては、この稽古を通じて柔らかくするように、というアドバイスをしました。前述のように、この技は「抜塞」にも出てきますが、こういうところが不備であれば「形」の質にも悪影響です。
そして、この立ち方の武技としての応用にも支障を来すことになりますので、きちんと意識してもらうようにしました。なぜそうなのかについては、分解・解説の稽古で理解することになると思いますが、基本として行なう時にはそこまでは説明できません。
しかし、やがてはその意味を知ることになりますので、今回は鍛錬や武術体作り、という目的まで理解してもらえればということで説明しておきました。
続いては「猫足立ち(ねこあしだち)」を土台とした「突き」です。
その様子を示した画像は無いので、立ち方のみをイラストでアップしました。
基本をテーマにした稽古ですから、立ち方の確認から行ない、両足のフォームや位置関係、体重配分などをチェックしました。
「形」の中にもよく登場しますので、その概要は理解しているようですが、同じフォームを持続させることについてなかなか辛いようです。
これは奥足に9割の体重をかけ、しかも膝を屈曲させていることによりますが、逆に考えれば、それが下半身の鍛錬にもなります。
この立ち方に習熟すれば、組手でも「待ち蹴り(まちげり)」が容易になり、相手の仕掛けに対して効果的に対応できるようになります。カウンターとして用いる場合、大変有効ですので、「猫足立ち」による「移動突き」の前に、前足による「前蹴り(まえげり)」何度もこなし、この立ち方の具体的な用法の一例を身体で覚えてもらいました。
同時に軸足としての大切さも体感してもらったことになりますが、そのような認識の上で「移動突き」の稽古に移りました。
この立ち方の場合、前述のように、体重配分が9対1になりますので、突いた時に両足でしっかり踏ん張ることができません。
これは腰の使い方に影響しますが、それでも瞬間的にそのような用法になることもあるでしょうから、この立ち方でも可能な限り武技としてのクオリティを有した技にしていくことが必要です。
そういうところから、ここではダブルツイストをしっかり意識してもらいました。軸足に対してそれなりの負荷はかかりますが、それ自体が鍛錬になりますし、不安定な中でもしっかり腰を使う、という身体操作を実践することになります。
両足が前後していますので、「突き」の種別としては「順突き(じゅんづき)」のパターンと「逆突き(ぎゃくづき)」のパターンがありますが、今回は時間の関係もあったので前者のみ行ないました。後者のパターンについては今後行なおうと思っていますが、道場生を飽きさせず、意識の集中を図ろうとすると、基本を延々と行なうことはできません。興味として集中する時間ということを念頭に行なっているため、いろいろメニューを変えることになりますが、出席者の粒が揃えば、同じようなことでも意識のベクトルが異なりますのでそれに応じた稽古が可能です。
そういう感じで全員がレベルアップできるよう、さらに工夫しながら稽古を進めたいと思っています。
稽古はこの後も続きましたが、その話は後日とさせていただきます。
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