掴まれた手首を上段揚げ受けの応用で解き、その際に前傾してできた隙を活用し、脇下の急所を攻撃する | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 ある火曜日の稽古の話です。

 

 この日、久しぶりに現在オーストラリアにいる道場生が稽古に参加しました。今回は2週間滞在するということですが、全ての稽古日に出席できるわけではありません。

 

 このブログはフェイスブックにも投稿していますが、稽古の様子はオーストラリアでもチェックしているということですので、最近の稽古のメニューについても理解していると思われます。

 

 でも、ブログで読む内容とリアルな稽古では受け取り方が異なりますので、なるべくこれまでの内容が理解できるように配慮しつつ、レギュラーの道場生にも配慮したメニューを考えました。そして、研究稽古の中でも上級者用の知識やそれに基づく稽古のポイントを示し、同時にその要領で数もこなしました

 

 最近参加した道場生には少し早いと思ったのですが、久しぶりの参加者で、しかも期間限定であれば、少しでも何か持って帰ってもらおうという配慮の結果となりました。

 

 その様子について当日撮った写真を交えながら、可能な範囲で説明を加えつつ、綴っていきたいと思います。

 

 稽古内容は、最近のパターンというところは変わりなく、基本動作(きほんどうさ)」に登場する「受け」から「突き」の箇所を用いた技です。

 

 ただ、「受け」は防御技として用いるのではなく、「手解き(てほどき)」の技として行ないます

 

 今日お話しする技のベースとなるのは基本動作Ⅲ(きほんどうささん)」で、「上段揚げ受け(じょうだんあげうけ)」から「中段逆突き(ちゅうだんぎゃくづき)」の箇所です。この2挙動の動きを限りなく1拍子で行なうところがポイントの一つになりますが、その動き自体、組手でもしっかり活用できますし、しかも大変効果的な技になります。

 

 そういうところはしっかり踏襲した上でこの日のメニューをこなすわけですが、まずは設定したところからお話しします。

 

 

 相手から手首を掴まれたというところからになりますが、具体的には上の写真の状態になります。

 

 左側の道場生が掴む側で、右手で相手の左手首を掴みます

 

 技自体、左右が逆になっても成立しますが、掴む際に両者の上肢が交差するような状態になれば、今日お話しする技は成立しません。その場合は別のパターンで対応することになりますが、時間の関係でそこまでは行ないませんでした。

 

 

 アングルを変えて撮った写真です。

 

 これまでも同様の写真を撮りましたが、黒帯同士になると、写真であっても何となく見た感じが違います。

 

 

 これまで稽古したように、掴まれた方は当該側の足を1歩引き、同時に上肢も引きます

 

 ブログで何度もお話ししているように、武技は全身で行なうものですが、上肢と下肢の動きのシンクロが最初のポイントになります。

 

 そういったところも「見えない技」の一つになりますが、他の組を見ていると武術体のクオリティの関係で身体の中心軸が曲がっていたり、動きの同調が乱れているケースが見られました。

 

 でも、この箇所がきちんとできれば瞬間的に相手に隙ができます。そこから技を畳み込むように続けるわけですが、それが次の写真の状態です。

 

 

 掴まれていない側の手首を掴まれているところに挟み込むように動かしている様子ですが、実は引きと同時に行なうくらいの意識で行ないます。

 

 説明の関係であえてそれぞれの様子を撮り、お話ししたわけですが、ここまでは瞬時に行なうくらいの意識で動かします

 

 また、挟み込む手首も勢いが必要で、この動きだけで相手が思わず掴んでいる手首を離すくらいのイメージで行ないます。

 

 

 手首の箇所を拡大した写真ですが、この日初めてお話ししたのがこの部分に関することでした。

 

 技を掛ける側の手首が相手のどの箇所に接触しているかというところですが、引き手のコントロールと合わせ、手首の尺骨側を意識してもらいました。

 

 この箇所は経絡で言うと「心経(しんけい)」が通っていますが、そこに集中して刺激が加わるような動かし方をするのです。

 

 この箇所に刺激が加わると小指側に力を入れるのが難しくなりますが、それが「手解き」に有効に作用します。

 

 そういった細かなところも「見えない技」になりますが、ご覧の様な感じになるところから、武術としては「手の内」といった言い方をする、ということについて改めて説明しました。

 

 

 掴んでいる手が緩んだところで「上段揚げ受け」の要領で差し込んだ上肢を上方に跳ね上げますが、一連の動きは淀みがないようにすることで効果的に行なわれます。

 

 しかし、どうしてもデジタル的な動きになり、それぞれの動きに変な間(ま)が見える人がいます。

 

 そうなった時点で技は上手く行なえず、結果、力技になります。

 

 それでも相手の手が離れればまだしも、モタモタしていると相手からさらに攻撃を仕掛けられる可能性があります。

 

 稽古では相手は掴むだけになっていますが、これが実戦であれば相手の掴んでいない側はフリーになっていますので、そちらで突いていくるなどの展開があり得るのです。

 

 だからこそ、一連の動作に隙を作らないようにするわけですが、そのためにアナログ的な動作を心掛けます

 

 

 そして反撃の「突き」ですが、前回はここでは基本通り「中段逆突き」で行ないました。

 

 しかし、今回は上の写真の様に上段と中段の間くらいの状態で行ないました

 

 というのはある急所を狙ったからですが、脇下にある「極泉(きょくせん)」という経穴です。

 

 先ほど「手解き」の際に意識した経絡である「心経」に属する経穴で、関係するところにアプローチすることで効果アップを図ったわけです。

 

 そのためには拍子が大切な意識になりますが、「基本動作Ⅲ」でも「受け」と「突き」までは限りなく1拍子で行ないますので同様の意識でここまで行なうわけです。「基本動作」で稽古した意識がここに生きているわけです。

 

 加えて、より効果を出そうとする場合、もう一つ工夫すべきことがあります。

 

中高一本拳

 

 それは拳形です。

 

 上のイラストは中高一本拳(なかだかいっぽんけん)」ですが、今回は「正拳(せいけん)」ではなく、この拳形で突いてもらいました

 

 「正拳」を基本として、中指の第二関節を突出させ、その先端で突く技になりますが、接触部位が鋭いため刺激が深く浸透します。

 

 もっとも、しっかりとした握力が必要で、この点が不十分なら接触時、拳形そのものが崩れてしまいますので効果が上がらないどころか自身の手指を痛める可能性があります。

 

 そのため両刃の剣になる可能性もありますが、だからこそこの説明は上級者用になるわけです。

 

 

 最後に、「突き」が接触している様子の拡大写真をアップしますが、この様なイメージでやってもらいました。

 

 ただ、懸念した通り、レベル差が明確になりましたので、今年から参加した道場生にはまだ早かった、ということが証明された瞬間にもなりました。

 

 研究稽古といっても稽古する人のレベルを考慮し、その時の状態でという原則を、私自身も再確認しました。

 

 明日は異なったパターンで稽古した様子をお話しします。

 

 

 

 

 

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